作者の文章力はとても高いです。
きっとあなたはスルスルと読まれるでしょう。あっという間に。ストレスなく。
(なんなら私は何周も繰り返し読んでいます。)
最後まで一気読みして寝不足になるかもしれません。でもそれを可能にしているのは高い筆力と描写力、そして上手い構成です。
言葉選びは難しい単語も言い回しもしないし、平易過ぎるわけでもありません。ウェブ小説特有の言い回しも避けています。
視点変更のタイミングやストーリー構成も緩急の付け方が絶妙で、ダレることなく詰め込むこともせずリズムがいいですし腹八分目の描写が後を引きます。それは詰まるところ言葉選びを丁寧に取捨選択されていて作者自身が読み手として俯瞰で見ることができているのだろうと思います。
当たり前のように見えて誰にでもできることではありません。
作者はまさにこの主人公佐藤ハジメのようだなと思いました。
だから安心して物語に委ねてください。
日常でありそうな、だけど、ちょっとかけ離れたところもあるけれど。日常の中で、登場人物一人一人が成長していく姿を感じられる、素敵なお話。
物語のための登場人物というよりも、彼らが生きる世界を覗かせてもらっている、そんな気持ちになれる小説です。
一人一人がしっかり意味あるものとして書かれているけれど、そこに一人一人の異なる考え方や生き方も感じられるくらい、深く読むこともできるような気さえします。
完結後も月に一度は読み返したくなって、初めからワクワクしながら文字を追う。なのに、その度に新鮮な気持ちで楽しく読んでいます。文章も、行間も、読みやすくてついつい夜更かししちゃいます。
この作品と出会えてよかったと思います。
本を手に取るのがとても待ち遠しいです!
佐藤と佐藤。
一番目と二番目。
学校生活において、見た目や運動神経の良い生徒は一際輝いてみえるだろう。
この物語で出てくる一番目の佐藤は、まさしくそんな生徒だった。
しかし、この物語の主人公は二番目の佐藤だ。
身長が低く、目立つこともないひっそりとした生徒。
そんな彼が、一人の女子生徒と恋仲になったことで、さまざまな変化を遂げていく。
彼自身だけでなく、彼の周囲の環境さえも。
いつだって人は、一人で生きてはいないのだと、そう語りかけられているかのような物語でした。
二人の青春が弾けるような物語の中に、誰かの青春もまた浮かんでいる。
サイダーのような爽快感と、スッキリとした後味の物語。
ぜひご一読を。
こちらの心までギュッとさせられるような、そんな素敵な作品でした。