第10話 水抜きですっ!

 よし!残っていた北側の塀も作り終えました。近くに寄ってきた獣対策の塀なのでこれ以上の高さはいらないでしょう。というか塀を超えるサイズの動物がやってきたら私ではどうしようもないので逃げる自信がありますね!


 さぁ、次は気分を変えて小屋を作りましょう。ひとまず見た目は気にしないので寝るところを確保したいです。地球で寝泊まりしていたら、せっかくのこちらの世界にいる時は時間が経過しないっていう利点が活かせません。


 しかし今から家を作るのはいいですけど素材はどうしましょうか。初めは木材を使おうと思っていたんですが、確か家を作る時に使われる木材は自然乾燥で水分を抜いているので、先日切った木材は使えないんですよね。


 まぁ、そうは言ってもお隣のおじいさんから聞いた話なんですけどね。そもそも生きている木は大量の水を含んでいて乾燥させずに使ってしまうと、伸縮や変形が起きてしまうので建物を作るときに問題になるらしいです。


 むむ、どうしましょうか。精霊さんに作ってもらった石材を積んで石の家にしてもいいんですが、問題は石で作ってしまうと家の中が冷えるんですよね。木で作ると加工に時間がかかってしまいますし、石で作ってしまうと部屋が冷えてしまいます。童話で考えたら石の家の方が狼に吹き飛ばされなくていいんでしょうが....。


 はぁ、本当に重大な問題です。寝るときに凍えて寝るなんてごめんですからね!


 そうです!QOLクオリティオブライフを大切にしましょう!

 決めました。木の加工は時間がかかってもいいのでコツコツやっていきましょう。その代わりにお高いテントを買ってきましょう。本当は地球のお金はあまり減らしたくないんですが、背に腹はかえられません。それに私の予想では木材に含まれる水分に関しては精霊さんに頼めばなんとかできる気がします。


 早速テントを買いに行きます。あとは睡眠にはこだわるタイプなのでさすがにベッドの自作はやめて買うことにしましょう。初めはテントの中に入れておいて、後で家ができたらテントから移動させればいいです。そのためにも大きめのテントが必要になりそうですが、こういう時になんでも揃うのが都会の便利な点です。


 いくら怪力になった私と言っても地球で披露したら怪しい組織に捕まってしまうかもしれません。それは避けたいので今回はレンタカーを借りて行ってきました。



 大きいテントを設営してベッドを設置しました。これで私は扉の反復横跳び以外で、地球に戻るのは調味料をとりに行く時くらいでしょう。


「精霊さん、私の手にこんな魔法かけられるかな」


 私は雑巾の搾るように木の幹を搾るイメージを伝達する。これでうまく伝わればいいのですが。


『わかったー』

『ちょっと待ってねー』

『『えいっ』』


「手伝ってくれてありがとうね」


 いつも頼ってばかりで申し訳ないですね。

 そうです!作業がひと段落したら、いつもお手伝いしてくれる精霊さんたちにお礼を込めてクッキーでも焼きましょうか。もぐもぐ食べているところは私自身、疲れた精神の癒しになりますしね。


『やったー』

『ユリに褒められたの!』

『『嬉しい︎ー』』


 せっかく魔法をかけてもらったので、木の水分を抜くのに取り掛かり始めましょうか。伐採した木がたくさん置かれている大木のそばに向かうと試しに『片手』で木を持ち上げて絞ってみます。すると木から水道かと思うくらいの量の水が出てきました。


 うーん。あんまり抵抗なく絞れるみたいですね。これならあまり時間がかからず全て乾燥させることができそうです。いくらかできたら乾燥させた幹を切ってログハウスみたいに使えるようにしようと思っていましたけど、先に全て絞ることにしましょう。


『みずー』

『こっちー』

『集めるの!』

『『はーい』』


 精霊さんたちは何も指示をしていないのに魔法を使って空中に水を集めてくれているみたいです。これならしばらく水を汲みにいかなくてもすみそうです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

反復横跳びで強くなる!〜自宅に現れた異世界への扉〜 猫野いちば @kjokaeri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ