スイートムーン
香久山 ゆみ
スイートムーン
「チョコをちょこっとくださいな」
おどけた感じで言ったみたけれど、ダメだった。「は?」と一蹴される。幼馴染ならばくれるだろうと思っていたのに、薄情なものだ。けど、この様子なら、他の誰にもあげていないだろう。ということで、まあ良しとする。
「ああ、バレンタインね。……相変わらず、甘いもんが好きだねえ」
一息ついてカフェオレをグビグビ飲む僕に、幼馴染のハルが言う。甘いものが得意じゃない彼女はブラック党だ。物言いさえビターである。けど、寂しいバレンタインデーを過ごしているのはお互い様だ。こうして喫茶三日月館で代わり映えのしない一日の終わりを過ごしているんだから。
「これでいいならあげるよ」
ガサガサと鞄の中を探っていたハルがチョコレートの箱を取り出して、ポンと寄越す。菓子メーカーの、コンビニとかで売ってるやつ。
「お。これ、中に生クリーム入ってる甘くておいしいやつじゃん」
値段もちょっと高めの贅沢シリーズのやつ。小腹空いた時用のおやつでこんな良いもの食べてるなんて! 今日は返してくれって言ったって返さないぞ。
そんな僕に、ハルは呆れたように溜息を吐いて、「ばーか」と笑った。
スイートムーン 香久山 ゆみ @kaguyamayumi
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