初めての人へ、ガレージキット(レジンキット)の作り方

湊利記

初めての人へ、ガレージキット(レジンキット)の作り方

 ワンダーフェスティバル当日ですね。


 ネット上で〝ガレージキット〟という言葉を目にする機会が増えているかと思います。ガレージキットってよく聞くけれど、一体何? どうやって作るの? という方に向けて簡単な記事を書いていこうと思います。


 ガレージキットとは、要するに自宅(のガレージ)で生産したキットの事です。工場で大規模に作らず、個人で小規模に作ったキットです。中には個人ではなく企業が作るキットもありますが、生産量はプラモデルに比べて少数です。


 ガレージキットを作るガレージキット・ディーラーはまず原型を制作し、それを複製して模型の元となるキットを作りワンダーフェスティバルなどのイベントで展示販売するのです。

 当然個人で複製するので、プラスチックを金型へ流すのは難しい。そこで、ガレージキットはレジンや3Dプリント、ソフトビニールにピューターなど、プラスチックに比べて扱いやすい材料によるキットが大多数を占めております。


 イベント会場では、憧れのあのアニメのキャラやこの漫画の機体が並んでいる夢のような光景が広がっています。初めてその光景を目にした方の中には「これ公式なの?」と思う人も居るかもしれません。

 ガレージキットのイベントでは当日版権というシステムがあり、版権を保有している企業等へディーラーがロイヤリティを支払い許諾される事で、このイベントが開催される当日に限り『公式』のお墨付きが貰えます。逆に言うと、許諾されていないガレージキットはイベントで販売する事は出来ません。つまり、イベントで販売されるガレージキットは全て公式品なのです。


 僕は友人達から「ガレージキットって作るの難しいでしょ?」とよく尋ねられます。

 大体のガレージキットは簡素な箱や袋に入っています。中に入っているのは、白や灰色、クリーム色をした謎の物体。これを見て「俺には無理だ・・・・・・」と途方に暮れるかもしれません。しかし安心して下さい。確かに難易度は高めですが、きちんと手順を踏めばガレージキットを作るのはそう難しいものではありません。


 僕がよく作るのは、レジンキットです。最近は3Dプリンタ製の出力キットも増えてきましたが、ガレージキットの多くがこのレジンキットです。なので今回はレジンキットの組み立て方を解説します。


《注意》

 ここに書かれているレジンキットとは、無発泡ウレタン製のキットを指す言葉です。3Dプリンタ製の出力キットによくある水洗いレジンとは材質と性質が違うので注意して下さい。


 このレジンキット、箱を開けてさあ作ろう! という訳にはいきません。作る前にいくつかの下拵えがあるのです。


 まずはパーツ確認。プラモデルのようにパーツが全部入っているとは限りません。作る前に説明書を片手に必ずチェックしましょう。

 これはレジンキットに限らず、全てのガレージキットで行って下さい。パーツチェックは大体イベント後1週間から2週間以内が目安です。それを過ぎると、欠品を報告してもディーラーが対応出来ない事があります。注意して下さい。

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:1

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085498358846



 次にパーツの洗浄。レジンキットには複製時の離型剤が付着しています。これが付いたままだと塗料を弾いてしまいます。クレンザーや中性洗剤で歯ブラシを用いてよく洗い、離型剤を落としましょう。

 専門店へ行けば専用の洗浄剤が販売しております。

 余談ですが、3Dプリンタ製のキットは説明書に『レジン』と書いてあっても水で洗ってはいけません。水が染みこむとクラック(パーツが割れる)の原因になります。くれぐれも注意して下さい。


 最後にパーツ整形。

 これが一番プラモデルと違う行程だと思います。レジンキットはそのままでは作れません。

 ガレージキットのパーツは、綺麗な事が少ないのです(ツイッターで「綺麗に抜けている!」と喜ぶツイートを見るのはその為です)。パーツが歪んでいたり欠けていたりするのは当たり前。欠けや歪み程度では、ディーラーは交換してくれません。なので、そういった箇所を自分で直していくのです。


 まずは気泡埋め。レジンを流す過程で生じた気泡によってパーツが欠けている事が多々あります。それをエポキシパテなどを用いて埋めていくのです。レジンを流した時の生成不良等で欠けた箇所も同じように修正します。この作業が一番厄介で面倒な作業なのですが、同時にとても愉しい作業だったりします。

 続いてパーツの歪み。これは湧かしたお湯に10秒ほど漬けて少しずつ直します。レジンは温めると簡単に変形します。その特性を活かし、お湯でパーツを柔らかくして歪みを直していくのです。

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:2

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085498707666



 よく「レジンキットはパーツを煮るんでしょ?」と尋ねられる事がありますが、前述のようにレジンは熱で変形し易く、煮ると繊細なパーツが歪む恐れがあるので僕は基本的にパーツを煮ません。

 こちらも3Dプリンタ製キットの補足を。水洗いレジンなど3Dプリンタ出力キットは、煮ないで下さい。溶けます。


 これらの下拵えを終えてから、いよいよ組み立てです。


 パーツの接着。これにはプラモデル用接着剤は使えません。プラモデル用接着剤は溶剤でプラスチックを溶かして接着するものであり、レジンには向いておりません。必ず、瞬間接着剤を使いましょう。

 パーツ同士の接合強度を増す為に、パーツをドリルで開孔して真鍮線を通すのも良いでしょう。目安として、標準は1.0ミリ、強度が欲しい時は2.0ミリ、細かいパーツは0.5ミリとパーツを見ながら使い分けます。

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:3

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085499395105



 組み立て時に気を付ける事は、塗装のやり易さを意識して適度に分割して組み上げていく事です。パーツを接着せず仮組みするのも良いでしょう。そういう時に真鍮線はとても便利です。

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:4

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085499845330



 ついにお待ちかねの塗装です。レジンキットは塗料を弾くので、塗装前に必ずシタデルアンダーコートスプレーなどの専用プライマーで下地を作りましょう。

 中にはサーフェーサー、サフ、という言葉も聞いた事がある方も居るかもしれません。一見同じようですが、実はプライマーとサーフェーサーは厳密には役割が違うものです。この辺りを解説すると長くなるので、気になる方は調べて下さい。

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:5

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085499988921



 塗装に使う塗料は様々です。各メーカーから素晴らしい塗料が販売されております。この辺は完全に個人の趣味です。色々試して、自分に合った塗料を選びましょう。僕はゲームズワークショップがリリースしているシタデルカラーを使っています。よく「ガレージキットってエアブラシが必要なんでしょ?」と尋ねられる事がありますが、僕はずっとシタデルカラーと筆でペイントしています。

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:6

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085500440988



 塗装したパーツ同士を接着し、全体のバランスを調整したら、ついに完成です!

※参考画像【画像版】ガレージキットの作り方:7

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16818093085500668222



 ガレージキットはプラモデルなど市販品の模型に比べ、面倒な行程が多々あります。しかし完成させた時の喜びは、その面倒さを吹き飛ばす程の大きな喜びです。次はあれを作ってみよう、あれを試してみよう、そうしているうちにガレージキットの魅力に取り付かれていきます。そう、これを書いている僕のように。


 今日はワンダーフェスティバル当日。

 会場内で展示されている素晴らしい作品の数々に魅了されながらガレージキットは難しそう・・・・・・と二の足を踏んでいるそこのあなた、ちょっぴり面倒でめちゃくちゃ愉しいガレージキットの世界に飛び込んでみませんか?




※補足

近況ノート『初めての人へ、ガレージキット(レジンキット)の作り方の補足』へガレージキットの画像を添付しました↓

https://kakuyomu.jp/users/riki3710/news/16817330653198399226

完成品ではなくキットの画像です。キット状態のガレージキットに興味がある方は、是非ご覧になって下さい。

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