美陽

軍鶏酉蘇傀

【完結】美陽

今日もバイトが終わった。今日は大学のスキーサークルのみんなで飲み会だ。大学のスキーサークルと言っても、もう自分しかいなくてほぼ廃部寸前。今日の飲み会は元スキーサークルの先輩たちとの飲み会だ。前はスノボをやる人も一緒のサークルだったが、スキーとスノボのサークルが分かれてしまったので、スキーサークルはもう来年誰も来なかったら廃部だろう。今日の飲み会の場所は駅近くの昔ながらの雰囲気がある居酒屋、『わっしょい』今は16時か、二時間ほどがあるから古本屋で時間を潰すか。

気がつくと時刻は18時15分。どの本を買おうか迷ってしまったが、結局十冊全て買ってしまった。一冊の値段が安いため古本屋は困る。わっしょいに着くと「おーい!ヒロシ!こっちこっち!」っと手を振りながらキョウヤが言ってきた。「ごめん。本買ってたら遅れたわ」そう言い座敷に座り背中の方に買った本たちを置いた。「ヒロ何にする?」「じゃあまずは麦焼酎で」「おっけー、じゃあたのんじゃっていいよー、ヒロ」コハルさんはいつも眠そうで、面倒くさいため毎回俺に丸投げをしてくる。「いや、俺誰が何頼むかわかってないですよ」「えー?仕方ないな〜教えてあげよう」「それ、コハルさんが頼んだ方が早いですよ」そう言うと、ものすごい嫌そうな顔をされた。「シンジさん、彼女さんの面倒見てくださいよ」コハルさんの横で他のメンバーと話していたシンジさんに放り投げた。「あ〜、仕方ねぇな、すみませーん!生三つ、麦焼酎一つ、っとあとは?」「私とヒトシがウーロンハイ」「ウーロンハイ二つお願いしまーす!」「わっしょーい!!」「ヒトシさん今日はそんな飲まないんですか?」一つ挟んで座っていた珍しくメガネをかけているヒトシさんに聞いてみた。いつもならコハルさんたちと一緒になって生を頼むのに、「今日はあんまり飲みたい気分じゃないんだ」そう言うと、すぐにスマホをいじり始めた。いつもならずっと喋ってるのに。

飲み物と焼き鳥などのおつまみが揃ったのでシンジさんが立ち上がり「はい!カンパーイ!」っとジョッキを上げみんなもそれぞれジョッキなどを上げ乾杯した。

時刻は7時ちょうど。皆少し酔いが回ってきてるだろう。「そういえば、シンジさんあの写真なんだったんですか〜?」キョウヤは完全に酔っているのか滑舌があまりまわっていない。「あー、あの写真か、あれ昨日止まったコテージなんだよ。そういえば、あそこの近くに人の骨が埋まってたんだよ。びっくりして何人か腰抜かしてたよw」そういえばバイトが終わってから全くスマホをいじってないな「えー!あれ本物の骸骨なんですか!すごーい!ショック過ぎてボーンっとしちゃいましたよw」「骨だけにってかw」「もうやだwキョウヤくんたら」シンジさん、キョウヤ、コハルさんの3人は笑っているが残りのヒトシ、ミサキさんは死体のように冷めていた。「なんで、人の骨なんか送ってきたの!信じられない」ミサキさんは怒り気味で言うが「送ってないよ」と笑いながらシンジさんが返すと「それならこれ!これなんなの!笑い事じゃないでしょ!」そうスマホの画面をミサキさんは見せた。顔をのぞいて見てみたが、雪に埋もれて人の骨が埋まっていた。「え?俺こんなの本当に送ってないよ。そもそも人の骨なんか撮ってないし、ほら」シンジさんは少し焦り気味でスマホの写真の一覧を見せてきたが、コハルさんとのツーショットが多く人骨の写真なんて無かった。「あれ、本当に人の骨なの?」青ざめたコハルさんが恐る恐る聞くと、シンジさんはゆっくりと頷いた。一気に寒気が広がりその場で解散となった。その後自分でも確認してみると、確かに午前9時に人の骨の写真が送られていた。その後には、『美陽』と送られてきていた。少し昔に聞いた話が引っ引っ掛かり、シンジさんが行ったという雪山について少し調べてみると、すぐに遭難事件の話が出てきてその中に美陽とあった。悪ふざけにしては度が過ぎている。

プルルルルルル、プルルルルルル、「はい、もしもし?」眠い目を擦りながら時計をみると、時刻は午前9時半。今日は休みでなんの予定もなく、夜遅くまで本を読んでいたのでとても眠かったが、大きな声がして目が覚めた。「シンジが突然、目を覚まさなくなった!早く来てあげて!」声の主はミサキさんだった。「え?本当ですか?」夢だと思い舌を噛んでみるが痛い「とにかく、病院の名前言うから来て!」

病院に着き急いで向かっていると途中でヒトシが部屋の前に立っていた「シンジさんは?」息切れをしながら質問をする自分にヒトシは首を振り、病室を見た。自分も病室の中を見ていると、コハルさんが泣き崩れていてミサキさんがそれを支えている。ベットで寝ている人の顔には白い布のようなものがかかっていた。しばらくすると、キョウヤも着き事情を説明し、みんなで病室に入った。扉が閉まった瞬間コハルさんが「嫌だ!嫌だ!嫌だー!なんで?なんで?私だけー!」と言い倒れた。すると、死んだはずのシンジさんが「殺してやる!お前たちもこいつらのように!!」と言うと力が抜け倒れた。パニックになりつつも、医者を呼ぶが、シンジさんはもう死んでいて、コハルさんも突然死したそうだ。何が何だかわからなくてパニックになっている中、ミサキさんはしばらく病室に入ると言い、二人のそばにいた。あの二人とは俺たちとは違い中学校からの付き合いだから仕方がないか。俺たちはミサキさんを置いて病室を出た。すると、ヒトシさんが口を開いた「呪いだ。美陽の呪いだ」呪い?ヒトシさんはオカルトのような答えがよくわからないものが嫌いなのに「呪いって、何言ってんだよ?」キョウヤは声を震わせていた。ヒトシはゆっくりと口を開いた「あれは、本物の人の死体。それも体格からして女性。三十年前、美陽という女性と一歳の子供が行方不明になった。一番最後に見たのはとあるコテージの周り。そのコテージの持ち主はある日突然死を告げた。近くに置いてあった紙には謝罪の言葉がびっしりと書かれていた。問題は死に方。その不気味な人が殺したり自殺とは思えない死に方から、当時では話題となり、報道陣が調べたりしたが彼女について知ろうというものは誰一人も例外は出ず死んだというらしい。それから美陽の呪いと言われたんだ」「もし、もし仮にそうだとしても、今回となんの関係があるんだよ」キョウヤは相当怯えているのか足まで震えている。「自分の事について一切知られたくない人がたまたまでも死体を見つけられたら生きて返すと思うか?」確かに、そんなに自分のことが知られたく無かったら死体なんか掘り起こしたら…「それに、その事件の関係者もほとんど死んでいる。警察でさえも」背筋が凍る。普段オカルトだけでなく冗談も全く言わないヒトシさんだから妙な説得力があり信じてしまう。ドン。勢いよく病室のドアが開いた。ミサキさんがフラフラしながら歩いていたが廊下の真ん中にくるとピタッと止まり。「生き残りたかったら私のいうことを聞け」怒りが混じっていたように言い、その場でバタッと倒れた。「うわわわわわ」キョウヤは腰を抜かした。自分もその場で立ち尽くしていると、ヒトシはミサキさんの脈を測り「死んでる」と一言だけ言った。しばらくすると医者が来て。ベットに乗せて運んで行った。看護師さんでさえも不気味がってからか少し青ざめていた。キョウヤは大声を出しながら病院から出て行った。時刻は13時45分。どうすればいいか話しながらにキョウヤの家に向かった。電話すら出ないため少し心配だった。なぜ彼女?はそんなに殺し回っているのだろうか。そう考えていると、キョウヤの家に着きインターホンを押すと、キョウヤが出てきた「よかった、無事で」「写真を違う者たちに送れ、なるべく多く」そう言うとキョウヤはその場で倒れた。ヒトシと一緒に恐る恐る脈を測ると死んでいた。「なんで、あなたはそんなに人を殺すのですか?」ヒトシはキョウヤに向かって言ったが、応答は無かった。時刻は2時半。ヒトシは「僕も死ぬだろう。だが、絶対に写真を送ってはいけない。これは約束だ。これ以上呪いでの死はなくそう」そう言うと、ヒトシは110.119.に電話をかけている。プルルルルルル、プルルルルルル、自分の携帯が鳴ったので出ると「後は、君だけだ。死にたいのか?」恐る恐る後ろを振り返るとヒトシが不気味な笑みを浮かべ、バタッと倒れた。あれはヒトシとは思えなかった。ヒトシも死んだんだ。救急車とパトカーの音が遠くの方から聞こえてくる。

その後のことは、警察署で事情聴取を受けて、病院で一応検査を受けた時刻は18時50分スマホを開くとLINEが開かれていて2時45分に、一枚の写真と『美陽』とだけ送っていた。

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