王冠と毒薬

@oga-ta

プレゼントを受け取って①

プロローグ

私から貴方へ。

この小瓶が最初で最後の贈り物。

箱はきれいに飾ったおきましょう。誰の目から見ても、私の心がわかるように。


「だれか、これをユイ王女へ」


本編  

「アンお姉様がこれを私へ?」


いつものようにぞろぞろと現れたお姉様の侍女達が、頭を下げている。


「はい。我が主人からでございます。ユイ殿下、どうぞお受け取りください。」


先頭の侍女が頭を上げて、横で箱を捧げ持つ幼い侍女のほうを見た。


スッと箱が差し出される。室内がざわついた。


差し出された小箱はバラ結びの黄色いリボンで華やかに飾られていた。何の害も

ないというように。受け取ろうかどうしようか。私は中途半端に手を出したまま

固まる。


「ユイ殿下、お受け取りになってはいけません!アン王女殿下が何をお考えか!」


私の後ろに侍っていた者達から制止の声が掛かる。


「おほほほほ」


ただ一人頭を上げているお姉様の侍女が嘲笑った。


「何がおかしいのじゃ⁉」


私の乳母が詰め寄せる。お姉様の侍女は笑みを深くする。


「さすが、妾腹の者達は考えが薄汚い」


「おのれ!愚弄するつもりか⁉」


「我が主人が、ユイ殿下を害するとをでも?わざわざ妾腹のユイ殿下を?この国の女

性全ての頂点に立つ我が主人がわざわざ?たかだか国王陛下の温情で王女の地位に就いた妾腹のユイ殿下を?」


「ユイ殿下が王太子イグノ殿下と婚約したことを、アン殿下はご不快に思われてる とのもっぱらの噂でしょう?」


「そのような下世話な噂」


「火のない所に煙は立たないと言いますわ」


「そうですわ。いずれユイ殿下はこの国の未来の王妃!そのことをアン殿下が」 私の侍女達が口々に言う。それに対してお姉様の侍女は、嫌みたっぷりの視線を返すだけ。


これではいけない。


「お黙りなさい」


私は後ろを振り返った。侍女達がハッとしたようにくちを噤む。それを確かめて、再度お姉様からの使いの者達に向き直った。一つ息をして、覚悟を決める。

差し出された、小箱を手に取った。


「贈り物、確かにお受け取りいたしました。ありがとうございますと、アンお姉様にお伝えください…」

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