斎藤和夫 【ラストコントラストコント】
どうもいまだに大人になれている気がしない。
歳ばかりが重なって、いつの間にか老人と呼ばれる七十を超えていた。見た目と周りの態度ばかりが変わっていき、中身は乖離されたのかと妄想に更けいってしまう程には成長がどこかで止まっているがその何処かが分からないし分かろうとも思わない。
老人だからと周りに求められる態度はどんどんと横柄なものへとなっていき、物腰柔らかくいけば優しすぎると叱られてしまう。世間的には横柄な老人は良い悪いかまわず悪人と称され所かまわず疎まれ嫌われて行くのに、いざ優しく接すると何かが違うと一蹴されしたくもない説教をさせられる。それが俺の思う今の老人の在り方だ。
でも確かに悪い老人はいるし、それがひとつの指標として扱われるのも痛いほどわかる。なにせ、俺自体も若者と呼ばれる時間を過ごした身だ。理解したくなくてもしてしまうし、嫌なほどに共感してしまう。
だが、こんな扱いを受けてもなお歳を取って良かったと思える。
俺は有り難いことに家族に恵まれ更に子孫に恵まれた。娘と妻と過ごし、今は孫娘と過ごしている。幸せなんて言葉がお粗末になってしまうくらいに笑顔に囲まれた人生だ。それに加えてただ何となくスーツを着たくないとの反骨精神のみで始めた、この当時にしては珍しかったコインランドリーも改装を重ねて食べていけるほどには経営を続けられてきている。
俺はこのコインランドリーの空気が好きだ。娘や孫が育った姿を共に見届けたこの場所が大好きだ。そして、家族だけじゃない。歳を気にしない友人とも出会えた。
「お邪魔しまーす」
「おう」
改装をしてもなおその古びた様相を保ったままの引き戸の出入り口は、最初こそただのボロ屋のように見えそうで嫌悪していたが、なんとなく最近はこれはこれでいいし思い出も詰まっているとお気に入りとなっている。
その引き戸が、ガラガラ、と元気な声をあげながら開くと友人である宮内くんが顔をのぞかせてきた。
「斎藤さん、これ」
「いつもそんないいのに」
「場所代ですよ」
「では、遠慮なく」
なんてわざとらしいお決まりの掛け合いからはじまり、店の中央においてある普段は客の待機用テーブルに頂いたキンキンに冷えたビール六本と落花生などのおつまみが入った袋を置き、対面になるようにそれぞれ椅子に座る。
「なんか久しぶりですね。飲むの」
「お互いに大変だからな。そっちは大丈夫なのか?」
「四菜の実家に子供連れて帰ってるんすよ。僕も行きたかったんですけど仕事で」
少しやつれているようにも見える宮内君のその表情は、家族と過ごせない悔しさと寂しさで溢れてかえっていた。
「大変だなサラリーマン」
「本当っすよ。で、斎藤さんの方はどうですか?」
「こっちは椿木がやっと社会人になったと思ったら、きちゃったよ」
「お、椿木ちゃんにも春が」
迷い事にも似た笑える冗談を言う宮内君の言葉をかき消すように俺は言葉を重ねて話し始めた。というかだ、俺の可愛い孫娘に春などあってたまるものか。
「違う違う、愛奈だよ」
「あ、もしかして」
「そう、反抗期」
宮内君はその言葉を聞いた瞬間に、嬉し恥ずかしといった嬉々とした表情で頭に手を添えて大袈裟に反応する。
その姿はまるで親のようで、成長していく姿を喜んでいるようにも見えた。
「かー! ついにですか」
「もう、すごいよ」
子育てを経験していないわけではないので喜びや辛さがあるのは知っているし、この子供の反抗期や思春期が後々に思い出となって語り草となる喜びも知っている。だが、娘の時も椿木の時もこの時期にあたるのは正直しんどいし、なによりこっちは男で親ではなく祖父だ。気持ちを理解するのに時間がかかってしまう。それにたとえ理解できたとしてもそれが本物の心情なのかどうかも、家族他人問わず異性という壁の前にはどうにも敵わないとこの身をもって経験してきている。
だからこそ余計に考えてしまうのかもしれない、余計なことを。
「うちの娘もいつか来るのかな」
「その前にイヤイヤ期があるだろう」
「あぁ、絶賛そうです」
「大変だな」
お互いに苦虫をつぶした様な引きつり笑いとため息を混ぜながら家庭の近況を話すのが、いつしか飲み会の始まりの通例となっていた。
酒をあける前に少しだけお通し感覚で話すと、不思議なことに飲み始めてからグイグイと遠慮なく愚痴やら自慢やらが出せるようになるので、意識的にやっている部分もある。
「まぁ、とりあえず飲むか」
「ですね」
宮内君が持ってきてくれた冷えたビールを取り出し、プシュッ、と小粋な音にのせて清涼感漂う麦の香りがあふれ出してくる。そのおかげで喉の渇きが最大限を超えて今か今かと待ち望んでいる。夏のこの季節だからこそ味わえる一番おいしい飲み方だ。ただ、このランドリー内はきちんと冷房が効いているのでそこまで暑くはないが、体感している季節がそうさせているので問題ない。
「では、お疲れ様」
「お疲れ様ですっ」
いつしか言わなくなった乾杯のかわりに、互いにねぎらいの言葉をかけビールを一口、二口、グビグビと喉を楽器代わりの奏でて、缶を口元から話した瞬間、くはあああっ! と残っているストレスをすべて吐き出すように叫ぶことで飲み会においてのビールのうまみは完成する。
七十を超えて、心配されることが多くなったが好きなものを奪われる方が余計に心労が祟ってしまう。車の免許など見ず知らずの他人を不幸にさせてしまうものなどは別だと思うが、こういった酒などは許してほしい。
流石に全部をとられてしまったら、それこそボケが進んでしまう。
「相変わらず元気ですね」
「酒は百薬の長だからな」
「斎藤さんを見ていると本気でそう思えてくるんだよな」
飲みっぷりが若々しい宮内君も、もう三十六になったらしい。世間的にはもう、おじさん、と呼ばれる年齢にいつの間にかなっていた。
「本気にするとアル中になるから気をつけろよ」
「当たり前じゃないですか。それに下戸じゃないですけどそんな飲めませんし」
自分で持ってきたおつまみを広げながらもうすでに顔が赤くなり始めている宮内君は、昔からお酒に弱いらしいが、正直そこら辺の同年代よりも強いとは思う。
すぐに顔に出てしまうタイプがゆえに自分ではそう思っていないらしいが、かなりの量を飲めるのを俺は知っている。さすがに三十代後半という事もあり知っている限りの全盛期よりかは落ち着いてきてはいるが、俺の人生で出会ってきた人の中で三本指には入るほどの強さはある。ちなみにその三本の中に宮内君の嫁さんも入っているし、何なら宮内君より強い。
そんなことを考えながら、開けてもらったバタピーをぽりぽりと食べビールと塩分の最高すぎる情熱的な邂逅を楽しみつつ身の上話に花を添えていく。
「最近はどう」
飲み会のにおける枕詞のようなこの始まり方はもはや礼儀と化している節があって、そこまで好きではないのだが話始めとして使い勝手がこの上なく最高なので、ついつい使ってしまう。
「四菜や向こうの家族に頭があがらないです」
「子育てって正解がないからわからないが、見ている限り宮内君は正解ってやつだよな。自分のできることを精一杯やっている」
「当たり前じゃないですか。家族ですよ」
宮内君のしっかりとまっすぐなその言葉に、いい時代になったな、とあまりしたくもない年寄りな感想が出かけてしまい自分の老いに改めて時代を感じた。
「そうなんだよな。そうなんだよ、家族なんだよ」
「すごい噛み締めて言いますね」
「いや、俺が若い時代はさ、男は外で仕事するもんだ。子育てなんざ手伝う奴は軟弱者だ! みたいな馬鹿にも程がある考えが一般的で、それはおかしいと思って俺は手伝ってはいたんだけど、そのせいで嫁さんの父親からはえらい怒られてさ、理不尽が常識だったなぁって」
「うわ、きついっすね」
年代を重ねた愚痴は、年季をメッキのように塗だくりその隅で起きたボロから全てが崩れていき、やがて常識を変えていく。当時の常識は今の異常になって、本人たちの見ない足元で齟齬が生じ、若者を理解しようとしない老人が生まれてくる。
それが老人の俺が思う、今の老人の在り方であり老人の愚痴の正体だ。
ただ、俺が今の時代に適さない同年代に言いたいのは、ざまぁみろ。自業自得だ、と精一杯の皮肉と憎悪と悦楽を込めて吐き捨てたい。
「だから、よかったな」
「めっちゃ重み凄いですね」
「案外、紙よりもペラペラかもしれないぞ」
「その時は、無邪気に落書きしまくってあげますよ」
頼もしい限りの言葉とは正反対の無邪気な子供のような無垢な笑顔で答える宮内君は、おそらく俺の腹のうちなんかとっくの昔にお見通しで付き合ってくれているのだろう。
長年の温めて成長させてきた年寄りの勘がそう言っている。
「じゃあ、定番のデコに肉は頼むぞ」
「その落書きに対して前向きな人、初めて見ました」
「そこはねやっぱりもうお気に入りだからね」
「変なものを気に入りますね」
おでこに肉と書かれたら強くなった気がする。なんてこの歳まで思っている俺はきっと阿保だろうし、そんな阿保な自分であり続けていたいと願っている。
「てか、斎藤さんはどうなんですか。愛奈ちゃんとの、こう、距離感って言うですか? 今後の参考にさせてくださいよ」
「あー、反抗期の事か。それはだな、もう真っ向からこっちもグレるか諦めるかだ」
「お、すごい参考にならなそうだけど聞いときます」
「ほう、この話聞き終わった後に俺に頭下げてお礼言ってるからな。聞いとけよ宮内君」
宮内君がにやりとわざとらしく笑ってみせ、その挑発にわざと俺が乗る。いつものプロレスの様なふざけたノリだがこれがまた飲みの席では盛り上がる。
「いいか? まずはな、反抗期の子に恥ずかしさってものを具体的に見せつけるんだよ」
「ほう」
「例えばだけど、子供が急に金髪にしたとするだろ。ならこっちはさらに派手な金の圧で対抗していけばいいってだけよ」
「すごいです。何も参考になりません」
爽やかな笑顔とともに俺のかよわい心をいともたやすく折ってくる宮内君からは悪気が一切見えないというか、ないのでこの寂しさをどこにぶつけていいかわからなくなる。
「だからその、ほら」
話している途中でビールを、グビッ、と飲み荒波に乗ったサーファーの如く勢い任せに締めの言葉を言ってみる。
「相手と同じ土俵でかましてみろってことだ」
「サラリーマンには難しいっすね」
「かぁっ! そこをガツンとやっちゃうのよ」
「申し訳ないっすけど、その心意気は平成中期ごろに置いて来ました」
やけに具体的な年代を言ってくる宮内君の目は、ビールを飲みながらあの頃を思い出すかのように目の前にいる俺ではなくどこか遠いところを映し出していたような気がする。
良いも悪いもテンションが動くお酒において、よくも心ここにあらずの無関心状態になれたものだと少しばかり感心してしまった。
「今すぐに過去に戻って取り戻してこい」
「今の自分も中々に好きなので間に合ってます」
「それはいいことだ!」
「斎藤さん、酔うのだんだん早くなってきてますよね」
確かにと、空けた缶の本数を数えるまでもなく目の前に置かれている一缶のみでこんなにも気分がよくなれるのかと、効率の良さにまた酔いが回りだしてきた。
若い頃はというかつい十年前までは酒豪とまではいかないが、そこそこに飲めて尚且つ酔うのにもそれなりに飲むか、無意味にちゃんぽんをしてからではないとスタートは切れないでいた。ただ、ここ数年で歳のせいもあってか、効率の良い酔いが多くなってきたような気がする。それはいいことなのだが、前みたく多くのお酒を味わえずに楽しめないという事でもあり少しだけ残念でならない。
「歳のせいなのか、何か病気でもあるのか」
「縁起でもない」
「案外そうでもないかもしれないぞ」
「………はい?」
口元を吊り上げ冗談交じりに言うには重すぎたその言葉に、宮内君はどこか不安を隠し切れずにいる。
と、何とも言えないタイミングでランドリー奥にある関係者以外侵入禁止の勝手口が、バンッ、と盛大な音を立てて開かれた。
「うおっ」
「お、宮内君きたぞ」
開かれた扉に向こうに立っていたのは先ほどまで話の渦中でもあった、それは可愛くてたまらない俺の孫娘のひとりである凪原愛奈だった。
「うっせぇぇ! ジジィッ」
若さ溢れるその元気はうらやましい限りだが怒りを原動力にしているあたり、俺の場合だと怒りに体が耐えられずに倒れてしまうに違いない。
「勉強の邪魔だろうがよぉ! 時間返せや」
怒りの方向性はどうやらかなり真面目な優等生なようだ。いい子に育った。
「元気だね、愛奈ちゃん」
「あ、宮内さん。お久しぶりです」
「久しぶり。この時間に勉強って真面目だね」
「自分のためなんで、先行投資です」
俺の知らない間に、愛奈はビジネスマンの様な言葉を得意げに鼻の下を伸ばして話すようになっていた。きっと、真面目と言われてうれしかったのだろう。しかも、憧れている宮内君から言われてはその嬉しさは倍増以上に違いない。
まったく姉妹揃って宮内夫婦に憧れるなんて、お爺ちゃんちょっと寂しいけど安心する。
「じゃあ、今度また家に遊びにおいでよ。四菜も菜未も会いたがってたし、ついでに勉強も教えるよ」
「ぜひ! 四菜さんも菜未ちゃんも久しぶりに会いたいので」
「伝えとくよ」
「ありがとうございます!」
ドアを蹴り飛ばしていた威勢はどこへやらと、周囲を見渡して探してみても到底見つけることのできないくらいに機嫌が様変わりしてはいるのだが、時々こっちを睨んでくる鋭い目つきからは溢れ出る殺気を感じ取ることができたので、おそらく愛奈のどこかに隠し持っているのだろう。
しかし、こうして少しずつ孫の世界が広がっていくのを近くで見ていると、周囲の人に恵まれているな、と改めて考えさせられる。
「じゃ、斎藤さんには僕から注意しとくから」
「ごめんなさい。面倒ごと任せちゃって」
感傷にふけっていたら愛奈から、面倒ごと、と認知され始めていた。話しを聞かずに感傷にふけっていた老人としての矜恃を全うしていたのは、確かにタイミング的には悪かったと思うが、どうして急に面倒ごと扱いなのだろうか。ちゃんと聞いておけばよかった。
「では、私は失礼します」
「うん、今度時間ある時に四菜から連絡行くと思うから」
「はい! 楽しみに待ってます。………はっ」
愛奈は最後の最後に俺を見て馬鹿にしたように笑って部屋に戻っていった。
きっと最後の空笑いは本当に憎しみとか怒りとかが混じったやつだろうな、と冷たい目線から察することができ、回ってきていた酔いが進行を止め再び酒を欲するようになってきていた。
「すごいだろ、反抗期」
「予想以上ですね」
よく見ると宮内君の額には、暑さからか緊張からか汗が少しだけ垂れ始めてきていた。
「よく心折れませんね」
「慣れはしないけど、割り切ることはできるからな」
「てか、同じ土俵でかますとか言ってませんでしたっけ?」
「ほら、俺もう歳だから」
年齢というのは時として最大の逃げ場となるので、有効活用さえしておけば今の世間の中じゃ案外するするっと渡り歩いていけたりする。
「なら、さっきの力説無意味じゃないっすか」
「いやいや、宮内君は若いからできるって。反抗期の時期ぐらいだとまだ四十代でしょ」
「四十代で十代へかますような体力が残ってるとは思いませんけど」
「案外行けたりするから平気、平気」
懐疑的な目線を冗談半分で俺に向けながら飲むビールはうまいのか? と尋ねたいところだが、きっと半分の冗談がいい具合に肴になって旨いのだろう。
さっきからおつまみのバタピーへの手も緩めないあたり、この瞬間にがっつり飲む気なのだろう。
「器用につまむねぇ」
「僕がサラリーマンになって、新人のころに覚えた技です」
「技って」
「飲み会において上司の話を聞きながらも提供されたものは残しちゃいけない。そんな、地獄の中でいかにして気を使わせず自分が飲めるかどうか、その隙間を利用した瞬発飲みです」
今日一番の自信と煌きを纏わせながら、今度は自慢し見せつけてくるようにその器用な瞬発飲みを見て思わず吹き出す寸前になる程度に笑いがこぼれてしまう。
しかも、笑わせに来ているのか目元がひと昔前のマンガのような劇画タッチみたく凛々しくなっており、笑いを堪えるには困難を極めた。
「わかったから、その技がすごいのは解ったからっ! おねがっ、やめ、あはは」
「まぁまぁ、ご遠慮なさらずに」
どこからともなく、スタッ、スチャッ、とスマートな効果音が聞こえてきそうな機敏な動きを余計にしながら、もう完全に笑わせに来ていることを隠すつもりがなくなっている宮内君は、その隙にもビールを飲み続けていた。
確かに器用なのだけれども、俺と二人で飲む席において本当に必要ないよなそれ、と心の中でつぶやくも笑いが止まらないせいで声に出すことができなかった。
実際そこまで可笑しくはないのだが、程よくくだらない技と無駄に機敏な宮内君の様々なポージングによってドツボにハマってしまった感じだ。酒を飲んでいるときはどうも、こういったくだらない方がよりよく笑える気がする。
「はぁ………はぁ………疲れた」
無駄に機敏な動きを数分間していたせいで、宮内君は少しだけ息を荒げながらその機敏さに終止符を打った。
「座りながらでも、結構、これ、つか、疲れますね」
きっと、宮内君も歳による体力の低下が著しいのだろう。申し訳ないがその疲れに絶望している今の表情が一番面白い。
「子供みたいにはしゃぐから、そうなるだろうよ」
「つい、調子に乗っちゃいましたね」
「ほれ、疲労回復にはビールじゃなくて芋焼酎ロック」
「………いただきます」
別段、焼酎に疲労回復などの性能はないとは思うが、適当に言っておけば、なんとかかんとかって効果でひと息つけるだろう。
そんな俺の言葉にそそのかされて、ぐいっ、と飲み干して落ち着いた様子に宮内君はなった。
「てか、焼酎に疲労回復なんてないですよね。プラシーボ的な事をしようとしたとしても雑過ぎませんか?」
そう、プラシーボ効果だ。
「雰囲気に流されなかったかぁ」
「流される前に雑なんですって」
場当たり的な感じで思いつき実行したのが、あまりにも雑過ぎてお互いにまたツボに入って笑ってしまった。
「もうただのホラ吹きだもんな」
「いや、もう、本当にそうですよ」
「ついでに宮内君も何か嘘ついてみてよ」
「なんすか、それ。えー」
飲み会のノリは、どんなに年老いたとしても本質的な部分では変わることはない。騒いでいた人は騒いだままだし、落ち着いている人は落ち着いたまま、ただ両者ともに変わることはお酒の好みだったり飲み方だったり、ノリ以外が変わっていく。もちろん、飲む相手もだ。
「あー、じゃあ」
とんでもない嘘を思いついたのか急にニヤニヤしながら俺を見てくる宮内君は、勢いをつけるために新しく缶ビールを開け、ゴクゴクゴクッ、と酒飲みとしては百点の飲みっぷりを披露し口を開く。
「四菜と僕の間に三人目ができだんすよ」
「三人目! あはは、その嘘も雑過ぎないか? だって二人目もま………え、三人目で嘘ってことだよな」
「はい、そうです」
なぜか淡々と言う宮内君の表情は何一つ崩れることなく、唐突な無表情で若干の恐怖を感じる。
「て、ことはだよ。二人目は、え? あれ、えっ」
「二人目を授かりました」
「まってまってまってまって、わかんないわかんない、いや、わかったとしてもややこしいって」
混乱が混乱を呼んでくるおかげで、思考の中の玄関チャイムが永遠に鳴り響いて情報の行列がずらりと並び始めてきた。
嘘をつくはずの流れで三人目に恵まれましたと嘘をついた宮内君は、確かに一人子供がいてたまに孫娘たちとも遊んでいたりする。
え、つまりどういうことだ?
「あー、えっとですね。今、四菜たちが向こうの実家に帰っているのって二人目を妊娠しているからなんですけど、三人目って言えば二人目の事は嘘ついていないことになるし、その流れで報告できるかなって」
「酔っ払いにはきついって」
あはは、と照れくさそうに笑いながら自分の後頭部を不自然に片手で撫で始める宮内君は、とんでもないタイミングで二人目を報告してきたものだ。
そもそも、酔っ払いにその嘘の流れを完璧といかないまでも読み取れるかといえば、今の俺のように何かしらの小さな引っ掛かりはあるかもしれないが気づきはしないだろう。
そこまでの思考回路があるとするならば、それは酔っ払ってはいないちゃんとした証拠になりえるだろう。
「ごめんなさい。なんとなく流れでいけるかなと」
「酔っ払いの思考回路の無さを見くびらない方がいいぞ」
「以後、気を付けます」
まさかこんな流れで二人目のおめでた報告を聞くことになるとは、こういったのもたまにある飲み会のノリなのかもしれない。
ふと何気なく言ってしまったり、こうやってドッキリのようにして結局グダグダになってしまったり、あるいは直球で来て驚いたり、飲み会やお酒はこうだからやめられない。
「まさかこの歳でこんなに、まぁ、ある意味で驚かされるとは思いもしなかった」
「報告しようかなって思ってて、ノートに書いていつの間にか知られてましたぁ、とかでも良かったんですけど、こういうのはどういう形であれ直接伝えたいなと思いまして」
「思った結果がこれは、回りくどいというか特殊すぎだな」
「びっくりですよね」
こっちの方がびっくりだわ、など小言を言いつつ新しく開けておいたビールを一口飲んで驚きを体へと流し込み、宮内君の子供の話で盛り上がり始める。
それからというものの飲み会は続いていき、すでに一時間は経ったかという時間に、ガラッ、と店の出入り口がゆっくりと開いた。
「あれ、電気ついてるじゃん」
「なんだ今日は帰ってこないとか言ってなかったか、椿木」
「おかえり、椿木ちゃん」
「宮内さん、お久しぶりです。おぉ、爺ちゃんと飲んでるんですね」
今日は帰らないからと連絡の入っていた椿木が暗い顔で帰ってきたが、宮内君がいると気付き少しだけ表情が明るくなったが、やはり暗さがあふれ出てきてしまっている。
そして、どうやら俺の言葉は届かなかったようだ。今だけは宮内君がとんでもなく憎くて仕方がない。
「お疲れってわけじゃなさそうだね」
「はい、まぁ色々と」
「椿木ちゃん、ちょっとだけ一緒に飲もうよ。いいでしょ、斎藤さん」
「孫と飲めるなんてお爺ちゃん冥利に尽きるからな」
気を利かせた宮内君と共に椿木を空いている椅子に座らせ、お嬢様を相手取るかのように缶ビールを開けおつまみを目の前に置いてみせた。
「お、ここの居酒屋の手際の良さエグい」
「しかも、完全プライベート個室と変わらないからね」
「コインランドリー風居酒屋として、この歳で新しいビジネスやるか」
「失敗したらすぐに爺ちゃんの事は見捨てるから安心して」
お爺ちゃんは今すぐにでもご乱心してしまいそうだ。
「じゃあ、まぁ、お言葉に甘えて一缶だけいただきます」
そういって椿木は男にも勝る飲みっぷりで、缶の半分は一気に飲み干すほどの勢いのままテーブルに、カンッ、と鳴り響かせるように缶を置いた。
もしこの音でまた愛奈が来たらちゃんと事実を伝えたうえで、俺が怒られるんだろうなとどこか諦めが入った。もう、今夜はとことんの飲み明かそう。
「あー、沁みる。てか、これとっとこ」
「あ、そのバングル」
「まぁ、今日はそういう日だったってことです」
「なるほどね」
なにやら椿木と宮内君が、兄妹のようにふざけ笑いあっている。
あの手首に着けていた物がそんなにおかしかったのか、はたまた二人だけの秘密を抱えているのかどうか、気になって仕方がない。
だが、あの二人の過去に何か言えない秘密があったとしてそれを、今こうして俺の前で隠さずに見せてくるかと聞かれたらそれはないと言えるだろう。椿木と宮内君は特に慎重派というか、そこら辺をうまくやり過ごすタイプだと推測でしかないが身の振り方でわかる。わかっていると思っている。
「二人してそんな笑って、何?」
「あー、えっと」
「爺ちゃんには言えない秘密」
椿木のその言葉に続いて宮内君が申し訳なさそうに笑いながら、すいません、と心なしか心無く三回ほど繰り返していた。
「え、つ、椿木、お爺ちゃん」
「もう私も大人だし、家族に言えない事あるの。爺ちゃんもそうでしょ」
深いため息をつきながら少しだけ憐みの入った椿木からの、その視線はあまりにも痛くここ最近の中で一番、響いてきた。
こうしてお爺ちゃん離れしていく姿を見ていると、娘が家族離れしていった頃を思い出してきて、不思議と悲しい気持ちではなく何処か嬉しい気持ちですらあった。だが、心に来るショックは別物であり、痛みはもちろん何度も言うが響くのだ。本当に、嫌って程に響くのだ。
きっと世の中の親バカや孫バカはこうやって生まれては儚く散って黄昏てみては、これがあの時の親の気持ちか、なんて感傷に浸るのだろう。そこまでが親バカと孫バカの生き様である。
「そうか、大人になったな椿木」
こういった時に、俺の様な爺さんがとるべき言動はきっと今ので間違っていないはずだ。
「え、キモ。あ、ごめん」
包み隠されることのなかったその言葉はその後の椿木の、言ってしまった感丸出しの反応で改めて本当であることを俺に知らせてくれた。
やばい、流石にお爺ちゃん泣きそうだ。
「斎藤さん」
そんな俺を見てなのか宮内君がビールを片手に隣の椅子に座り、どうしてか悲しい表情をしていた。
「流石に僕も今の斎藤さんの気持ちわかります」
流石は一人の親だ。宮内君という素晴らしい友人が居て俺は幸せ者すぎる。
「そうか、友よ!」
「はい、斎藤さん!」
涙目になりながら宮内君と俺は、ビールで乾杯をしてそのまま感に残っていた分を飲み干して、男の友情を確かめ合った。
「うわー、会社の上司たちと同じノリじゃん」
そんな宮内君と俺の様子を、呆れと嫌悪感丸出しで椿木は見てくる。
「なに、その年代の男って皆そうなの」
そして何故か節々の言葉に怒りがこもっている気がするが気のせいだろう。
「この年代だけじゃないぞ」
「男はね、共感しあえると立場関係なく熱くなれるんだよ。椿木ちゃん」
「うわぁ、また会社の上司と同じことを」
ますます俺らを見る目から感情がなくなっていく椿木を横目に、宮内君と俺は再びビールを一気に流し込み感情のまま共感しあった。
「まさかこんな身近に、このノリの人がいたなんて。特に宮内さんの事は信じていたのに」
「椿木ちゃん、僕ももうおっさんなんだ」
「あー、聞きたくない! 私の中じゃまだ宮内さんは二十代なの」
「そうしたら椿木と同い年になっちゃうじゃないか」
俺のこの言葉がいけなかった。
この言葉を聞いた途端、椿木の目に感情が戻ったかと思えばそれは怒りを通り越し憤怒ともいえる最大限にふつふつと何かを煮えたぎらせているような閻魔様によく似た顔つきと雰囲気を纏い、こちらに眼光をとばしていた。
「よし、僕はトイレかな」
事態を嫌でも察した宮内君はこの場から一旦でも逃げようと立ち上がったのだが、椿木鼻にも言うことなくただ無言で、たてた人差し指を椅子へと向け、座れ、と言わんばかりの圧と指示をしたことにより、気のせいだったか、と誰に向けたわけでもない現実と向き合うための独り言を言いながら宮内君はそのまま座った。
「宮内君、今度何か奢るよ」
「………子供服」
「………おう」
完全に俺の巻き込みである宮内君の事がいたたまれなくなり耳打ちで謝罪をした。
しかし、こんな時でも立派に親なんだな宮内君は。
それから椿木のほぼ無言の怒りを受け続け満足した頃には、体感一時間は経っていた気がするものの、携帯の画面を見ると十分程度しかたっていないことに驚きを隠せなかった。
おそらく、俺が人生で経験してきた時間経過の遅さで言えば歴代でも三本指に入るに違いない。これが緊張と圧のなせることなのかと考えると、背筋がとてもじゃないが真冬以上に寒くなった。
「わかった?」
終始ほぼ無言だった椿木がようやく何かを話したと思えば、感情が一切ないたった一言だった。
だがその言葉は宮内君と俺には充分すぎるほど畏怖するものであり、ここで何か一言でもちゃちゃを入れれば今すぐに何かが終わると理解をするにはたやすいものでしかなかった。
つまるところを言ってしまえばただただ怖いのだ。本当に怖いのだ。
「はい」
「はい」
なので、宮内君と俺は特にアイコンタクトなどもすることなく同じタイミングに震えた声で短い返事をしていた。
自分の孫娘をこんなに恐怖の大将へと育てたつもりはなかったのだが、婆さんと娘にでも仕込まれたのだろう。愛奈もだが、斎藤家の女は怖すぎる。
「歳は大事」
宮内君と俺に言い聞かせながらも、自分の身に沁み込ませるかのようにかみしめながら言っているようにも見える、そのたった一言はただなんとなく、それまであった椿木への怖さよりも、この子も大人になったんだなと感慨深いものが込み上げてきて思わず涙がほろりと溢れてきてしまう。
「え、斎藤さん?」
「ごめんな。なんか、急に孫の成長がうれしくなって」
「急にですか」
「酒と老人を掛け合わせたらもう駄目よ」
何事かと隣で慌てふためく宮内君をよそに、涙がどんどんと溢れてきて涙腺がどこかへと消えてなくなっていた。
お酒と老人は掛け合わせたらダメなのかもしれない。
「ね、椿木ちゃんなんとか」
「お爺ちゃん、今までありがとう」
「あ、雑にお礼を言って感動させようとしないで」
「椿木ぃ」
ついに人目を気にせず俺は号泣をし始めていた。
「あー、もう駄目だ。僕、帰ろうかな」
「宮内さん、ちょっと飲みなおしましょうよ」
「椿木ちゃんはなんでそんなに冷静でいられるの」
言うまでもなく俺の記憶はそこで、ぷっつん、とアナログテレビのような音を奏でながら消えてしまった。
翌朝、目を覚ました時には机の上は綺麗に片づけられ常設している交流ノートに『飲みすぎ注意』と宮内君と椿木の名前が書かれた注意書きのあるページが見開きでおいてあった。
「あぁ、久々にやっちまったな」
頭をさすりながら、眠気眼をどうにかして目覚めさせる。
外は、最悪なほどに天気が良くお天道様がこれほどまでにかとギンギラギンと輝いている。
「あー、歳ってやべぇ」
昔ならばこの程度の量でここまで酔わなかったと昨日も言っていた気がするが本当にそうなのだ。年々弱くなっていきこの有様である。
体臭も加齢とアルコールが相乗効果で相まって相当にきつくなっていることだろう。
そんなことを気にしながらも、一日中特にやることのない退屈さに背伸びをしていると奥から笑顔の愛奈がでてきた。
「いってきま………ちっ」
俺を見るなり笑顔と元気が得た気がしたのは気のせいではないだろう。
「愛奈、おはよう」
無視である。それはもう見事なまでの無視だった。むしろすがすがしく心地いいまである。
だが、そんな爽やかな気分の俺を睨むわけでもなく、どこか憐れんでいる目を向けている事にはどうしてか心が痛んだ。
「あ、お爺ちゃん。おはよう」
そんな愛奈とは、対照的に昨日の途中から一緒に飲んでいたはずの椿木が凛と爽やかに続いて顔をのぞかせた。
「おぉ、椿木。昨日は」
「あー、お爺ちゃん。急に電源が切れたみたいに寝ちゃってたから宮内さんと焦ったんだから」
「記憶にないけどすまん」
「いいけど、まぁ、愛奈にはより嫌われちゃったかもね」
呆れながら笑う椿木を見て、愛奈のあの哀れな視線を思い出してみると合点が悲しいことにいってしまった。
「お爺ちゃんが寝た後に怒鳴り込んできたんだから。しかも、宮内さんから聞いたけど二回目なんだってね。もう、愛奈はテストで勉強頑張ってるんだからもう少しだけ気を使ってやって」
「なるほどな。それは本当に申し訳なかった」
「謝るんだったら宮内さんにもね。じゃあ、私この後仕事だからまたちょっと寝るから」
「おう、頑張れ」
そして椿木は右手を軽く振ってそのまま自室へと戻っていった。
「………はぁ」
椿木の後ろ姿が完全に見えなくなったのを確認して、深いため息をつきながら肩の荷を下ろす。
自分でもわかるほどのアルコール臭に、うへぇ、なんて言葉を漏らしながらテーブルの上においてあるスマホの画面をつけてみると、連絡アプリに一件の通知が届いていた。
「真面目だなぁ」
送り主は宮内君で、『体調お気をつけて。久しぶりで楽しかったです。今度は四菜と子供も連れていきます』、と二時間ほど前に連絡をくれていた。
同じくらい飲んでいたはずの宮内君だが、さすが現役社会人といったところなのか、はたまた年齢が故なのか朝早くに起きてこんな丁寧な連絡をくれるあたり、できる男だ。同期に居たら嫉妬してしまうかもしれない。
「昨日はありがとう。途中で記憶がなく寝ちゃったみたいだけど楽しかったよ。迷惑かけて申し訳なかった、と」
声に出しながら文字を打ち最終確認してからの送信、こうでもしないと間違っていないか不安で仕方がなくなってしまう。
「あー、しじみ飲も」
ひと息つき、この体内で行われている飲み会の後の祭りを終わらせるために、しじみの味噌汁を求めて、自宅の台所へと重い腰をあげる。
台所へは、奥の扉から靴を脱ぎ自宅へ上がり左に歩いていけば右側にあるのですぐにつく。台所の入り口には昔からかけている俺には趣味の分からないレースカーテンがあり、なんだかんだ長年の愛着のせいでこれがないと違和感を持ってしまう程になっている。
「確かここにあったはず」
シンク下の収納空間のなかにいくつか小分けされた収納箱があり、そのうちの一つがインスタント食品箱となっているため、その中を残された元気で勢い無く漁り始める。
カップ麺に、はるさめに、いつのか忘れたひと昔前に流行っていた謎の外国麺など多種多様なものが乱雑に放り込まれている中に入っている、光り輝く神様同然のしじみの味噌汁を手に取り、これこれ、と心の中でガッツポーズを決めた。
「これこれ」
瞬間湯沸かし器に水を少しだけ余分に入れてスイッチをおす。
昔はそれこそ、やかんだったりポットだったりしたのだが今はお湯を沸かすことひとつにしてもかなり便利になって、時間をより他へ多く使うことができるようになった。勿論のことだが無駄に使えることも多くなったのだが、そこは人それぞれでいいと思っている。
無駄に使うことも時には必要であり、それが後に息抜きとして自分を助けてくれるかもしれない。俺はそんな経験を何回もしてきた。
「おっと」
お湯が沸くまでの間にカップへの味噌汁の準備を終え、今か今かとお湯が沸くのを待つ。
昔はこの速さに驚いていたのだが、慣れてくるとこの速さですら遅いと感じてしまうようになってきた。慣れとは怖いが癖になる。
そんなこんなムズムズしていると、カチッ、とスイッチのあがる音が聞こえてきた。
「うっし」
すぐにお湯を注ぎ、たち込めてくる味噌汁のいい香りに身もだえながら注ぎたてアツアツの一口目を、ほんの少しだけ口へと移動させる。
「あっつぃ」
当たり前の事を当たり前のようにしている俺は周囲から見ればおかしな人なのかもしれないが、カップ味噌汁の一口目はこれをしないと始まらないのが流儀なので仕方がない。
「ふぅ」
肩の力を落とし食卓の椅子に座る。二口目からようやく、落ち着いて飲み始めるのがたまらなくいい。
適当に手に取った割りばしを、くるっ、と一周させて味噌の香りを楽しめば、カチャカチャっとしじみの貝殻の音も一緒に聞えてくる。
やはり、飲んだ次の日はしじみの味噌汁に限る。これこそ無駄のない有意義な時間だ。
「あ、お爺ちゃん」
「寝たんじゃなかったのか」
「喉乾いちゃって」
小さなあくびをしながら気だるげに椿木が上から降りてきた。
そんな横目で見ながら、いいなぁ、なんて呟きながらコップに注いだ水を一気に飲み干す。
「んじゃ、今度こそ寝るから」
「よく寝るんだぞ」
「仮眠だけどね………あれ、てかさ」
ふと、椿木は俺の手元を不思議そうに見る。
「今日はしじみじゃなくてあさりなんだ」
「え?」
そんな訳がないと作ったばかっりのカップのラベルを見てみると、確かにしっかりと、あさり、とそれはデカく書いてあった。
「もしかして間違えた?」
苦笑いしながら見る椿木の目が心に染みる。
俺はそのまま、ずずずっ、と味噌汁を飲み干し、悲しみとしょっぱさを心にしみこませながらあさりを丁寧に食べ始める。
あぁ、今日も無駄な一日がはじまる。
コインランドリーランド たろう @ataru_kaidou
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