子どもドラゴンの火遊び

ちゃむ

第1話

「ああ、ヒマだなぁ」

 家の中で一匹の子どもドラゴンが退屈そうに呟いた。この子はつい先日12歳の誕生日を迎えたばかりの男の子である。


 ドラゴンは今、ベッドの上で両手両足両翼を大きく広げて仰向けで寝転がっていた。その顔には何とも言えない退屈そうな表情を浮かべている。そして暇を持て余したドラゴンはベッドの上から動く事も無く、ただひたすらにボーっとしていた。


「あ、そうだ。久しぶりに火遊びしよう!」

 ドラゴンはベッドから飛び起き、窓を開けて家から出た。そして元気よく羽を羽ばたかせて飛んで行った。


 ドラゴンが着いた場所は火山だった。ここなら多少暴れても問題は無いだろうと考えたのだ。それにここの火口付近ならば火事になる心配もほぼ無いと言える。なので思う存分遊ぶ事が出来る。


「よーし、まずはウォーミングアップだ」

 ドラゴンは足を広げ、大きく息を吸い込み始めた。すると、ドラゴンの体内で炎が点火した。炎は大きくなり、ドラゴンのお腹がどんどんと膨らんでいく。

 すると、一度広げたはずの足がまた窮屈になり、ドラゴンは再び足を広げるために片足を上げた。そして、上げた片足を思い切り降ろして地面を踏みしめる。

 ドシン!と音が響き渡り地面が大きく揺れる。ドラゴンはその間も息を吸い込み続け、お腹はドンドンと膨らみ続けている。

 しかし、ドラゴンはまだ止まらない。今度は両手を広げて胸を張るようにしながら思い切り息を吸う。

 お腹だけではなく、胸までも風船のように大きく膨れ上がっていくドラゴン。体内の炎は極限まで圧縮され、口から漏れ始めている。


 ゴゴゴゴゴゴ!!


「ふぅ。よし、いくぞぉ……!」

 ドラゴンは肺の中に溜まっていた空気を全て吐き出す勢いで、口から火炎放射を放った。


 ドゴォオオオオン!!!!!


 凄まじい轟音と共に凄まじい熱量を持った灼熱の業火が一気に噴き出し、火炎放射というよりは極太の破壊光線のようだった。

 反動によって吹き飛ばされそうになるドラゴンだが、必死に耐えた。

「うひゃっ!気持ちいいぃ~!!」

 ドラゴンは自分の放った攻撃によって発生した爆風を浴びながらも、その快感に身を震わせていた。


 やがて膨らんでいたお腹はしぼんでいき、ドラゴンは火炎放射を止めた。

「うん、良い感じに温まってきたぞ。よーし!」

 ドラゴンはそう言うと、今度は火球を作り始めた。バスケットボールくらいの大きさになったところで火炎放射を注ぎ始めた。すると、次第に火球は大きくなっていき、あっという間にドラゴンと同じくらいの大きさにまで成長した。


「まだまだぁ〜!!」

 しかし、ドラゴンはまだ満足していないようで、火球を体の上に掲げ、さらに火炎放射を注ぎ始め。

 そして、火球はドラゴンの数十倍の大きさにまで巨大化した。

 ドラゴンはその火球を自分の頭上に掲げたまま上昇を始めた。そして上空へと舞い上がり、そこから火球を地上に向かって投げ飛ばした。

「うおおおおりゃあああ!!!」

 ドラゴンの気合の入った叫び声と同時に巨大な火球が落下していく。


 ドガアアアァァァァン!!


 まるで隕石のような巨大な火の玉が地面に激突すると同時に爆発を起こし、周囲に強烈な衝撃波と熱風を巻き起こす。

 爆発の衝撃で土煙が上がり、それが晴れるとそこにはクレーターが出来上がっていた。


「よーし、次は本気でやるぞ」

 ドラゴンはそう言うと地上に降り、雄叫びを上げ始めた。


「グオオオオオッッ!!!」


 すると、ドラゴンの身体から炎のオーラが噴き出し、火災旋風のようにほとばしっていた。そしてドラゴンの身体は巨大化していき、体長10メートル程のサイズとなった。

「さあ行くぜぇえ!!」

 ドラゴンは吠えた後、再び息を吸い込み始めた。


 ギュオオオオオオオオオオオ!!!!!


 ドラゴンの口内に膨大な量の炎が充填されていく。それは先程の火炎放射とは比べ物にならないほどのエネルギーが込められていた。ドラゴンは限界まで溜め込んだ後、それを一気に放出した。


 ドガアアアアアァァァァァ!!!!!!


 先程とは比べ物にならない威力の破壊光線が放たれ、その大きさは直径100メートルほどもあった。破壊光線は雲を突き抜け、そのまま宇宙空間まで到達した。

 ドラゴンは地面を強く踏み締めて、破壊光線を発射させたままの姿勢を維持し続けた。次第に破壊光線は小さくなり始め、ついには消滅した。


「ふうー。あー楽しかった!」

 ドラゴンはおよそ30秒もの間破壊光線を発射していた。いくら子供とはいえドラゴンの中でも上位に位置する力を持つ彼だからこそ出来る芸当である。

「さて、ちょっと疲れたし、帰ろっかな」


 このときドラゴンは知らなかった。この子はもうすでに、子どもでありながら大人をも超える力を持っていることを。

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