第2話 世界征服部設立の裏に・・・
「…………お、おい。何を来て早々冗談をかましておるのじゃ」
「冗談じゃないぞ。本来、最低でも3人必要な部員数をエレーナが無理を言って2人で認めさせ、殆ど使ってなかったとは言え1つ部屋を渡してやったのに活動も特にせずに部室でだべってるだけの1か月。魔王の我儘で渋々認めた教師陣は部活を廃部に出来る免罪符を得たわけだ」
「うっ」
アリアの正論パンチを受けた魔王は顔を歪める。
ここ1か月この部活は活動らしいことを一切していないのは変えようのない事実だった。
巻き込まれた俺はそもそも乗り気でないので活動を積極的にしない。
肝心の魔王は部室に来てはゲームをやったり、お菓子を食べたり、課題をやったりと部活動に関係ないことばかりやっていた。
一応、世界征服活動計画書(仮)とエレーナが命名したノートにどうやって世界征服を行うか、書き込んではいたがやっていることは妄想を書いているだけなので部活動にカウントされるか怪しい。
「じゃ、じゃがお主らが魔王である我に逆らえると思うとるのか」
ここで魔王は切り札である『我魔王ぞ』を発動する。
その能力は魔王という名前を笠に言うことを聞かせるという最低な技であり、その効力は凄まじく大抵の魔族は言うことを聞き、人間はその圧力に屈してしまう。
下手な魔法よりも強い威力を持つのだが――
「逆らえるよ。だってこの学校だと教師の方が立場上だし」
この学校ではあまり役には立たない。
設立された当初ならば貴族と平民で教師たちによる贔屓や差別などが横行していたが時代は進み貴族と平民での接し方を平等にするため、学校ではいかなる権力も行使してはならないと定められている。
そのため必然的に教師が一番上の立場となる。
だからこそ俺はこの部活が認められたのが疑問でならなかった。
「それなら、最初から認めなければよかったじゃないですか。エレーナにNoって突きつけてやれば俺も面倒ごとに巻き込まれなかったのに」
「まぁ、なんだ、毎年一定数保身に走る奴らがいるんだよ。特に新任の教師がビビッて権力に屈する。それを利用してこの魔王様は部活を設立したってわけ。1回、OK出したのにやっぱりダメってなるのは信用問題に関わるから取り消すにも取り消せなかったのよ」
「別に利用なんてしてないのじゃ。ただ、ちょーっとお願いしたら認めてくれただけなのじゃ」
何故か誇らしげにしているエレーナをアリアはジト目で見る。
「お前、それ確信犯だろ。これでエレーナがこんな訳の分からん部活を作れた謎がやっと解けた。あと、アリア先生に聞きたかったんだけどなんでこの部活の顧問引き受けてくれたの?俺の知ってるアリア先生は絶対面倒くさいって断るのに」
「そ、それは…………ちょっとな」
俺はアリア先生にしては珍しいこともあるなと思い興味本位で聞いただけだったのだが何故か言い淀む。
その様子を見たエレーナは先生がこんな状態になったのか得意げに話し始める。
「アリアが21連勤で目の下にくっきりと隈を作ってるときにこっそりと書類を持ってって名前とハンコを貰たのじゃ。船を漕ぎながら仕事をしてたから簡単に顧問になってくれたのじゃ」
エレーナの暴露を聞いたしまった俺はアリア先生の方を見るがスッと顔を逸らされた。
反射的に見てしまったが先生に憐憫の情を抱いた。
21連勤という社会の闇を聞いてしまった今、先生を責めるのはお門違いだろう。
「これは、不慮の事故みたいなもんですよアリア先生。21連勤は仕方ない。仕方なかったんですよ。アリア先生は何も悪くないですよ。この学校とエレーナが全部悪いんです」
21連勤のことを思い出し、悄然としていた先生を慰める。
その様子をエレーナはニヤニヤと見ているがこの状況になったのはお前のせいだ。
「悪かったな、テウス。少し取り乱した。あの21連勤地獄は今にも夢に出てくるんだ」
よっぽど地獄を見たのだろう。
これ以上の詮索はアリア先生のトラウマが刺激されそうなので話をやめ、本来の話題に戻す。
「それで、この部活は結局廃部ってことでいいですか?俺としちゃ嬉しいですけどエレーナが黙ってるとは思わないっすけど」
「そうじゃぞ!我がタダで黙っていると思うなよ。部活活動を認めてくれるまで惨く、地味な嫌がらせをしてやるのじゃ。例えば、昼休みに職員室へ忍び込みこっそりメインとなる弁当のおかずを盗んでやる」
なんて陰湿なやつなのだろう。
魔王は大物の様で意外と小物だったりするので行動自体は納得がいくが。
因みに俺もエレーナの機嫌を損なわせたときにミニハンバーグを取られた経験があったりする。
「まぁ待て。我々、教師陣もいきなり廃部にするほど鬼ではない。これは最終通告みたいなものだ。世界征服部の問題は2つ、部員が3人以上居ないこと、活動内容が明確でないこと。これさえクリアできれば部活の存続を認めることにした。期限は1週間」
話を聞く限りエレーナの作った部活は教師にはあまり認められていない様に感じたので直ぐに廃部になると予想していたのだが存続の可能性はあるようだ。
エレーナも即廃部になると思っていたようで廃部回避の可能性に目を輝かせてた。
「アリアよ。その言葉に二言はないと見た。我々はこれより部員集めを行う。1週間後にアッと言わしてやるから覚えておれ!行くぞテウス。部員探しの旅に向かうのじゃ」
俺の腕を掴んで連れて行こうとするが広大な学校内を彷徨するのは嫌だ。
それに時計を見たところ18時を指そうとしている。
「水を差すようで悪いがそろそr『本日の活動は終了時刻となりました。鍵の閉め忘れ、忘れ物に気を付けて速やかに帰宅をしてください』と言う訳で明日から頑張ろう」
やる気満々だったエレーナの顔が一気に覇気のない顔になった。
世界征服部 無形の空 @obasuteyama
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