100番目の願い

Tempp @ぷかぷか

第1話

どこかの路地だ。

いつかの夜だ。

願いを叶えよう、確かそう言われたはずだ。

丁度その時も全てがどうでもよかった。

だから叶わなくていい。

何かを選ぶのが酷く億劫だった。


 願いを100にしろ。


そう言ったことを急に思い出した。

冗談交じりだ。そんな冗談はよく聞く話だ。

俺が聞いたどの話でも、100に増えた試しがない。

1つしかないなら叶わなくていい。

それは実に、俺にとってどうでもいいことだからだ。


あぶくのように浮かぶ思考。

キウイが特売になればいい。

今日は少しだけ雨が降るといい。

あの白い野良猫に会えるといい。

最近妙に運がいい。

それが妙に腹立たしい。

片方の靴下を見つからない。

そう思って洗濯かごを探したら、見つけた。

そしてそれが100番目だったと唐突に知らされた。

願わなければこの靴下は見つからなかったのだろうか。

けれどもそれなら別の靴下をはけばいい。


靴下をはいて靴をはき、外に出れば雨だった。

雨が上がればいい。

そう思ったが、やはり晴れはしなかった。

住宅街の路地。

公園の脇。

高架橋の下。

川からのぼって風が吹く。

その方向を眺めれば、わずかに雲間に光がさしていた。

それは誰かが願ったのだろうか。


相変わらず俺は丁度、全てがどうでもよく、

蹴飛ばした石ころがどこに転がろうがそんなことはどうだってよかった。

全てが。

世界の全てが。

バタフライ効果で全てが滅び、その余波でついでに俺も消え去ればいい。

余波。

結局全ては億劫だ。

俺の願いは拡散して、どこかにたどり着いたのだろうか。

雲間の光はやがて閉じ、そしてまた夜が来る。

どうでもいい夜が。

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