第二十九話 ーミクの行先ー

会社が結成され、そして一つの目の仕事が始まり、そして僅か二日で終わった。

そんなファーストワークが今から二か月前の事。


西の国アソトはダステル首相がいなくなった混乱を少しづつ取り戻しており、

新しくついた首相は国民からの期待に何とか応えようとしている。

結論を言えばあまりダステル首相が唯一無二のカリスマ性を持っていたかと言われれそうではなかった。


そんな仕事が二か月前。


この会社名の最強の何でも屋は未だに改名されないまま二か月の月日が流れた。

…そう、二か月。二か月間何も仕事のなくわけわからない時間を謳歌していた。 


「……暇だ」


ベットで横なり何かをしようともしないギルティはその姿さながら動物のナマケモノだ。

しかし、ラックスが言っていた事、この会社は黒か白か、闇か光かの両極端の仕事としか受けないという事は、その判断は間違えなくラックスが行っているはずだ。


光か闇か、ラックスにとって闇は大統領の暗殺、そのレベルの闇という事だ。

そんな仕事がポンポン舞い降りてくるわけがない、光も同様。わかっている。


「……ギルティ」


ベットで寝ていたミクが上からギルティを覗くようにしてみる。

部屋はどうなったのかって?

結局、ギルティとミクは特別という形で一緒の部屋になってしまった。


「…飯か?」


「…違う、暇だね」


「…そうだな」


今のギルティたちのやることと言えば飯を食って寝る、という退廃的を超えて人間を辞めている生活にはそろそろ耐えられない。

仕事がないのはラッキーだと思う奴のいるかもしれないが、無さすぎるというのも複雑だ。


「……ちょっといい?」


「どうした?」


「…外に出てみたい」


「…外?」


返ってきた意外な回答にギルティは聞き返す。


「…そう、行きたいところがある」


「…わかった、ではラックスに一応連絡はしておこう」


「もうやった…昨日のうちに」


「そうか?それならいいが」


ミクは意外にも用意周到だった。到底外に出れる服ではなかったギルティはタンスから自分の服を取り着替える…下は着替えなくてもよい。


「…早く」


「わかっている」


服を着替え終わったギルティはパンパンと服を叩き少しのしわと埃を飛ばす。

その埃が部屋を舞ったのを見て窓を開け換気したギルティは「よし」と一声打つ。


「準備は出来た、何をすればいい」


「とりあえず私についてきてほしい」


「…ついてからのお楽しみってやつか」


「そういう事」


そういい、ミクとギルティは扉を開けて部屋を出た


──────────────────────────────────────






外に出てからの移動は主に電車。そして多少の徒歩を交えた経路の先にあったのはギルティ達のいる国の隣か、はたまたギルティたちのいる国に入っているか、その境目ぐらいの位置についた。


ギルティも初めて足をつけた場所、あまり外には出ないミクにこの場所を知っているはずがない、考えられる可能性は一つだけ…


(ミクの未来予知が始まった…そう読んでいいのだろうか)


そう解釈しなければ納得ができないと、ギルティは思った。


「……ついた」


ミクがそう口にしたところで、ギルティはざっと今いる辺り周辺を見渡す。

人はいる、建物も先進国と何ら変わりないレベル…特徴がない平凡な場所だ。


「こんなところに用なんてあるのか?」


「ある、とにかく私についてきて…」


まだついて行くのかと、ギルティは小走りのミクを追いかける。

その間もなにかがあった時用にギルティは自分の周りを見るのを辞めない。


(見れば見るほど普通の場所、この俺自身すら来たことがない場所だ。ならば、十中八九ミクの未来予知に違いない)


「っと、ミクどうした」


「…まって」


先ほどまで小走りだったミクが突然止まり周りを見渡し、近くを行ったり来たりしているのを見てそろそろ我慢ができなくなったギルティはミクに言った。


「おいミク、さっきから何をしているのか、そろそろ説明したらどうだ?お前は何をやっているんだ、お前の未来予知でここに来たのか?」


「…違う」


「なに?」


「…いいからついてきて」


予想外の回答に固まっているギルティを置いて今度はちゃんと走ってどこかに行ってしまった。その顔は少しの苛立ちと焦っているような顔をしていた。

とにかく何かがあったのだろう。


「…仕方がない」


今はミクの矛盾についての指摘はやめようと、ギルティはミクが走っていった方向へと走り出し、追いついたかと思うと、ミクの体を抱きかかえた。

抱きかかえられたミクの体がびくっと反応して、こちらを睨む。


「…何やってるの?」


「ミクが指示して俺が走った方が早い、そうだと思わないか?」


「…余計なおせわ」


「はっはっはそうか、なら降ろすぞ」


「…降ろせとは言ってない、そこ右」


面倒くさい奴だと、ギルティは思ったがそこ言葉はここのタンスに閉まっておく。

本当にここには何かが起こるのだろうか、武器を何一つ持ってきていないギルティはどうすればいいかと考えながらミクの指示に従い走った。


─────────────────────────────────────





「…ストップ」


ミク掛け声にギルティは急ブレーキをかけるようにして止まり、ミクを地面に降ろす。降ろした瞬間にミクはさらに歩く。


「…目的の場所には着いたのか?」


「あと少し」


目的の場所…とは言うがと、ギルティは先ほどまでとは違う空気感に少し溺れそうになる。明らかに先ほどの場所よりも緑が多くなった。しかしそれは完全な森というわけではなく、ところどころに家は立っている、別荘地帯みたいなものだろうか。


「…ついた」


「…ふむ」


少し歩いてついた場所は一軒家。それ以外は何の情報も外見からは見受けられない

あまりにも支離滅裂な行動にギルティは「なぁ」とミクに一声かけてからミクに聞く。


「ここがお前の目的なら、お前は誰かに会うためにこんなところに来たのか?」


「…そう、でもその理由は教えられない」


「もとより詮索する気はない、お前がどんな困難を乗り越えて成長したのか、その目で確かめさせてもらう」


「…勘違いしてると思うよギルティ」


そう言い、ミクは目の前にあったインターフォンを押した。

馴染みのある音が聞こえる。


「……」


「……」


ミクは目の前にあったインターフォンをもう一度押した。

馴染みのある音が聞こえる。


「……おい、留守なんじゃないか?」


「そんなはずない」


ミクとそんなことを言っているとガチャっとドアの開く音が聞こえた。

反射的にドアの方面を見ると、そこにはギルティと一緒ぐらいの男がドアノブに手を置いてこちらの様子をうかがっていた。


「えっと…どうも、僕に何か用ですか?初対面だと思うんですけど…」


「…いや、用があるのは俺じゃなくてこっちの方なんだが」


刹那、ミクが消えた。その目の前にはとんでもない出来事が起こっていた。


「なん…だと」


「えっと?」


「……」


その場にいる二人の男が困惑していた。

予想のできないことだろう。この場に静寂が訪れるのも想像できる。

目の前の名前も知らない男の足にミクが抱き着いていたのだ。













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ギルティレコード ー危険度S×謎少女ー 超あほう @coming1234

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