第8話

 三木さんに先導される形で上の階層へと引き返してすぐ、俺は下へ進んでいた時には無かったいくつもの分かれ道を見て困惑していた。


 俺の記憶では3階層から今いる5階層までの道のりにそんなものは無かったはずだ、これも暗示の効果かと考え事をしていると。


「伊藤さんそっちの道は違いますよ」


 声を掛けられ自分がいつの間にか道を引き返そうとしていることに気づく、それからも何度か三木さんに引き留めてもらいながら進むと何とか4階層まで上がってくる事が出来た。


 三木さんは「やりましたね」と最初に出会った時よりも大分明るくなった表情で喜んでいた。


 またここに来るまでの道で出くわした敵は予想どうり俺達の進行方向からやってくる、正面からぶつかる戦闘は思いのほか長引く事があり後から別の敵が合流してくるといった事もあった。


 俺は一度ステータスの更新がしたいと提案すると三木さんスキルの<マッピング>を使い近くの横道に場所を移しお互いのステータスを開いた。


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  伊藤晶  Lv6  EXP 546/705  

          LIMIT:15

 HP 62/ 129

 MP 49/ 49

 STR 16 (+4)

 VIT 11 (+)

 INT 7 (+)

 AGI 10 (+)

 DEX 13 (+)

 LUC 6 (+6)

 *SP 2*

 ユニークスキル

 <レベルガチャ>(0/100)


 スキル

 <EXPリミット>

 <地球の加護> 


 装備

 『鉄の鈍器』

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  三木祥子   Lv 5

 HP 74/ 86

 MP 34/ 80

 STR 17 (+5)

 VIT 14 (+)

 INT 19 (+)

 AGI 14 (+)

 DEX 16 (+)

 LUC 19 (+)

 *SP 10

ユニークスキル

<探偵>


スキル

<探偵(仮)の美学>

<マッピング>

<地球の加護>


装備

 『警棒』

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 何も考えちゃだめだ、何も考えちゃだめだ、何も考えちゃだめだ、俺は必死に目の前の現実から目を逸らした、きっとまた暗示の効果にかかって三木さんに迷惑をかけてしまうかもしれない、だから何も考えちゃだめだ!


「伊藤さんのHP大分減ってますね、さっき拾って回復薬使っておきますか?」

「だ、大丈夫だと思いますよ、減ってはいるけど4階層を下る前と大体同じくらいはありますから」

 

 突然声を掛けられ、若干声が上ずってしまった。


「これは渡しておきますから、伊藤さんの判断で使って下さい」


 そう言ってHP回復薬(1)を渡される、ちなみにこれはここに来る時に拾ったドロップの一つだ、ちなみに16体倒して他はこんな感じだ。


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ドロップ一覧

 魔石(極小)×4

 魔リンゴ(1)×1

 タマゴ×2

 HP回復薬(1)×1

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 俺一人の時との差が激しすぎる気がしたが四人でいた時もこんな感じだったらしい、前世でどんな大罪を犯せばここまでの差ができるのか、あとヒヨコがタマゴを落とはこれ如何に。


「それにしてもこのステータスは凄いですね」


ビクッ⁉


「もうかれこれ6時間近くたちますけど、まだこんなに動けるなんて、普段ならこんなに長時間歩き続けるなんて出来ないですよ、私」

「確かに、言われてみればそうですね、関係がありそうなのはHPとVITとSTRもかな」

「そうですね、VITなんて直訳すれば活力とかですから」


 そうして多少の雑談の後、次の上の階層を目指して出発した。


 なんだか話の最後の方で三木さんが「これを伸ばせば永久機関も夢じゃないかも知れませんね」などと不穏な事を言っていた気もするがこれもきっと暗示のせいだろう。


 SPに関してはすべてLUCにぶち込んだ、せめて人並に、あと食料アイテムのドロップ率UPの期待も込めて。


◇  ◆  ◇


 4階層は二人がかりという事もあって敵と出くわしてもそれはど時間を掛けずに進んで行き気づけば俺は見覚えがある所まで来ていた。


「あれは」 


 そこには数時間前に見た、デリバリーの三輪バイクが転がっていた。


 三木さんは早速バイクを物色し始めているが俺は別の事が気になって仕方がなかった。

 

 ここはどうやら三叉路だった様だ、行き帰りで別の道を通ってこれたのは幸運だったのかもしれない。


 ここに来るまで三木さんにはあの子供の事は話さないようにしていた。


 人の死を前にしたら、三木さんは先に進んでしまった三人の事に責任を感じてしまう可能性もある、自分たちもまだ安全じゃない以上、余計なことは考えない方が良いと思っていたから。


「だめですね、エンジンが掛かりません」


 そう言って戻ってきた彼女は何かを持っていた。


「それ、なんですか」

「バイクに付いてたドライブレコーダーです、バッテリー内臓の取り外しが簡単奴ですよ」


 どうしてそんな物を? と聞くと、自分たちに何が起きたのかの手掛かりがあるかも、とのことだ。


「それより大丈夫ですか、顔色が余り良くないですよ」

「いえ、そこにあったピザ食べた後、全部吐いちゃってその時の事は思い出してたらつい」


 そんなことを言いながら適当に流しておく、三木さんは「伊藤さんが食べたんですか⁉ 私も食べたかったなぁ」と愚痴をこぼしていた。


 そうして三木さんに先導されて進んで行くと3階層に上がる階段に辿り着いた。


「今更なんですが、伊藤さんはモンスターと戦うの、平気なんですね」

「必死だっただけですよ」


 そうは言ったが恐らくそれだけじゃないだろ、結局ここにも暗示か絡んでるんだろうなと内心思っている、元々レベル上げが目的で丁度この階段を降りて来たんだったけ。


 そんな会話をしながら俺たちは階段を上がっていった。

 


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ユニークスキルで無双できると思ったけどパッシブスキル「EXPリミット」のせいでダンジョン攻略はままならない 三行半 @sangyouhan

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