第25話



僕は休日にアキ組合長や家族と王都で国王様と王配様に面会するための礼装を仕立ててもらうために服飾屋にきている。


母さんは、やはり男性の礼装といえば男性用のスカートが定番だと力説しているのだけど、僕は普段からスカートを履かないので少し恥ずかしい。


昔は女性は、パンツスタイル、男性はスカートという服装がほとんどだったけど、転生者が増加するに連れて、僕の生まれる前くらいから転生者に合わせて男性用パンツスタイルや女性用スカートも作成されるようになってきたらしい。


僕は普段一人で歩くときは女装をしているから、パンツスタイルが気に入っている。慣れないスカートで動くと転けそうだし、パンツスタイルが良いかな。


そう言うと、母さんも僕が転ぶよりはと、諦めてスカート以外の服装を選んでくれた。


そう言えば、アキ組合長はどんな服装にするのだろう。

転生者の女性は、どんな服装でも似合うって聞くから羨ましいね。


僕の後ろには男性用の服を沢山持ったアキ組合長や母さんや姉さんたちが4人並びながら、にこやかに話している。


-------


私は今、ロイズ君とその家族と服を仕立てもらいにウルズ商会が行きつけにしている仕立て屋にきている。


私は前世の頃から服にはあまり興味がないので自分のは適当な既製品でもいいのだが、この世界はまだ服飾文化や仕立て工場のオートメーション化はされていないので、礼装となるとほとんどが個人で仕立て屋に行き、採寸から始まり、かなりの期間をかけて仕立てるようになっている。


一般的な服などは、過去からの転生者の努力もあり、代表的なサイズが取り揃えて作られており、それを身体に合わせてサイズ調整を行うという転生前の世界とほとんど変わらない形式だ。


しかし、この販売形式の店は富裕層向けの店がほとんどであり、庶民などは古着屋で見繕って自分でサイズ調整をするのが一般的だ。


私とロイズ君のお母様やお姉様達は、ロイズ君の採寸を女仕立て職人が、不埒なことをしないように厳しく見つめながら、ちらちらと薄着のロイズ君を見る。


採寸が終わってしまえば、後は礼装のデザインを私とロイズ君の2人でお揃いになるよう統一感があるデザインから選び、ロイズ君はお母様には男性用のスカートを勧められていたけど、固辞してパンツスタイルにしていた。


私は転生者の女性は前世からの流れでスカートスタイルでもおかしくないと仕立て職人からは言われたけど、私は前世ではパンツスーツで働いていることが多かったので、パンツスタイルにしてもらった。


礼装が決まれば、後はロイズ君の私服の着せ替えが始まる。


ウルズ家では、ロイズ君の服を仕立てたり、買うときはお母様やお姉様たちがついてきて、必ずロイズ君の着せ替えショーが始まり、ロイズ君に似合う服を買い、その後、ロイズ君が買った服に合わせて女性陣も服を買うらしい。


まぁ、ロイズ君は見た目が中性的で、転生前の世界でいうと、背の低い女性って感じだからね。

ついつい着せ替え人形にしたくなるのもしょうがないと思う。

だからね。私がこんなにロイズ君用の服を持っていても仕方がないよね。



−−−−−−−−−−−−−−−−−


俺はまだ護送車に揺られて鉱山までの道程を進んでいる。

どこまで行くのだろうか。


日中は屋根のない護送車は日射を全く防がないので、地獄である。

暑さに耐えかねて、少しでも身じろぎすると長い棒でつつかれて、警備兵からは罵倒される。


もちろん、警備兵も人間だから、自分たちの休憩も含めて一時間に一回は止まって俺にも水をくれる。


夜間は基本、野営で警備兵はテントを敷設して交代で見張りを立てて休み、俺は護送車の中に入れられたまま、用便をする場合には見張りを呼ぶといった感じだ。


これを、警備兵も女だから、この野営の機会を利用して逃げられないか確認したが、奴らは隙がない。俺が男だって言っても油断はしない。

昔、話に聞いたことがあるが、王国所属の男の護送任務(要人、犯罪者問わず)用の警備兵は既婚女性が任務に就くらしいのだ。


要人はもちろん、例え犯罪者だろうと男には手を出させないように

男性専門の警備兵は優先的に結婚させ、任務に私情を挟ませないように教育も行う。


そうすることで、男性要人に危害を加えたり、犯罪者を逃がしたり、不当に制裁を加えるなどの行為の抑制しているのだ。


俺が昼間、暑さに耐えかねていたときに、罵倒されたり棒で突かれるのは、鉱山に流刑になる犯罪者にはデフォルトらしい。流刑中も見せしめ的行為をすることによって犯罪を抑制しているらしい。

なんとも涙ぐましいことで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生してきた上司が僕のことを愛しているのだが、他人に言えない副業をしているのでその気持ちに気付かないふりをしている。 鍛冶屋 優雨 @sasuke008

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ