猫をかう

西しまこ

第1話


 猫が欲しい。


 急にそう思って、ペットショップに行った。

 本当は保護猫をもらい受けた方がいい、とは分かっているのだけれど、どうしても急にいますぐ欲しくなってしまったのだ。


 近くの大型ショッピングモールに行く。

 二階のペットショップに直行する。

 ああ、かわいい!

 私は一目で気に入った、ふわふわの白いペルシャ猫を連れて家に帰った。もちろん、様々な猫グッズも買いそろえた。


 家に帰り、猫をそっと室内に出す。

 猫は少し怯えていたが、すぐに元気よく探険を始めた。

 私は寝転びながら、猫とずっと遊んだ。ふわふわの毛玉みたい。ふふふ。


 達也が去ったあとの部屋はさみしくて、二人でいたときはすごく狭いと思っていたのに、部屋が広く思えて観葉植物を置いたりもしたけれど、広さを持て余していた。空間だけではなく時間も持て余していて、今までいかに恋人に依存した生活をしていたのか思い知らされた。

 そんなとき、何気なくSNSを見ていたら、猫の動画に出合った。


 そうだ、私、猫好きだった。ここに越して来たとき、ほんとうは猫を飼うつもりだったんだ。ペット可の物件だったし。でもすぐに達也とつきあうようになって、達也が、動物があまり好きではなく、特に猫は猫の毛アレルギーで、絶対に飼うことは出来なかった。

 達也ももういない。


 そうだ、猫を飼おう! せっかくだもの!


 そんなわけで、私はペットショップに行ったのだ。気持ちがしぼんでしまう前に、すぐに。思い立ったが吉日って言うしね。

 ふわふわの仔猫を見ていたら、こころが満たされていくのを感じた。よかった、すぐに買いに行って。ああ、もうぬいぐるみみたい! 

 私はねこじゃらしを使って遊んだり、鈴がついたねずみのおもちゃで遊んだり、それから餌をあげたりトイレの場所を教えたりして過ごした。あっという間に時間が過ぎていった。


 そうそう、名前をつけなくちゃね。何がいいかなあ。……ふふっ、くすぐったい! ……あ、本気でかまないで、痛いんだよ。……なになに? 遊んで欲しいの? ……ふふ。

 お前はアビーにしよう! アソビが好きな、アビー。変なネーミング? でも、私は私の好きにしていいんだもん。猫飼ったり、猫と遊んだり。

 達也は紅茶があまり好きじゃなくて、コーヒーばかりだった。私は、ほんとうは紅茶の方が好き。明日は私の好きな紅茶の葉を買いに行こう。新しいティーセットを買うのもいいな。ウエッジウッドにしようかな。ロイヤルコペンハーゲンにしようかな。達也はあまり食器に興味がなかったから、高いティーセットは買えなかったんだよね。


 でももう、私の好きにしていいんだ。よかった。



  了



お題「思い立ったが吉日」にわ冬莉さんより(ありがとー!)


☆☆☆いままでのショートショートはこちら☆☆☆

https://kakuyomu.jp/users/nishi-shima/collections/16817330650143716000

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