122 主張の激しい素材のせいでアイテム名が…

 翌日の朝食後、いつものようにイディオスを住処に送った後、再びトモスの街の物陰に転移し、そういえば、と思い出して、冒険者ギルドに行く前にステータスボードを表示してみた。


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名前:アル(シヴァ)

年齢:16歳

状態:良好

職業:冒険者(Cランク/Sランク)、

   ダンジョンマスター(キエン、アリョーシャ、パラゴ)

Level:96

HP:7600/7600

MP:388600/388600

攻撃力:SS

防御力:A

魔法防御力:A

素早さ:A

器用さ:S

知力:SS

幸運:B

スキル:多言語理解、物理・魔法・状態異常全耐性、魔力自動回復、浮遊魔力利用、剣術、錬金術、鑑定、体術、魔力操作、念話

魔法:生活魔法、空間魔法(収納、転移、次元斬)、属性魔法(火・水・風・土・雷・氷)、身体強化、結界魔法、付与魔法、探知魔法、重力魔法、回復魔法、飛行魔法、影魔法(影転移、影拘束)、ボイスチェンジャー、変幻自在、隠蔽魔法、チェンジ

称号:転移者、時には虐殺もする快適生活の追求者、アリョーシャダンジョンソロ攻略者(2回)、ロンリーバイカー、パラゴダンジョンソロ攻略者(3回)、知的探究者、ディメンションハウスの所有者、キエンダンジョンソロ攻略者、キエンダンジョンマスター、フェンリルの友、アリョーシャダンジョンマスター、パラゴダンジョンマスター

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 名前が【アル(シヴァ)】になっている。【アルト】表示がなくなったのは、やはり死亡している、ということでいいのだろうか。前に表示されていたのは、ギルドカードがそうだから、で。その辺りは鑑定しても出て来ない。


 そして、見落としていたが、職業にもダンジョンマスター表記が。…前からだったか?覚えがない。

 でもって、いつの間にかレベル96。上限は何桁なのだろう?

 …これは鑑定様が教えてくれた。上限はないらしい。不老長寿が決定したアルには。


 キーコ、アーコ、パーコの三つのダンジョンコアは、アルが渡した通信バングルのおかげで、話し合いが実現し、アルが思い付いたアイディアを実行に移すべく情報を集め、検証し、よりいい方法がないか話し合っていた。

 神獣の役目を軽減する、というのは、ほぼ何でも作れるダンジョンコア、三つが集まっても、さすがに簡単なことじゃなかったのだ!


 魔力が余っていて害をなすのなら、その余剰魔力をダンジョンでもらってしまえば、とアルは思うのだが、それも意味ないらしい。

 イディオスによると、根本解決が出来ないからこそ、神獣が遣わされているので、今、イディオスの住処の森の魔力を正常に戻せたとしても、他の場所が似たようなことになる、と。

 すると、やはり、転移魔法陣及び転移トラップを置く、というのが、現時点で出来る一番実現出来そうなことになるワケで。


 アルに手伝えることはまだないので、とりあえず、ダンジョン攻略をして、ダンジョンマスターになり、トモスコア【トーコ】を増やそう、であった。

 やはり、個性がそれぞれ違い、建設的な意見がビシバシ出て面白い、と一番付き合いの長いキーコが言っていた。頑張って欲しい。


 攻略ついでに依頼を受けようと、アルは冒険者ギルドへ行き、今日も掲示板を覗く。

 そこまで早い時間ではなかったが、まだまだ賑わっていた。


「おはよう。昨日は情報ありがとな」


 三つのパーティが失敗している、と教えてくれた十代後半の男が今日もいた。


「いやいや。丁寧だな。どうだった?依頼は」


「達成した」


「…え、もう?お前、この街に来たばっかだろ?」


「そうだけど、降りて行くだけだし。おれはアル」


「ああ、オレはジオ。呼び捨てでいいよ。で、アル?」


「いいよ。おれも呼び捨てで」


「ソロみたいだけど、一人で11階までたった数時間で降りたんだ?」


「ああ。で、【人魚の羽衣】は2個出た」


「何匹倒して?」


「えーと、11と13なんで24匹」


「……アル、規格外だってよく言われない?」


「足し算ぐらい誰でも出来るだろ」


「そこじゃない。あっさり倒した風にしか聞こえなかったんだけど?」


「そう?」


「そう。何でまだBランクなんだ?」


「いや、おれCランク」


「おいおい、昇格試験受けろよ。面倒がって受けてないだろ」


 そういったタイプに見えるらしい。


「いやいや、全然実績が足りねぇんだって。登録してまだ半年だし」


 あ、もう八ヶ月弱か、と言ってから思ったアルだが、大差ない。


「そうか。前は傭兵か魔法使いの弟子か何かだったんだな」


「決め付けんなって。お前…ジオはCランク?」


「成り立ての、な」


「おれだって二ヶ月弱前に昇格した所だぞ。…お、21階海底神殿フロアにオーブがあるのか。…ってAランクだし」


 話しながらも掲示板を見ていたアルは、雑然と貼られているせいでBランクフロアに入りかけていたAランク依頼を見付けたので、Aランクの方に貼り直しておいた。研究価値がありまくりのオーブの情報は有り難い。


「アル、攻略する気?」


「さてな」


 攻略しても公にしない。

 目ぼしい依頼もなかったので、アルは依頼は受けずに冒険者ギルドを出た。そして、歩いて港に行き、バイクを出して乗り込み、飛行モードでダンジョン島に行く。


 11階からだ。

 11階は普通の海、12階は南国の海、13階は北の海、14階はサンゴの海、15階は嵐の海、と海フロアが続き、すべて浮島があるが、結界足場が作れるアルには、飛ばなくても全然平気だった。


 前回は人魚は魔法で一気に殲滅してしまったので、今度は鍛錬がてら、ミスリル刀で斬りまくって進み、【チェンジ】のおかげで着替える時も止まらず、16階雲フロアで休憩する。


 16階は宙に浮かぶ雲…雲に似せたふわふわの足場を渡って行き、大きい物もあれば、小さい物もある。適度に雲があるので人目に付き難いのだ。

 …ああ、隠蔽魔法をかければいいのか。

 アルはいつものソファーセットを出してまったり休憩する。何となく気分でカフェオレとお茶菓子はクッキー。


 結局、13階の北の海フロアで、用意した【氷猫のヒゲ】を使った【へいきにゃーん・寒い所でも問題なく活動出来るレアアイテムペンダント】は使わず終いだった。

 『少し温かい服』とダウンコートが優秀過ぎて。

 ちなみに、【へいきにゃーん】はアルが命名したのではなく、勝手にこの名前になっていたのである。主張の激しい素材のせいで。


 休憩を終えたアルは、飛ぶ魔物がたくさん襲いかかって来るのをぶった斬り、時には足場に、移動の足に使いつつ、フロアを渡ると、下の階層に続く階段付近に、人型に羽が生えた魔物が一ダース待ち構えていた。


 天使モドキ。

 人形に羽を付けただけ、という感じで動きも悪く戦闘力も低い。人形っぽいので首を斬るだけではダメかもと細切れにする。

 …が、首を斬った時点でドロップに変わろうとしたので、アルの考え過ぎだったらしい。


 17階は風の谷フロア。

 峡谷に風が吹き荒れており、飛ばされそうになりながら道を歩き、遮蔽物になる岩や木の陰を選んで進まないとならない上、魔物も襲って来る。

 そもそも、風の原因は風竜。イレギュラーボスとも言えよう。


 別に倒す必要なんかないのだが、アルは素材をドロップしないかと期待して討伐したが、いかんせん下位種では【上級ポーション】程度だった。汎用性の高い鱗か爪か血が欲しかった。

 峡谷だけあり、トカゲ類や鳥、風属性魔物が多かった。


(…ハーピーってここで出たんじゃね?)


 そう気付いたアルはゾッとしてさっさと通り抜ける。


 18階は霧の森フロア。見通しが悪いが、探知魔法、気配察知スキルがあれば、まったくもって普通のフロアだった。

 ミストウルフ、ミストリザードマンはいたが、時々霧に潜り込む程度。普通に物理攻撃が効くし。ミストドラゴンぐらい配置して欲しかった。

 アルがダンジョンマスターになったら手配しよう。


 19階は夕暮れフロア。

 フィールドタイプのフロアは、外と連動していることが多いのに、ここは連動しておらず、いつも夕暮れ。

 『逢魔おうまが時』とも『トワイライトゾーン』とも言うからか、ここに出て来る魔物はデーモン系。

 夜はアンデッドに譲ったのか。

 人型、顔が虫、腐ってるタイプと盛りだくさん。

 デーモンならしつこく復活するものでは?と期待したのに、肩透かしを食らった。

 核?がある所を斬るだけでいい、なんてデーモンの名折れでは。ここも要改善だな。


 そして、20階。フロアボスはタンバリンテンタクルス。

 吸盤タンバリンを鳴らしてうるさいタコ。

 音響攻撃を得意としているので、耳栓は必須、と言われているが、防音結界を張れるアルにはまったくいらない。

 粘液が斬撃を滑らせ、中々ダメージを与えられない、とのことだったが、アルはサクッと斬れた。

 どれだけ切れないのか確かめようと、魔力を込めず刃筋を立てただけなのに。


 美味しいタコ身をドロップしな、とざくざく斬って終了。

 特殊攻撃を使う魔物は戦闘力としては低いことが多いのだ。

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