シフォンとユーツのテーゼ

高黄森哉

テーゼ

1,シフォンとは


 シフォン(注釈1)は世界を支配する。今日の情勢を鑑みれば、シフォンを持つものは優位につくのは当然のことと言えるだろう。それゆえに、人物の価値というのは、全て個人の有するシフォンの尺度によって定義されるといっても過言ではない。また、シフォンは、魅力度を測る定規であるために、セックス・アピールたり得るのだ。だから、シフォンをなるべく増大させようとする。この働きをロードゥと呼ぶ。


2,平等主義について。


 ロードゥ(注釈2)によるシフォンの振り分けが不十分でないと叫ぶ集団がいる。彼らに寄れば、シフォンはシフォンを持つものに不当に傾くとされ、この悪循環はシフォンの非流動性を促進するとされる。研究者の中には、これままったくのルマンチサンで、むしろシフォンを持つべきものに、シフォンは集結する性質があるので、そのようなはたらきを阻害することは、循環の妨げになる、と主張するものもいる。平等主義の類義語として、ユートピア、桃源郷、ザナドゥなどがある。



3,ユーツの性質


 ユーツ(注釈3)は普通、形を持たず、人々の心の中に不定形で存在するとされている。カントの言う集合的無意識とは関係なく、また、フロイトが提唱したエディプス・コンプレックスとなんら関りがない。このユーツの複雑で、超個人的な形を知ることは困難であり、研究者の間ではそれは、リアリー=リアリー・コンプレックスである、と考えられている。ユーツの親戚には、ソーツ、ヨクーツがあり、この二つは、いわば愛人の子供のような近接性を保有している。


4,シフォンとユーツ


 ポストモダンの世の中に人々はユーツの状態にあるとされている。これは、個人の不活性についてを指し示す。ユーツは、シフォンの不足によって引き起こされる場合があり、如上の平等主義はユーツ過剰者のニーズを満たす形で自然発生したといえるだろう。ユーツは、万物のシネクドキーとしての役割を持つ。シグネドキーは、メトニミーと呼ばれることもあり、上位下位の近接的関係を結ぶセメントのような仕組みを差す。


5,シフォン・ユーツ主義観点から見た人類の今後


 シフォンの増大によって始まった二十世は、まさに荒波と類似した混沌に包まれていると言える。そのねずみ講然とした膨らみは、まさに核爆発といってもいいのではないだろうか。そのため、シフォンの指数関数的爆発を、核燃料の材料となるイエローパンケーキになぞらえ、シフォンケーキと呼ぶ動きさえある。シフォンおよびユーツの関係性を明らかにし、今後の発展に貢献していくことが、我々研究者には今後、求められていくだろう。



注釈1:資本

注釈2:労働

注釈3:憂鬱

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シフォンとユーツのテーゼ 高黄森哉 @kamikawa2001

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