酒浸りの女
新生活に突入して更新頻度がボロボロです。
ご容赦ください!頑張りますので!
▼▽▼▽
天さんが夢を追うようになったきっかけを俺も少し聞いた。並々ならぬ努力をしていることも知った。
外国の娯楽を日本でももっと普及させたいと思ったことも教えてもらった。
中々出来ることでは無いのは、現在俺も同じ大学生であるから、その凄さを実感できているからだろう。
『おお~。なんだこの集まり~。なんか面白そうだなぁ~』
突然、間延びした女性の声が聞こえた。
それに対して宵闇さんが対応する。
『狂月さん。なんでこのサーバーに入ってこれたんです……』
『えぇ~?女の勘?』
『勘でサーバー内に入られたらたまったもんじゃないんですが』
この人酔っている。
喋り方が酔っぱらいのそれだ。
それと、聞き覚えのある名前が聞こえた。
『狂月さん……?』
『んん~?おお!君がCHIZUくんか~。わたしは
『狂月さん。また飲んでるんですか』
『あったりまえでしょ~?酒とタバコとギャンブルはわたしの血液と言っても過言じゃないのよ~?』
当たり前って、そんな声からでも分かるくらいに酔っぱらうことが当たり前なのだろうか。俺は未成年……いや、一応成人はしてるけどまだ20歳じゃないから酒は飲めない、ので狂月さんのこの状況が当たり前なのかは知らん。
この人、狂月さんが飲酒配信で有名なことは俺も知っていたがまさか私生活でも飲み耽っているとは思わなかった。
『CHIZUくんさぁ~わたしともコラボしよーよ。損はさせないよぉ~』
『ありがたいですけど……』
『オレたちは今アオイの配信を見てるんですよ』
『およ?ソラの?あーそっかそっか。重大発表だったねー。じゃ、わたしも見ようかな』
狂月さんはそのまま俺たちと一緒に天さんの配信を見始めた。
そういえばなんで宵闇さんと俺のDコードサーバーに入ってこれたんだろう。
『CHIZU。狂月さんの弱点は幼馴染の男の子だ。把握しておけ』
『えっ急になんです』
『アク先輩……?何を言ってるんです……?』
聞こえていたのか今までの酔いはどこへやら、絶望したような声音の狂月さんがいた。
『え……どうしたんd』
『幼馴染の男の子!!』
俺が何か聞く隙もなく、宵闇さんは狂月さんに概念じみたことを言っている。
なにを言っているのか疑問に思っていると、途端に奇声が俺のパソコンのスピーカーから発せられた。
『ぎやぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!やめろ、アク先輩!やめろぉー!』
『い、いったいどうしたんです……』
「ぐおおおお」なんて呻き声が聞こえる。なんかよくない気がする。
『酔いを醒ましたんだよ。狂月さんの弱点を突いて』
『じゃ、弱点……?』
『ああ。狂月さんはな、幼馴染の男の子に初恋を抱いていたんだが失恋したんだ』
ああ……。初恋拗らせちゃったと。
『それだけじゃないわ!わたしと彼は相思相愛だったの!マジでちゃんと「好きだよ」なんて言ってもらってたしラブラブだったんだからね!』
『それが、大学時代に他の女に
『んがぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
『さらに、この人失恋のショックを紛らわせようとして仕事に熱中したんだけど、会社が3年で倒産しちゃったんだよね』
『ぁ……あぁ……』
『ちょっと!?めちゃくちゃ追い詰められてるんですけど!?PTSDとかじゃないんですか!?』
『大丈夫。狂月さんはいじってくれって言ってたから』
『限度ってもんがあるんじゃ……』
それで酒とタバコとギャンブルに逃げてしまったということか。
というか、よく精神崩壊しなかったなこの人。うつ病とかになっててもおかしくなかったのでは。
『っぷはー。いいねぇキラキラした夢持っててさぁー』
『僻まないでくださいよ』
『おっ!ソラの配信のコメ欄に杞憂民はっけーん。なになに~“今後Vtuber業界は発展していくから引退なんてしなくても生活できるんじゃないかな”だってぇ~。はははははは!傑作だわ~ソラの覚悟も知らないで~。っていうか学歴でソラに勝ってんのかねこの人~。あははははは!』
『あーあ。始まったよ』
『なにがです?』
『この人、こういう杞憂民とかアンチとかを酒の肴にするんだ』
『性格悪っ』
でも、今までの人生が激動だったらしいし一方的に非難する気にもなれないけど。
しかしいい性格だと言わざるを得ない。
『夢のある若者は応援しなくちゃ~』
『あなただってまだ若いんじゃないんですか?』
『言うねぇ~先輩。わたしはもう三十路だよ』
『んん~。まだ悲観的になるには早いのでは?』
なんだか、この2人の会話には信頼関係が窺える。長年のパートナーって感じの。
俺は天さんの配信を見る。
そこには、ファンの人たちに引退を告げ残りの期間を全力で活動するという宣言をした天さんがいた。少し涙ぐんだ声をしている。
『いいね~青春だね~。ちょっと元気をもらえるよ』
プシュッ。と缶ビールらしきものを開ける音がした。
『オレもがんばろっかなー。ソラを見習ってな』
狂月さんはすごい人生を歩んできているだろうに全く悲観したような声音ではない。宵闇さんはやる気に満ちているし、天さんは決意表明を済ませた。
なんだか、眩しい。
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