役満
「カン!」
碧衣天さんの引退宣言から数日。俺はでらっくすのVtuberさんたちと伝手を手に入れた。
常闇アクさん、蛇陀カラメさん、碧衣天さんに狂月音祢さんと個人勢にしてはかなりの伝手ではないだろうか。まあ、界隈の人たちは割と繋がっていたりする。恋歌とかね。
そんな俺は今何をやっているのか。そう、ネット麻雀です。
麻雀、それは四人または三人で行う卓上娯楽である。
簡単に説明するならば、百枚を優に超える山札から、十四枚の手札を指定の形に揃えることで点数が貰えるゲームだ。
ターンに一度、山から牌を一枚
コメント欄
:初手、大明槓
:超次元門前放棄で草
:ないよ、役ないよ!
:何考えとるん?
:おい。今は南場だぞ
:東場と勘違いしてたり?
「あー!南場じゃんか!」
コメント欄
:草
:草
:草
:うーんこれは節穴
:ちゃんと場風は確認しとかないと
:これはいい反面教師
:初心者にありがちなミス
:こいつ初心者ちゃうで
:東場だとしても大明槓はするなよ
俺が今行った行為は『カン』と言う。
基本的に麻雀であがるには、手牌にある牌を4
麻雀には1から9まで書かれた3種類の数牌と、
1、2、3。とか、5、6、7。とか。ちなみに、9から1は繋がらないので注意。
そして、俺が行った『カン』これは、刻子で揃えた状態で4枚目の牌が誰かから捨てられた、もしくは自分で引いたときに発生する。
俺がやったのは『大明槓』誰かから捨てられた4枚目の牌を貰い、
それの何が悪いの?なんでコメント欄が責め気味なの?
そう思うだろう。と言うのも、誰かから捨てられた牌を貰うことを『鳴き』と言うのだが、この『鳴き』をすると『
麻雀の役には、『門前』でしか成立しない物が多々ある。立直、一盃口、平和などなど。そして、俺の手牌でこの明槓から成立できる役はない。
俺がカンした牌は東。先程までならば場風で役となってたはずだが、今は南場。東の大明槓は全くの無意味だ。
「新ドラは九萬。微妙だね」
コメント欄
:君には関係のないことだよ
:こっからどうやって和了するのか
:ホンイツすらないやん
うるせえ。うるせえ。
「カンしちゃったしこの局は降りかな」
カンすることで配信映えを狙ったのだ。だから何の問題もない。まあ、俺が想像していた配信映えとは違ったけれども。
コメント欄
:残当
:しゃーなし
:まあまだトップ目だし
:ここからだ
「あ、ドラの九萬。まあいらんし捨てるべ」
九萬なんて持っていても何の役にも立たない。一応混老頭とかチャンタとかが見えるかもしれないが流石に遠すぎる。ここは端牌である九萬を切るのが安牌だろう。誰も立直してないし。
『ロン!』
ゲーム内のキャラがそう発声した。ロン。つまり、相手の上がり牌を出してしまったと言うことだ。
コメント欄
:あ
:あ
:殺意が高いですねー
:これヤバくね?
:あ
:染めてんじゃん
「ダマならリーチしろ」
コメント欄
:草
:ダマの意味よ
:リーチしたらダマの意味がないやん
「いや、立直って言うだけで一翻増えるんだぞ?…………あ」
他家への放銃でイラっとしたところだったが、開示される手牌を見て俺は固まった。そして、コメント欄は爆速で動き出す。
『九蓮宝燈』
役満!と相手のプレイアブルキャラクターが嬉しそうに言う。
九蓮宝燈。麻雀で最も高い点数を誇る役の一つである役満の一種。
その出現率は驚異の約0.0005%。
同じ種類の数牌で1112345678999の形を作ることで完成する激レア役だ。
「……凄いものを見た」
コメント欄
:はあ!?
:やっば!
:九連!?
:生配信で見てて良かったわ
:これは凄い
ここまでの豪運を見せつけられてしまったら、負けたことへの悔しさなど吹き飛んでしまう。こういう時は、いやー良いものを見たと満足するのが精神衛生上良いのだ。
「あ、相手親じゃん。ん?48000?」
コメント欄
:あ
:あ
:乙
:箱下ですねぇ
俺の持ち点は40000点。つまり、マイナスの域にたどり着いてしまった。そして、特殊なルールでもない限り0点を下回ったら麻雀は終了だ。
「ランク下がったんだが!?」
最下位になり、ポイントがマイナスされる。そして、俺のランクは一つ下がった。
コメント欄
:草
:役満見れたんやしええやん
:これは芸術
:良い介錯だった
:御無礼!
「今日の配信はここまで!また次回!」
コメント欄
:草
:おい嫌になって終わるな
:まだ始まって1時間も経ってないやろ
:不貞腐れてて草
:え、マジで配信切るんk
【朗報】雑談系配信者さん、バズる ねうしとら @abyunappua
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