あなたに恋しちゃったので殺しに行きます

ビル

第1話

 ──プルルルルル

時刻は朝の8時。ヒロミは電話の音で目を覚した。

「お母さん、こんな早くからなに?え?同居?それも異性と?え?冗談じゃないよね?え?30分後に到着される?まって……」

 母親からの急な電話はなんと、知り合いの男性が急遽一緒に住むという内容だった。信じられない。でも、30分後には相手が来ることを考えると、のんびりしていられなかった。急いで、部屋の片付けをし、掃除をしで大忙し。30分経つのはあっという間だった。


 ──ピンポン

「ヒロミさんのお宅で間違えないでしょうか?今日から暫くお世話になります、白川智道です。どうぞよろしくお願いします」

時間ぴったりに男性は家に来た。ん?なんか見覚えがあるような……気のせいか。いや、やっぱり見覚えがある。それにこの美貌ときたら……。

「ヒロミです。こちらこそよろしくお願いします。どうぞ私のことは気にせず寛いでください。それと、この場では何ですが、貴方様は、Nコーポレーションの方ですよね?私、今度貴社にインターンシップに行くことになってます。よろしくお願いします」

「あぁ、わざわざ挨拶してくれてありがとう。しかし、驚いたな。百合子さんは何も言ってなかったぞ。僕は堅苦しいのは好きじゃないから、歳の離れた兄と思ってくれていいからね?」

イケメンでこのフットワークの軽さ。ヒロミは、感動した。一目惚れして待ったのだろうか。心が忙しなく動いている。こんな気持ちは初めてだった。



 インターンシップ当日

「本日からインターンシップ生としてお世話になります、ヒロミです。御指導の方よろしくお願いします」

インターンシップ生全員の挨拶が終わると、社長がそれぞれの配属先について話し始めた。

「それじゃ、ヒロミさんは、広報課の白川君のもとで学んでもらおうかな。白川くん、頼むよ」

配属先はまさかの白川智道のところだった。これには、白川も知らなかったようで、お互いに固まってしまった。

「さて、それじゃ、行こっかヒロミさん。ついてきてください」

「はい」

家にいる彼とはまた別の彼だった。家にいるときは歳の離れた兄の雰囲気だが、職場にいるときはピリっとした雰囲気だった。それでも、他の女子大生や社員の相手をするときとは何処か違った。ヒロミ以外のひとは、必要最低限の事しか話していなかった。休み時間になってもだ。そんな彼を見て、ヒロミはますます好きになっていった。いつかは彼を私のものにする。だから、これから覚悟しといてね、白川智道さん。私は貴方を殺しに行きます。


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