123 図に乗るなよ、小僧っ!
さて、キリがいいし、希望通りにタコ身をゲットしたので、少し早めの昼飯にしよう。
焼きダコ、タコ天、たこ焼き、酢だこ、タコマリネ、タコ飯、タコパスタ…とタコ尽くし。
錬金術も使ってショートカットしたため、さほど時間をかけず、たくさんのタコ料理が出来上がった。
野菜が少ないので作り置きのミネストローネも食べる。
タコ身の味がいいこともあるが、どれもこれも美味しくて我ながら美味しい物しか作らない。自画自賛。
そこに、ボス部屋に入って来た五人パーティがいた。
アルは探知魔法でもっと前から気付いていたが、一人分の昼食以外はしまってあるので問題ない。
「こんにち、は?」
剣士らしき女がおずおずと声をかけて来た。
「こんにちは」
「何かいい匂いがするんだけど、…って、ものすごいくつろぎ方だなっ?」
斥候らしき男は、角度的にアルが見えてなかったらしい。コーヒーテーブルだと狭いので、食事は二人掛けテーブル椅子セットだ。
「分けねぇから」
「あ、まぁ、そうだろうね…」
「…あれ、タコ?ここのフロアボスのドロップ?」
「君が倒したのっ?」
「分けねぇから」
「いや、いらないって。あんな気持ち悪いのの身なんて」
魔法使いの男がそう言う。
昔の欧米人のようだ。見た目だけで食べないなんて、人生、色々と損している。
「じゃ、何の用?」
「ポーションを分けて欲しいんだ。魔物と戦ってる時に落としてしまって」
リーダーらしき槍使いがそう言い出した。
「装備もアイテムも万全じゃないのなら、退くべきだろ。欲をかくといらん怪我をするだけだ」
今は誰も怪我してないのは鑑定で把握している。
「でも、夕方の船までまだかなり時間があるだろう?」
「それが何?リーダーなら引き際を見誤るな」
「君のような若い子に言われたくないな。これでも十五年以上、冒険者をして来たんだ。判断を間違うことはない」
「今、間違ってるぞ。おれがソロでここにいる時点で、年齢なんか何の関係がある?装備もおれの方が格段に上。そして、頼み事をしているのはどっちだ?」
十五年以上も冒険者をしていれば、アルの装備がかなりいい物なのは分かったのだろう。
つまり、それだけ稼いでるし、経験も積んでる。つい見た目だけで判断をしてしまったリーダーは悔しそうに唇を噛む。
「たまたま稼いでるからって、図に乗るなよ、小僧っ!目上を敬えって習わなかったのか!うちはリーダーのおかげで上手く行ってるんだ!口出しすんな!」
剣士の男が怒鳴った。
「バカ、やめろっ!どう見ても実力者に突っかかんなっ!頼むからっ!」
慌てて斥候の男が止める。何だか苦労してそうだ。
「ま、まぁまぁ、ごめんなさいね。お食事中の所」
「お邪魔、しました…」
斥候が剣士の男の腕を引っ張り、剣士の女と魔法使いの男がリーダーの背中を押して、さっさと退場させた。
「冒険者は自己責任」
アルがあれだけ言っても、あのパーティはまだ潜るつもりだろう。痛い目に遭っても自業自得だ。
…そう割り切れたら、もっと気楽に生きられるのだが。
アルは昼食をしっかり食べ、転移魔法陣がある小部屋に寄ってから21階に降りた。
海底神殿フロアだが、泳ぐ必要はなく、階段から出ると空気のドームに包まれた神殿に出る。
神殿とは言うが、中は迷路だ。洞窟型をちょっとオシャレに開放感溢れるように所々吹き抜けにして、空気を泳ぐ魚介類系魔物が襲って来るだけで。
もちろん、普通に歩く飛ぶ魔物もいるし、トラップもたくさん仕掛けられているが、探知魔法のレベルが高いアルには丸分かりだった。
アルは今まで通りに斬り捨てて進み、オーブはゲットしたものの、歯応えのある魔物がいなくて残念に思いながら、次の階層へ行く階段を降りようとした所で、探知魔法に引っかかった。
魔力の大きさからしてイレギュラーボスだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――
関連話*「番外編09 あの『玉座』は今…?」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330659598157629
関連話*「番外編10 あの『玉座』は今…?― 冒険者side ―」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330659599061079
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます