第2話はじまり~妃奈美side〜

ーーいつまで、こんな生活を続けるんだろうーー


わたしは、「完璧な私」を演じきらなくてはいけない。みんなの求める私でいなくてはならない。そうじゃないと、わたしに価値なんて・・・・・・

「わたしは女王様なんて大層なものじゃないのに」

そう呟いた途端、涙がこぼれた。弱いわたしを隠すための、人に認めてもらうための仮面はあまりに厚くて、あまりに苦しい。わたしは1人で泣くことでしかその発散方法を知らない。とはいえ、普段の私なら学校で泣くなんてリスクあることは絶対にしない。

でも、あの日は違った。私は、誰もいない教室で溢れた涙を抑えることができなかった。失敗が続いていたのと忙しさに拍車がかかっていたせいで、気づかぬ間に結構限界がきていたのだと思う。まあ、今日はこのまま議会報告作って終わりだし、この時間、教室には誰も来ない。早く終わらせて帰ればいい。

私は仕事を終わらせた。涙が止まることはなかったけど。あとは帰るだけ・・・・・・と思ったとき、ガラッとドアの開く音がした。気づいた時には遅かった。クラスメイトの浜野くんに泣いているところを見られてしまった。私は焦って教室を出ようとした。終わった、と思った。とにかく早く離れなきゃと、それ以上何も考えられなかった。

そのとき、パッと私の腕は掴まれ、その瞬間私のぐるぐるしていた思考はすっと落ち着きを取り戻した。そして、現状を改めて把握し、いかに取り繕うかを考え始めた。でも、掴まれたこと、弱い所を晒してしまったことによる焦りや恐怖がまさり、第一声は私らしくない、酷いものだった。

やってしまったと思い彼の顔を見ると、思ってもみなかった表情をしていて驚いてしまった。彼は私に軽蔑か、失望か、とにかくマイナスな感情を向けていると思っていた。が、実際は心配しているような、何故か彼自身も驚いているような、困惑しているような表情をしていた。おかげで私は少し冷静さを取り戻した。いや、これ以上心配をかけないよう、気丈に振舞おうとしたが正しいかもしれない。

とにかく、その場はどうにか収まった。彼は私の考えを察したのか、黙っていてほしいと言おうとした途端、誰にも言わないと言ってくれた。

面倒くさがりで、特に関わりのなかったクラスメイトの浜野くんは、思っていたより優しい人なのかもしれない。もうすぐ2年生も終わるし、もう関わることは無いかもしれないけれど。でも、

「今度、普通に話してみたいな」

彼に少し興味が出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女王様はじつは可愛い 塚本なる @naru_1021

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ