外は五月②

「あの子は確かに受け取ったのね?」


「はい、アン殿下。ユイは何も疑問に思っていないようでした」


使いにやった侍女が頭を下げた。


「上手くいきましたわね。アン殿下」


「ユイが贈り物を使うもよし、捨ててしまうもよし」


「後は、ユイの下に放った間者がなんと言ってくるか、それが楽しみですわね」


侍女達は勝手気ままに囀っている。幼い頃から周りに媚びてくる者達しかいない。それにももう慣れた。


侍女達が言うほど、ユイは愚かではない、あの小瓶の意味もちゃんと解釈できるだろう。ユイが行動を起こすまで、私はせいぜいユイを嫌っているように振る舞うのだ。まぁ、実際嫌っているわけだけど。


この国、インパスト王国は今、次期王妃の地位をめぐって私、第一王女アンと第二王女ユイの二人が争っている、ようだ。競争相手のユイが嫌い?そうではない、あの子に一目会った時から私はあの子を嫌いになった。理由なんかない、ただあの子の笑顔に腹が立っただけだ。


私の周りの者達はそんな私の考えを汲んで、ユイに散々嫌がらせをしてきた。


私の祖母は父王の第二妃だった。それに対してユイの母親はただの女官。権力の差は一目瞭然で、私達がした嫌がらせにユイが対抗できることなどなかった。


そこまで思い出した私はふと不安になった。確かにユイは聡い。でも、その賢さが裏目に出ることはないだろうか?あの小瓶の意味を履き違えることが…?くぎを刺しておくべきね。


そう思ってから、ふと窓の外に目を移す。ガラスの向こうでは五月の透明な光の中で、ばらが咲き乱れていた。

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王冠と毒薬 @oga-ta

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