カウントダウン
yukiman
Count Down
7日前。
彼を失った。失わされた。
私はあいつを許さないだろう。
6日前。
私はあいつに復讐することにした。
私から彼を奪った当然の報いだ。
5日前。
彼の葬儀に参列した。
心に穴が空いてしまったみたいだ。
悲しいも苦しいもぜんぶぜんぶ、
その穴から流れ出てしまって、
涙も出やしない。
4日前。
彼の遺骨を拾った。
細くて長くて綺麗な指。
私の頭を優しく撫でてくれる彼は
どこを探しても見当たらない。
3日前。
彼の葬儀が済み、ようやく気づかされた。
彼は、もう、いないのだ。
私から彼を奪ったあいつが憎くて、憎くて、
どうしようもない。
ただあいつが憎い。
2日前。
怖くなった。突然に。
あいつがいなくなれば、私すら消えそうで。
でも、彼がいない私は、いないも同然。
あいつに復讐する以外、私にはなにもない。
前日。
準備が揃った。
あとはあいつを消すだけ。
私から彼を奪った憎い憎いあいつを。
当日。
ゆっくりと台に足をかけた。
ようやくあいつに復讐ができる。
ゆっくりと縄をくぐった。
台を蹴飛ばす。
全てがゆっくりに見えた。
私は私をこの世界から消し去る。
彼を消し去った私自身を。
私から全てを奪った私を。
____あとがき
初めに、この短編には、本来は好ましくない
行動、言動が含まれていることを
ご了承くださいませ。
はじめての作品がこの短編です。
『私』は彼を失いました。
彼が全てでした。しかし、
そんな彼を奪ったのは、他でもない、
『私』自身でした。
彼に愛されるかは別として、彼を愛していました。
愛は時に、恐ろしく、おぞましい形に姿を変え、大事な何かを全て奪い取る、膨大な
エネルギーを持ち合わせています。
愛する、愛される、に心理的な満足感を伴うことはごく普通のことのように思われます。
しかし、両者の状態を同時に得られる確率は、紙一重と言ってもおかしくはない。
愛することにおいて、永遠はなく、
永遠というものは、何においても、どこにおいても、存在しないのです。
この短編は、そんな永遠を求め、限りない一瞬、『今』を失った女性の話です。
存在しないもののために、存在するものを手放す。愛によって人は、狂おしくも、愚かな存在になり得るのです。
カウントダウン yukiman @yukiman
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