終 終末世界と旅歩き
裕樹にはギャン泣きされた。
由紀乃はまだ聞きたいことがある様子だった。
裕哉はかなり申し訳なさそうで、有希は安心した様子だった。
ついぞ、ホシノは顔を合わせることはなかった。
ホシノのもろい部分が露出したあの日、トオルは存外傷ついてはいなかった。そんなものだろうなあ、という納得だけがそこにあった。
それはそれとして、このすさまじく殺風景な景色は最悪だな、とトオルは息を吐いた。
どこまでも灰色の世界が続いている。塞がれた道と崩れ落ちた建物の上を転んでしまわないように歩いて行く。
「――あ」
つい口をついた。灰色の目が一瞬吸い寄せられて、目蓋を閉じる。
いずれ消えてなくなることだろう。瓦礫の隙間からのぞくそれから目をそらす。
ぱちぱちと記憶が瞬いた。引き摺っているくらいがちょうどいい、とトオルは自嘲した。
埃まみれの空気を吸って、さまようように歩く。当てになるか微妙な地図によれば、次の《街》はそう遠くない場所にあるはずだ。
次の《街》はどんな場所だろうなあ、とそう変わらないはずの場所に淡い期待を寄せる。
ふと、鼓膜が震えたような気がした。
振り返ったが誰も居ない。気のせいだろう。
こんな終わった場所に、誰かが居るわけなどないのだから。
終末世界の歩き方〜故郷が消えてなくなったのでのんびり旅人をしています〜 夕季 @kamomecannotfly
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