第8話 【最終話】宇宙戦争・転生前夜

          宇宙戦争・転生前夜

 そんな折、私は、一つの惑星を気に入って、購入するに至った。ずっと、娘を見つけ、その子ら、孫らと、ナノマシンにトレースさせて見守り続けた私は、本当にある意味この世界の神にでもなって居たのかも知れない。

 無自覚にだが。

 だが、これからは隠居生活でもしようと思い立った私は、自分で購入した惑星に一人住み着き、悠々自適に開拓をし、生物の進化を促しながら、片手間に技術開発をするに至って居た。

 そんな時に、私の助手として、私の子孫の一人を私の惑星へ招聘した。

 彼はとても優秀だった。

 彼の名は、マイルス・スベンソン。

 20年ほど私の下で開発に携わり、私の義体のメンテナンスもして貰って居た。

 だが私も、彼をいつまでも拘束する訳にも行かなかった。

 彼は生身で未婚だったので、彼を長くに渡り縛り付ける事は出来なかった、彼の子孫が見たかった。

 見合いを勧め、良い相手を見つけた彼を私は手放し、また一人になった。

 植物生体量子コンピューター”ゆぐどらしる”の開発を始めた時には、そのマイルスの孫達が私の助手になって、戻って来た、彼に似て非常に優秀な者達だった。

 このゆぐどらしるを開発するに至ったのは、元レジスタンス同盟の国が集まった、第6ネオサンフランシスコ星群の惑星連盟達が私に牙をむいて来て居たからだ。

 恨みは何も生まないと言うのに、何故こんな何百年も前の恨みで人は突き動かされる事か。

 彼らのクーデターを弾圧するべくして、戦艦は建造され、強襲白兵戦闘用人型兵器アーマドラグーンは完成した。

 この際だからハッキリ言わせてもらうが、生半可な技術では、大型ロボットは素早く動く事は不可能である、何故ならば、そのアームなどの重量、そしてそのサイズ、そこから生まれる遠心力、慣性力などは尋常では無いのだ、つまり、そんな物が例えば重力圏で暴れようとしても、アニメのような素早い動きは出来ない、精々10mもの大きさがあればそれは十分に、自重で潰れかねない。

 当然な話である。

 宇宙空間であっても然り、遠心力、慣性力に抗う方法は、ほぼ皆無。

 金属の限界を超えて軽量化する以外には抗う方法など何処にも無いのだ。

 アーマドラグーンの骨格、及び外郭は、限界まで軽量化し、限界まで強化された植物油脂だった。

 当然、一撃で粉々になりかねない代物、そんな物に大事な子孫を乗せる訳には行かなかった私は、脳波を飛ばして遠隔操作すると言う技術をも、追い詰められて確立したのだった。

 もうここまで来ると、ハッキリ言ってどうやったらそうなるのか等と言う理論は、人に話しても理解されないレベルの代物であった。

 私は、最恐のマッドサイエンティストの異名を欲しいままにする事となった。

 そしてこの軍に、私が気に掛けるもう一人の子孫が居た。

 ルーデリヒ・バルデスと言う男の子だ、彼は一時期孤児となってしまい、自力で少年兵として志願し、その身を立てていた。

 彼の父や母は、クーデターによって既にこの世には居なかった。

 実は彼の両親は二人とも、私の子孫であった。

 まぁ、長い時間が経って居るのでそんな事もある。

 彼は少年兵として、アーマドラグーン乗りの道を歩み、エースとなり、出世を果たして行った。

 そして30歳になりたてで准将にまでのし上がった。

 戦いは、正に彼にとって天職だった。

 しかし、だからこそエリーは、彼の身体を気に掛けていた。

 彼を少しでも安全な環境に置きたいと思った私は、准将になりたての彼を、ごり押しでもう一階級特進させ、新造戦艦の艦長へと推し進めた。

 エース級の彼は、カリスマ性を持ち合わせて居た為、私のその意見は、満場一致で可決し、彼は新造戦艦のテストケース艦長に就任。

 植物生体量子コンピューター・戦術予報AI”ゆぐどらしる”搭載の新造戦艦”ニライカナイ二世号”艦長となる。

 私は、夫の面影をかなり継承して居た彼が、お気に入りだった、子孫の中でも特に、愛おしかったのだ。

 ちょくちょく彼の船に顔を出すようになった私は、最新装備が完成したと言っては彼の船に行き、様子を見て、元気にやって居ると確認すると、満足して又研究に勤しむ、そんな時期が続いていた。

 しかし、私はルーディが可愛い余りに失念して居たようだ、私は、自分の脳の維持に必要なナノマシン薬の補充を、すっかり忘れて居たのだ。

 いや、それはウソ、本当は、彼の出世を見極められさえすればもう、良いと思って居たのだ。

 私は、本当は、もうルーディーの出世が確実な物へと至って居る為に、とても幸せだった、だから、この幸せな内に、この生涯を終えても良いと思って居たのだ、だから、失念して居たと思い込むように自分に暗示を掛けて迄、生涯を閉じる道を選んだ。

 そして、事切れ、気付くと異世界へと転生して居たのだった。

「ここ・・・どこ?」

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創世の大賢者外伝【エリーの生涯】 赤い獅子舞のチャァ @akaishishimai

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