武士の世界を描きながら、
根底に流れるのは人間愛と平和への希求だと思います。
舞台になっている時代は源平合戦の頃ですが、
戦を描くための歴史小説ではありません。
戦における命のやりとりに際して、
人が何を思い、どう考え、いかに向き合うのか。
ひたすら人間が描かれて行きます。
主人公として選ばれたのは大庭景義(おおば かげよし)ですが、
ほかにもたくさんの人物にスポットが当たり、
群像劇ともいえる描かれ方をしています。
景義自身は老齢の域に至り、悟りを開いたかのような人間性を備えていますが、
彼が手を差し伸べる若者たちはまだ未熟で、悩み苦しみながら成長していきます。
『ふところ島のご隠居・第三部』ということで、
第一部・第二部からの続きになっています。
第三部から読み始めても分かるかとは思いますが、
ぜひ第一部からじっくり読み進めてほしいです!