1 悲劇には喜劇を添えて

「魅那……?」

最愛が死んだ。

直感でそう感じた。

私と魅那は、2人で1人。2人揃ってやっと完璧な魔法少女として存在することができる。私達がそう願ったのだ。

「あああああっっ……」

どうして。ずっと一緒だと、縛ったのはあなたからだったのに……


魅那が死んでからというもの、沙那の様子がおかしい。いつもならば仕事の合間にしている勉強も何もしていないのだ。

それはまぁ、双子の片割れをいきなり喪ったんだ。喪失感で何も出来ないというのは分かる。だが、何かがおかしいのだ。沙那は、魅那がどこで死んだのかを感知しようとしているのだ。

「沙那、あの」

「うるさい。魅那ぁ……どこ…」

「沙那!!!!!あんたどうしたの…?おかしいよ……?」

「魅那を見つけなきゃ……魅那はきっと、私を待ってるから……」

ずっと、この調子なのだ。


「ここだ。」

遂に魅那の魔力残滓を見つけた。まだ生きているのではないか。そう思うくらいには強い残滓だ。

すこし、いやかなり禍々しい気配ではあるけれど、それでも多分魅那のものだと確信した。

どうせ私はあの人たちに頭が狂ってしまったと思われている。だったらいっそ……



あれから数日。沙那は集会に顔を出さなくなった。どうしたのかな。体調でも悪いのかしら…そう心配の声が上がり始めた頃、沙那が来た。虚ろな目で片割れの武器であったはずの大きな斧を持っていた。

「沙那さん!魅那さんの武器見つけたの!?」

「良かった。体調崩してなかったんだね」

そう言ってアシュリーとゆららが沙那に近づく。沙那はゆぅるりと笑みを浮かべ、そして、

斧で、ゆららの首を切り落とした。

「え」

ゴトリ……と嫌な音。

「あははははっ魅那!見てる!?私!あなたと同じ場所には行けないかもしれない!」

そう笑う沙那。倒れたゆららのからだを呆然と見つめることしか出来なかった。

次はお前だ。沙那はそう言いたげな顔でアシュリーを見る。

「ひっ」

アシュリーも僕も、怯えた声しか出せなかった。沙那がゆっくりアシュリーに近づいていく。

「あああああっっ!!」

僕は叫び声を上げながら、部屋から走り出てしまった。直後、アシュリーの魔力の気配が消えた。沙那は、こちらを追いかけてくる気はないらしい。このままどこかへ逃げなくては。その気持ちだけが我先へとかける足を動かしていた。



血塗れになった部屋から出る。核も何もかもを破壊した。これで、ゆらら達を覚えてる人なんていなくなった。急いで魅那の魔力残滓が強い場所へ向かう。

「やっぱり。」

残滓が強く残っているそこには、魔法少女の成れの果ての結界があった。

一面が真っ暗で何も見えない結界内で私は……体がボロボロに崩れ落ち、成れの果てと化した魅那を見つけた。

「良かった……魅那。見つけた……遅くなってごめんね……ずっと、一緒だよ……」

そう言って、私は魅那と私の核を壊した。

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魔法少女に花束を 音無 @siikanm

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