「寝台電車の昼と夜」は、昭和の時代を舞台に、寝台電車581系と583系の登場とその変遷を描いた作品です。物語は岡山から福岡への大学教授の旅を通じて、寝台電車の魅力と、その時代の鉄道旅の雰囲気を見事に再現していてます。そして、鉄道の細部にわたる描写と、登場人物たちの日常会話を通じて、時代背景や文化を感じさせてくれます。

特に印象的なのは、物語全体を通して描かれる旅のゆったりとした時間の流れと、寝台電車ならではの独特な体験です。列車内での食事や、車窓からの風景、また乗客同士のちょっとした会話が、旅情を豊かに表現しており、読者をその時代の鉄道旅に引き込んでくれます。

鉄道ファンだけでなく、昭和の雰囲気を楽しみたい方にも、おすすめの作品となっております。

最後の定期運用は、大阪～新潟間を結んだ「急行きたぐに」だったと記憶していますが、その廃止からも今年で10年。今は鉄道博物館で保存された姿しか見れない、伝説の電車、583系に、令和の時代に乗車して終点を目指している感覚になりました。

故西村京太郎先生の作品でもそうですが、今はなき特急列車を舞台にした作品は、こうして読み進めていけば乗車を追体験できることが、良いところです。

皆さんも、与方さんの作品を読んで、一昔前の旅に出てみませんか。

　新幹線が通る前の、懐かしい時代の寝台電車の旅を味わえます。食堂車の様子、電車から降りた後の喫茶店でのモーニングの味わいも格別です。擬似旅をお楽しみください。