第2話 神龍にお願いするなら爪切りが欲しい
「「おはよう。遊くん♪」」
馬乗りしている美少女二人が僕を見ながら元気にそういった。
それを受けて、僕がやったこと。
第一。目を擦る。
第二。頬をつねる。
第三。現実だと再認識する。
第四。深呼吸をする。
第五。二人に真っ直ぐ目を向ける。
第六。そして、……叫ぶ。
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
」
家中に僕の悲鳴が響きわたる。
あまりの五月蝿さに僕自身耳を塞ぐ。
朝の静けさが一瞬で僕の悲鳴に変わる。
窓の外にはさっきまで電線に止まっていた鳥がビックリしたようにこちらを見飛びったっていた。
「だ、誰!?君たち誰!?」
指をさし言う。
その先には見知らぬ美少女が二人。金髪ツインテールと、黒髪ロングストレートがきょとんとした顔で不思議そうにこちらを見ている。そしてカッと目を見開き。
「「え!ゆ、遊くん私たちのこと知ってるでしょ!?」」
「…………………へぇ?」
そう言ってきた。
衝撃的事実に間抜けな声が出た。
(僕が……?この子達を知っている?どこかで会ったっけ)
起きたばかりで、あまり正常に働いていない頭で必死に考える。だが、そんなことを考えられる余裕はなかった。それは………。
「近い!!!!」
二人の目に映る遊の驚いている顔がはっきりと見えるぐらい遊と二人との顔の距離が近い。そして、女子特有の甘い匂いが鼻腔をくすぐり遊の心臓はLvMAXになっていた。
(だめだ!この状態のままでいると理性が!そして男子特有の朝起きてるアレがこのままだと、バレる………!)
よく見ると二人の片方の金髪ツインテールの子の乗っているところがちょうど僕のアレのところ。動くたび、僕とその子のモノが擦れてちょっと、うん。………………ね。
「い、一旦降りて!二人とも!」
そう言って全力で二人の身体を押す。が。
「っ!………く!ふんぬ!」
ビクともしない。
いくら女子といえど、流石に二人分の体重をどかすのは無理がある。
けど僕の必死の形相に気づいたのか二人はすぐにベッドから降りてくれた。
(良かっっっっっっった~~~~~~~!)
あと少し降りてくれるのが遅れてたらホントにアウトだった。いや~良かった。
「って、そんなことより!本当に誰!?」
今一度二人の聞く。
「本当に分からないの?」
「…………はい」
「だって。
「しょうがないですね。じゃあ
そういってストレートの子が自分の胸のところに手を当てた。
「私は、
「じゃあ次はあたしだね。あたしは
二人はそうして自分達のことを教えてくれた。
そして聞いててわかったことがひとつある。
それは。
「二人とも僕の推しじゃん!?」
気付いたとたん僕はすぐさま土下座した。
「すみませんでしたっ!!!!!!!!!!ほんっっっっっっっっっっっっとうにすみませんでした!」
改めて目の前にいる二人を見る。
「で、ひとつ疑問なんですが。あかるん、エルナさん」
「「「なんで僕の部屋にいるんですか」でしょ」」
三人の声が重なる。
そう、それが謎だ。なんで二人が僕の部屋にいるのか。
どうやら僕の考えてる事はお見通しらしい。いや、それが普通か。誰だって僕と同じ状況ならそう思うはずだ。
「あの、別に普通に名前で呼んでいいですよ」
「そうそう。気軽に『彩』『胡桃』ってね」
「いやいやいやいや!そんな恐れ多いこと出来ませんよ!僕なんかがそんなことしてはいけませんよ」
「なんで?」
「なんでって。それは僕は一般人だから」
「えー?でもあたし達だって一般人じゃん。そりゃああたし達はいろいろ活躍してるよ。それでもその仕事から離れたら結局は君と一緒の一般人だよ。だから大丈夫」
「そうですよ。それとも私達のお願い、……聞けませんか?」
「是非呼ばさせて頂きます!」
そんな上目遣いでもじもじされるとなんだか可哀想に思えた。ってかもうエルナさんの……いや、胡桃さんの話を聞いてると僕がいじらしくなってるのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「それじゃあお言葉に甘えて呼びさせて頂きますね彩さん、胡桃さん」
「口調」
「へ?」
少し睨まれながら胡桃さんに指を刺された。
「あたし達も君も同じ16だよ。そんな畏まらなくていいよ。さん付けも良い?」
「……分かった。彩、胡桃。これで良いかな?」
「うん!バッチリですよ」
手を合わせ少しはにかんで彩はこっちを見ている。
(……………………………………可愛ユ)
「ってそんなことよりなんであたしと彩がなんで遊くんの部屋に居るのかって不思議でしょ」
「うん。それが不思議でたまらないんだよね。……もしかして夢かな」
でも夢ならさっきつねった時痛く無いはずなんだけどな。
「夢じゃないですよ。ほら」
チュッ。
「へ?」
い、今一瞬何か頬に暖かいものの感触が。えっもしかして今……………キス、された?
「うん!鼓動が早くなってるし体温もほのかに上がってるでしょ。夢ならこんな事ならないでしょ。だからこれは夢じゃないですよ」
下を見るといつの間にか彩が遊の身体に身を寄せ胸に耳を当てていた。
「え、ちょっ!ちょっと何やってるの?!」
「きゃっ。突き飛ばすなんて酷い、そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」
「驚くよ!だってきききき急にキ、キスされた挙句そんなに身体近づけられてら、だ、誰だって驚くよ!あ、あと突き飛ばしてごめん」
ドクドクドクドクドクドクドクドク
五月蝿いくらいに鼓動が大きく、早く聞こえる。ほのかに体温も上がり少し熱っぽい様なそんな感じがする。
「いえ、気にしてないので大丈夫ですよ。まぁキスした方が手っ取り早いのでそうしたのですが。クスッ。意外と
「う、うるさいな!」
イタズラな笑みを浮かべる彩。
あれ?もしかして彩って、見かけによらず小悪魔なのか?
「はいはいはいはい!二人の世界に入らなーい。本題に戻すよ」
手を叩きながら胡桃はこちらを見てくる。
気のせいか少し黒っぽいオーラが…………。もしかして怒ってる?でもなんで。まぁいいや。それより本題だ。
「なんで遊くんの部屋にいるのかって言うとね、君を迎えに来たからだよ」
「迎え?」
「そうそう迎え。遊くんはこれからあたし達と一緒にとあるところに暮らしてもらうことになるからね。その迎え」
「なるほどね。…………………………今なんて?」
ちょっと上手く聞こえなかったな。聞き間違いじゃなければ一緒に暮らすって聞こえた気がしたんだけど。
「だーかーらー。一緒に住むのその迎え」
「マジで?」
「マジマジ。大マジ」
チラッと彩の方を見る。
「ん?えぇ本当ですよ」
「なるほどなるほど。………少し失礼」
ふぅーーーーーーーーーーーーーーーっ。
深く息を吐き、そして息を深く吸う。
「………………えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
また、朝の静かな雰囲気が遊の悲鳴によって一瞬で変わった。
こうして僕はこれからこの二人と過ごすことになった。
朝起きたら、推しのアイドルとVTuberが馬乗りしてた件について 雪風優希 @fffyyy
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