1 後悔を添えて
「失敗だ」
ガヤガヤと騒々しくきらびやかな部屋。男はそこでローブを脱いで呟いた。
「珍しいねキラが失敗するなんて」
「アリス…」
後ろにたっていたバニーガール姿の少女。彼女は、男…キラの仲間である。
「別に。想定外の出来事があっただけだよ。」
「幹部?だっけ。その人たちを殺さないと任務は達成されないんだっけ?」
「…ダディが言うにはね。」
ダディというのは、ここのボスであり俺たちの父親代わりをしている男である。
「キラ。どうするの?」
「…2日後、1人づつ殺す。大丈夫俺ならやれる……ロンを生かすためだ。」
「そうだね…私も行ってくる。」
誰もいなくなった教会内。ひとり魔法少女達の亡骸を片付ける影がひとつ。彼女は、
「……核に傷が付かないように周りだけ壊されてる…かなり手慣れてるな。…どうしてあたしたちの所来たのかしら…」
そう言いながら亡骸を眺めていた。自分を弱いと認め、救われる為に信仰し、儀式の為に集まり、部外者に殺された魔法少女達。彼女達は驚いたような絶望したような、引きつった顔をしていた。目も閉じれなかった彼女達の目を「ごめんね」と呟きながら閉ざしていく。
そろそろ帰らないと。そう思い最愛にメッセージを送った。直ぐに戻ってきたメッセージと可愛らしいスタンプに思わず笑みが零れた。
その一瞬の油断だった。
ドスッという衝撃と共にじわ…っとお腹が暖かくなった。
「あーあ。殺した魔法少女の核回収しようと思ったのに。お前が先に片付けちゃったのか」
背後から、あの日の男の声が聞こえる。ズキズキじくじくと熱さが広がっていくのに、どうしようもなく寒い。
「あんた……は…」
「まだ口答えできるんだ?まぁいいや。お前の核もどうせ回収する予定だったし。」
残る力で振り返るとそこに居たのは同年代か、年下か。それくらいのバニーボーイ姿の少年だった。
「……沙那…」
白む視界と、頭で最愛の片割れを思い出す。
あぁ、ごめんなさい。ずっと一緒だと、あたしがあなたを縛ったのに…
パキ…と、体からおかしな音がする。あぁ、これが。自分が死んだのか、死んでいないのか何も分からない。
「あぁ…これが成れ果てか。巻き込まれたくないし、さっさと退散するか」
バニーの男がそう笑いながら去っていく。パキパキと未だおかしな音がする体は、もう何も感じなくなっていた。
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