121 ちょっとダンジョンマスターになって来よっと
『そもそも、普通のダンジョンマスターって何をやるんだ?管理や改変だけか?』
イディオスがそんな質問をした。
「最初はコアに色々作ってもらえることを喜ぶだろうけど、ダンジョン攻略をする奴なんだから元々稼いでるし、次第に飽きて新しい装備を試すためにも他のダンジョンに挑戦するんじゃね?…ああ、おれとあんまり変わらねぇ」
『いや、全然違うだろ。【快適生活の追求者】称号持ちで、本人も色々作るのが好きなんだから。コアと一緒に研究や改良って辺りもアルしか出来んことだと思う』
「その辺はな。…研究と言えば、ものすごくレア素材が集まってしまったんで、どれから作るかなって迷ってたり。イディオス、何か欲しい物ない?」
『我に訊くのは間違ってるぞ。状態異常にもならんし、気温の影響もほとんど受けんし』
「神獣様だもんな。…あ、北の海フロアがあったか。寒い所でも平気になるマジックアイテムからにするか。ダウンコートと『少し温かい服』で何とかなりそうだとは思うけど」
『少し涼しい服』を改良して温度調節が上手く行ったので、『少し温かい服』も温度調節が出来、長時間利用は自動的に切れるセーフティも完備出来て、低温ヤケドの心配もなくなったのだ。
「使う予定の奴らってステータスの高い連中ばっかなんだから、ヤケドなんかしなくね?」というツッコミが入るが。
『ああ、前に言ってた服が完成したのか。まぁ、念のために作るのもいいんじゃないか』
「そうだよな。そういえば、イディオスってダンジョンに入れるのか?神獣だからダメとかない?」
『ないが、別に用事がないし。アルに我のサポートなど必要なかろう?』
「そうだけど、そうじゃなく。キエンダンジョン内にここと似たような施設を作るのに、イディオスが来れねぇのなら残念だって話だって。じゃ、大丈夫だな」
『なんだ、そういった意味か。それは是非。我に転移魔法が使えれば便利そうだが、適性がなさそうだし』
「あっ!転移魔法陣を設置すればいいんじゃね?あの森、魔力が濃いんだよな?コアにも力を借りれば、成功するかも」
『しかし、強い魔物が生まれ易く…行き先がダンジョンなら問題ないのか』
「だろ?っていうか、転移トラップの応用で強制的にダンジョン送りになれば、イディオスの負担も減るんじゃね?旅行も可能なぐらいに」
我ながら名案だ!
高ランク冒険者でも倒せそうもない強い魔物なら、下層じゃなく、最下層のボス部屋へ繋げばいい。
『それはそうだろうが、そう上手く行くものか?』
「やってみなけりゃ分からねぇだろ。コアに訊いてみる」
アルはコアに連絡して、その辺のことを訊いてみると、転移魔法陣や転移トラップが発動するかどうかは森の魔力次第らしい。
イディオスの住処にはアルが何度も行っていることもあり、コアにも場所が分かるので、すぐに使い魔のレイスに調査させるそうだ。
「ははっ!更に楽しくなって来たなぁ」
『成功したら大改革だぞ!各地を守っている神獣たちが自由に動けるようになるのだから、アルにどれだけ感謝しても足りんだろうな』
「その時は色々と協力してもらおうかな。神獣も数が集まれば不可能なんかなくなりそうだし。でも、ダンジョン一つで足りなそうだけど、神獣自ら攻略してもダンジョンマスターになれるもの?」
『無理です、マスター。ダンジョンマスターは人間及び亜人しか想定されておりません』
そこで、一回りして来たバタコアが口を挟んだ。テーブルの上に止まる。
ダンジョン側はやはりそんな制約があったらしい。
「じゃ、どうせダンジョン巡りするんだし、ついでに攻略して行くか。…あ、あったな。複数ダンジョンのダンジョンマスターになるメリット。既に攻略済のアリョーシャとパラゴはすぐダンジョンマスターになれる。ダンジョン外でも転移魔法陣と転移トラップが成功したら、マスターになって来るか」
『でしたら、マスター。潰していいダンジョンのコアを転移魔法陣に設置すれば、必ず成功しますが、どうしますか?』
そうか。ダンジョンコアは魔力の塊だった。
「いや、それはやめてやろうぜ。ダンジョンのおかげで街が潤ってるんだし」
『我もそれは望まんな』
『はい。かしこまりました』
「そうだ。『三人寄れば
『三人寄ればって何だ?』
「格言。元いた世界のな。一人より二人、二人より三人の方がいい意見が出ますよ、って意味。アリョーシャのダンジョンコアと話したけど、それぞれ個性が違うみたいだしさ」
『ほう、そうなのか』
『わたしも初めて知りました。それでしたら話してみたいですね』
「その前に名前を決めよう。キエンダンジョンのコアは【キコア】、アリョーシャダンジョンのコアは【アコア】、パラゴダンジョンのコアは【パコア】ってのは?…って、言い難いな。【キーコ】【アーコ】【パーコ】で」
『ものすごく単純な名前を付けたな…』
『いえ、嬉しいです。わたしは【キーコ】ですね!』
「本体はな。蝶バージョンは【キーコバタ】で」
『わたしは【キーコバタ】。有難うございます、マスター!』
『アル、正式に名前を付けたことで独自に意識を持つようになるぞ』
「そうなんだ?別にいいけど」
『そう言うと思って止めなかったワケだ。デメリットもなさそうだしな』
「デメリットっていうと、定番の反旗を翻すってヤツ?意識を持ったことでだんだんとマスターに不満を募らせてさ」
『定番なのか』
「創作物の、な。このダンジョンマスター権限はかなりの強権だから、そんなことにはならねぇけど」
絶対服従なのだ。
『ご不満があれば処分して下さい!』
「いやいや、疑ってねぇって話。普通に働いてくれればいいだけだから」
『はい!』
「じゃ、ちょっとアリョーシャとパラゴのダンジョンマスターになって来よっと」
『…ちょっと、な』
イディオスのツッコミにアルは少し笑い、アリョーシャダンジョン、コアルームに直接転移してマスター登録して事情を話して通信バングルを置いて行き、パラゴダンジョンはダンジョンボスのバジリスクをサクッと一撃で倒し(三回目)、ボス部屋からコアルームを探って次元斬で出入口を作って入り、マスター登録し、通信バングルを渡した。
速く倒し過ぎてまたしてもダンジョンエラーになったのは、言うまでもない。
コアと交渉してドロップ品はSランク魔石でもらった。二十個もくれたが、それで相応らしい。
これでアルはキエン、アリョーシャ、パラゴの三つのダンジョンのダンジョンマスターになった。
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