大文字伝子が行く102

クライングフリーマン

大文字伝子が行く102

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 斉藤理事官・・・EITO創設者で、司令官。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 草薙あきら・・・警察庁情報課からのEITO出向。民間登用。ホワイトハッカー。

 渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。

 青山たかし警部補・・・元丸髷署生活安全課所属。退職した後、EITO採用。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。

 金森和子1等空曹・・・空自からのEITO出向。

 早乙女愛警部補・・・警視庁白バイ隊からのEITO出向。

 大町恵美子1等陸曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ1等陸曹・・・陸自からのEITO出向。

 馬越友理奈2等空曹・・・空自からのEITO出向。

 安藤詩3等海曹・・・海自からのEITO出向。

 浜田なお3等空曹・・・空自からのEITO出向。

 日向さやか1等陸佐・・・陸自からのEITO出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。

 稲森花純1等海曹・・・海自からの出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からのEITO出向。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からのEITO出向。

 御池花子・・・東京都都知事。

 高峰くるみ・・・愛宕みちるの姉

 高峰圭二・・・元警部補。警備員をしている

 物部一朗太・・・伝子の大学翻訳部同輩。当時、副部長。

 物部(逢坂)栞・・・一朗太の妻。伝子と同輩。

 福本英二・・・伝子の翻訳部後輩。演出家。

 依田俊介・・・伝子の翻訳部後輩。元は宅配便配達員だったが、今はホテル支配人になっている。

 依田(小田)慶子・・・依田の妻。ホテルコンシェルジュ。

 大文字綾子・・・伝子の母。高遠を「婿殿」と言う。

 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =


 午前9時。伝子のマンション。

 「なんで?なんで、切っちゃうのよ!学、しっかりしてよ。」「また、かかってくるよ。」

 イエ電がかかって来た。伝子が出ようとしたが、高遠は伝子を制して出た。

 自動録音装置と自動送信装置が作動した。

 「大文字伝子さんのお宅ですか?」「はい。」「昨日は、わざと切ったのか?大門学、いや、大文字学。」「よくご存じですね。」高遠は、ボイスチェンジャーの声に注視した。

 「大文字伝子は?」「今、トイレですが。失礼ですが、どなたですか?」

 「確かに失礼だったな。私は、お前達が幹と呼んでいる存在。そう、3番目の幹のテラー・サンタだ。以後、よろしくな。」「よろしく・・・お願いします。で、ご用件は?」「最初は、ノーヒントが当たり前だと思っていたが、考え直した。ヒントをやろう。」「ありがとうございます。」「では、私が最初に事件を起すのは、次のうちのどれか?1.3つの時。2.5つの場合。3.7つのケース。謎を考えて、解け。そして、防いでみろ。クリアしたら、褒めてやる。初対戦だ、大文字。しっかりやれよ。じゃあな。」

 電話が切れた後、高遠は言った。「敵がどんなタイプか知りたかったんだ。どうやら、短絡的ではないようだ。」

 10分後。EITOのPCが起動した。理事官が画面に現れた。

高遠は、昨日のことを報告した。「短絡的なタイプじゃないですね。ヒントくれるそ うだから、助かると言えば助かります。」

 「そろそろ、電話番号を変える時期かと思ったが、変えられないな。その電話で連絡をしてくるかも知れない。装置をセットして正解だったな。今、声紋分析の専門家に送って依頼したよ。大文字君の意見は?」

 「昨日、切っちゃったから、危うく夫婦喧嘩になる所でした。学の言う通り、焦り過ぎでした。取り敢えず、7つ同時開催のイベントを探すのはどうでしょうか?」

 「詰まり、その日のイベントが1つの場合は、その日に起こる事件候補から除外する、ということかね?」「その通りです。」「了解した。草薙、聞いたか?」「了解しました。」

 画面が消え、ネット越しの3人の会話を聞いていた高遠は、言った。

 「レディ、ゴウ!」伝子は笑って、「ばか。今の内に愛し合わない?ダーリン。」と甘えた声で言った。

 「今の内に愛し合わない?まだ、朝よ、新婚さん。」と、いつの間にか入って来た綾子が言った。

 「またか。雰囲気壊すなよ、母さん。」と、伝子はため息をつき、高遠はコーヒーを入れに席を立った。

 午前10時。綾子が帰った後、掃除機をかけていた伝子は、高遠を呼んだ。

 「あなたー。掃除機壊れちゃった。」パーツを確認した高遠は、「なあんだ。吸引力が落ちて、通電しなくなったんだな。買い変えるか。どこがいいかな?」と、高峰 くるみに電話をした。スピーカーをオンにした。

 「え?掃除機ですかあ。ウチは食品スーパーだから。総合スーパーなら置いてある所もあるけど、あなたあ。」くるみは、電話から遠ざかった。

電話に高峰が出た。「家電なら、アカヒ町に出来た、あすなろ電機がいいですね。二人とも休みなので、お付き合いしますよ。」

 午前11時。あすなろ電機アカヒ町店。

 2階には、沢山の家電が並んでいた。「これなんかいいんじゃない?大文字さん。充電式だから引きづらないし、コンパクトだし。」

 くるみの一言で掃除機は、すぐに決定し、2組の夫婦は、買い物を楽しんだ。

 一旦精算し、自動車に運んだ後、4人は喫茶店に入って、休憩することにした。

 「泥棒!」と叫ぶ声が店内に響き渡った。「やっぱり、こういう展開になるんだ。」と、高遠はため息をついた。

 伝子の近くを泥棒が走り抜けようとした。伝子はすかさず一本背負いをかけた。

投げた後、その場を去ろうとする男を、伝子は追っていき、フライングヘッドシザーズをかけ、男を倒した。

 高峰は、別の、逃げる男を追いかけ、蹴った。警備員が二人、駈けてきた。

 伝子と高峰が、盗んだものと思しきものを差し出した。

 「あ。主任。今日の担当地区でしたか。」「高峰君。非番なのに、よく捕まえてくれたね。ありがとう。」

 もう一人の警備員が警察に連絡をした。「そちらは奥さんでしたね。それで、えっと、こちらは?」

 尋ねる警備員主任の岡安に、「妻の妹の旦那の先輩の大文字さんと、そのご主人です。」と、高峰は伝子達を紹介した。

 「ご協力感謝します。岡安と申します。現行犯逮捕が原則ですが、グループで実行されると、証拠を隠されてしまったりしますからね。助かりました。」

やがて、愛宕と橋爪警部補がやって来た。「あ。先輩。お義姉さん、お義兄さん。」と、愛宕が驚いた。

 愛宕達が帰ると、「我々も帰りますか、大文字さん。」と伝子に高峰が言ったので、「そうですね、掃除の途中だったし。」と言い、高峰夫婦と別れた。

伝子の自動車の中。「臭うな。」「何、オイル漏れ?この間車検に・・・。」

高遠は、言葉を飲んだ。何と5台のクルマが追ってくる。高遠はDDバッジを押した。

 「前に似たようなことがあったな。あったわね、学さん。」普通にしゃべればいいのに、と思ったが、そんな場合じゃ無いことを高遠は気づいた。

すぐに、スマホを出して、高遠はEITOに連絡をした。スピーカーをオンにした。

 「何があったんです、高遠さん。」草薙の声だった。「5台のクルマで、煽り運転です。」

 「500メートル先にサービシエリアがあります。そこに誘導して下さい。」

 伝子は頷き、クルマに体当たりされないように注意しながら運転をし、サービシエリアに到着した。

 ついてきたクルマが次々と駐車をして、男達は伝子達に近づいてきた。

 男達はスパナやラチェット、バール等を持っていた。すぐに、伝子の自動車を壊しにかかった。

 その時、オスプレイが飛来して、人が降ってきた。いや、エマージェンシーガールズ姿のなぎさと金森が、パラシュートを駆使して高速で降りて来た。そして、着地する前にブーメランで、男達の武器目がけて投げた。

 「どうしました?」となぎさが尋ねた。「あおり運転なんです、エマージェンシーガール。危うく車ごと殺されるところでしたわ。」と、伝子は済まして言った。

 なぎさと金森は、速攻で男達を倒し、縛り上げた。

 パトカーのサイレンが聞こえ、到着した。パトカーと共に白バイに乗ってやって来たのは、警察官姿の早乙女だった。

 「どういうことです?エマージェンシーガール。」と、早乙女は金森に尋ねた。

 「あおり運転だそうです。たまたま我々がパトロール中だったので、救援に入りました。では、後はよろしくお願いします。」

 「了解しました。」と早乙女が言うと、オスプレイからロープが降りて来て、パラシュートを回収した二人は、ロープを掴んで空に消えた。

 「後で話を伺いますから、どうぞ、ご帰宅下さい。」と、早乙女が言うので、高遠と学は自動車に乗り、去った。早乙女は見送りながら、敬礼をした。

 午後1時。伝子のマンション。

 高遠と伝子は、急いでラーメンを作り、昼食にした。

 伝子が掃除機をかけていると、伝子のスマホが鳴った。

 「あなたー。出てー。」高遠が出ると、なぎさだった。

 「あ、おにいさま。おねえさまは?」「今、掃除中。今日、新しいの買ったし。」  「ふうん。あ。あおり運転犯人の取り調べだけど、あつこと久保田さんは高速エリア署でやるそうです。お伝え下さる?」「了解。」

 電話を切った高遠は、伝子も変わったが、それ以上になぎさが変わったと感じていた。

 一ノ瀬家の躾も、あるだろうが。

 掃除機の電源を切り、部屋を移動した伝子は高遠に尋ねた。

 「なぎさ、何て言ってきたの、あなた。」「うん。あつこ警視が取り調べするって。」「ふうん。取り調べって、厳しいのかなあ。見たこと無いから。お前がやったんだろう?早く吐け!とか。」

 「ははは。まさか。」と高遠が笑った。

 高速エリア署。取調室。

 容疑者の一人が、あつことテーブルを挟んで対面している。部屋の隅で、みちるが書記をしている。

 「婦警さん、二人で大丈夫かな?」と、男が笑った。

 いきなり、あつこはテーブルをひっくり返した。

 「何だと、くらあ!!」あつこは、左手で所謂『壁ドン』をして、右手は男の胸グラを掴んだ。

 「今、婦警って言ったよな。書記、言ったか?」「言いました。」と、みちるは済まして言った。

 「この頃はなあ。婦警って言ったら差別、パワハラになるんだよ!」「じゃあ、どう言えば?」「女性警察官。言ってみろ!」「女性警察官・・・。」「言えるじゃないか。今から、美人の女性警察官が取り調べをしてやる。嬉しいか?あん?嬉しいか?」

 「はい。嬉しいです。」あつこは容疑者の手の指を、容疑者の口に入れ、自分の唇に宛がった。

 「今、セクハラもしたよな。書記!」「はい、唇塗らしてから警視のルージュを舐めました。」「ええ?そんな。」「パワハラやセクハラで訴えられたくなかったら、 正直に答えろ。分かったな。返事は!!」「はい。分かりました。」

 取調室の隣の控え室。4脚の椅子に座っている容疑者達。その近くに立っている、 久保田警部補と西部警部補。

 よくあるマジックにラーを6人で見ていた。久保田警部補がミラーのカーテンを閉めた。

 「あのー、旦那。俺たちに何で見せたんです?」「予行演習。取り調べのね。」 「予行演習って・・・旦那達が取り調べるんじゃ・・・。」

「いいや。だって、彼女の方が偉いから。私は警部補。」と、久保田警部補が言い、 西部警部補も続いて「私も警部補。あのね。警視って、警部補より2個階級が上なんだよね。分かる?」「2個ですか?」「そう。警部補、警部、警視。覚悟しておいて貰おうと思ってね。」

 4人は震え上がった。

 3時間後。取調室を出た、あつことみちるは、会議室に移動した。久保田警部補と西部警部補が待っていた。

 「どうだった、まこっちゃん。」「あっちゃん、名演技だね。女優にもなれるよ。」と、久保田管理官が褒めた。

 「あつこ。どうでもいいけど、書記!はないよお。」と、みちるが不満を言った。 「ごめん。」

 午後5時。伝子のマンション。

 EITO用のPCが起動した。

 「おねえさま。連中は吐いたわ。金を貰って、煽り運転を依頼されたそうよ。」

 あつこの言葉に、「連中は、枝や葉っぱに接触したのかな?」と、伝子は尋ねた。

 「ううん。ネット経由。所謂『構ってちゃん』、つまりSNSで他人の投稿にケチをつけて回る類いのチンピラ。組織は、そういう奴らを闇サイトで釣り上げるようね。ビットコインで前払いされた彼らはすぐに換金。少しからかう積もりで行動に移した。以前のように、どこかで見ていたか撮影していたに違いないわ。」

あつこの報告の後、理事官は高遠に尋ねた。「どうかね、高遠君。今度の幹のナゾナゾは解けたかな?」

 「断片的になら。文章が変なのは、那珂国人だからという理由だけではない気がします。『3つの選択肢』から選べ、みたいな言い方でしたが、実は、要素別のヒントなんだと思います。」「要素?」「詰まり、要素のそれぞれがヒントなんです。組み合わせが大事なんだと思います。」「ふむ。それで?」「1番目の要素、『時』は文字通り時間、2番目の『場合』は内容。例えば『時限爆弾事件』とか。」「ふむ。」「3番目の要素は、入れ物、詰まり、場所だと思うんです。」

 「入れ物、ってことは、過去に何度かあった、『屋内』という意味かね?」と理事官は尋ね直した。

 「そうです。ただ、それぞれの要素にある数字が何を表すか分からないので、困っています。」

 「分かった。それだけでも、。十分な収穫だよ。それから、私にも一つだけ理解出来たことがある。幹は自己顕示欲が強い。だから、ヒントをわざわざ出してくる。君たちに見破られても今度こそは、と挑戦してくる。有り難い性癖だ。」

画面は消えた。

 午後7時。夕食後、伝子が高遠の服を脱がせにかかった時、高遠は、「あっ!」と言って、自分のPCの所に走って行った。

何やらカタカタやっていた高遠は、EITO用のPCを起動した。

 「おお。高遠君。何か分かったという顔をしているね。」理事官が言うと、「はい。3番目の要素のケースですが、『副都心』を現しているんじゃないかと思うんです。」

 「副都心?新宿副都心とか池袋副都心とか。」

 「そうです。以前のエリア区分とも場所は重複する部分もありますが、副都心として区分されるのは7つ。今理事官が言われた新宿副都心、池袋副都心、後は渋谷副都心、上野・浅草副都心、錦糸町・亀戸副都心、大崎副都心、臨海副都心です。」

 「なるほどなあ。そんな分け方もあるんだ。敵は、よく日本のことを調べているなあ。あ。東京都内に区切っていいのかね?前の幹は東京の『シンキチ』に拘っていたから、他府県は関係なかったが。」

 「それは考えないでもなかったのですが、7つの都道府県では、大阪以外にももっとEITO支部が必要になります。以前3都市同時攻撃の迎撃もギリギリでした。それと、所謂初戦ですから、割り引いて考えていいと思います。日にちですが、バレンタインデーに絞っていいと思います。今月の1大イベントですから。」

 「バレンタインデーか。明後日だな。時間は?」「イベントで関連付けて考えるしかありません。後は、イベントの絞り込みですね。事件も催しのイベント次第です。」

「了解した。草薙にイベントを探させよう。明日、会議でイベントから類推出来る事件を想定し、迎撃態勢に入る。あれ?大文字君は?」「あ、そのう。お風呂中です。」

 「そうか。じゃあ、伝えといてくれ。会議は午後1時だ。」

 画面が消えると、全裸の伝子が高遠の脚の周りを這っていた。

 「緊張感ないなあ。なあ、伝子。」高遠が言おうとすると、唇を塞がれた。

 この後は『お姫様抱っこ』だな、と高遠は覚悟した。伝子は、妊娠すると、雌の本能を出す時がある。高遠は知っていた。子供が欲しいのだ、と。

 翌日。午後1時。EITO会議室。

 「と言うわけで、アンバサダー。高遠さんの推理に従って絞り込んだイベントが、新宿副都心が都庁の副知事就任式、池袋副都心が東方百貨店のバレンタインデーフェア、渋谷副都心が渋谷スクランブル百貨店のバレンタインデーフェア、上野・浅草副都心が『上野の森美術館』のアトリエ展、錦糸町・亀戸副都心が錦糸町お菓子ビルのバレンタインデーフェア、大崎副都心がふるさと歴史館の展覧会、臨海副都心がテレビ3の正式名決定記念イベントです。テレビ3は、浸透した通称を記念したイベントで客集めですね。」

 「草薙。時間は?」理事官が尋ねると、「バレンタインデーフェアが午前10時開店、展覧会が午前11時開場。テレビ3の式典が午後1時。都庁の副知事就任式も午後1時です。」と、応えた。

 「3つの時間、5つの事件、7つの現場か。時間は、あまり間隔を置いてないな。どうするね?大文字君。」

 「チョコレートの方は、異物混入事件かも知れないし、爆発物関係かも知れない。都庁とテレビは恐らく乱入でしょう。展覧会は器物破損、つまり、芸術品を汚すとか壊すとかでしょうね。展覧会は警察に任せましょう。チョコレートの方は、異物混入事件になるかどうかの見極めや防止は可能かも知れないが、爆発物だと手に負えないかも知れない。異物の方は、DDに手伝って貰って、爆発物になりそうなら、自衛隊の処理班にお願いするというのはどうですか?都庁とテレビは、出来るだけエマージェンシーガールズで対処するとして。」

 「よかろう。DDには連絡してくれるかね、高遠君。」理事官は、傍らのディスプレイに映っている高遠に語りかけた。」「了解しました。」

 「おねえさま。陸自の処理班に連絡をしておくわ。」と、なぎさが言った。

 「おねえさま。展覧会の方は、所轄に連絡をしておくわ。」と、あつこが言った。

 「おねえさま。今回。大阪支部は?」と、みちるが言った。

 「ダメ元で連絡をしておくか。」と、伝子は呟いた。

 翌日。バレンタインデー。午前9時。東方百貨店催事用バックヤード。

検品している店員に交じって、栞と慶子がいた。変な動きをする店員がないか注意しながら、催事課主任の指示通り、商品を移動して行く。

 午前9時。スクランブル百貨店催事用バックヤード。

 検品している店員に交じって、蘭と綾子がいた。変な動きをする店員がないか注意しながら、催事課主任の指示通り、商品を移動して行く。

 午前9時。錦糸町お菓子ビル催事用バックヤード。

 検品している店員に交じって、コウとくるみがいた。変な動きをする店員がないか注意しながら、催事課主任の指示通り、商品を移動して行く。

 午前10時。東方百貨店催事コーナーに陳列を終る栞達。

 開店と同時になだれ込む客達。銃声が鳴り響いた。

 午前10時。スクランブル百貨店催事コーナーに陳列を終る蘭たち。

 開店と同時になだれ込む客達。銃声が鳴り響いた。

 午前10時。錦糸町お菓子ビル催事コーナーに陳列を終るコウ達。

 開店と同時になだれ込む客達。銃声が鳴り響いた。

 午前10時5分。EITOベースゼロ。作戦室に次々と報せが入った。異物混入は無かったが、発砲事件発生。

 午前10時10分。東方百貨店。

 男達2人が、隅に寄った客達に拳銃で脅しをかけた。

 午前10時10分。スクランブル百貨店・

 男達2人が、隅に寄った客達に拳銃で脅しをかけた。

 午前10時10分。錦糸町お菓子ビル。

 男達2人が、隅に寄った客達に拳銃で脅しをかけた。

 午前10時30分。東方百貨店。

 男達2人を中津警部補以下警官隊に引き渡してシューターを回収する増田がいた。

 シューターとは、EITOが開発した、うろこ型の手裏剣であり、先に痺れ薬が塗ってある。

 午前10時30分。スクランブル百貨店。

 男達2人を西部警部補以下警官隊に引き渡してシューターを回収する大町がいた。

 午前10時30分。錦糸町お菓子ビル。

 男達2人を久保田警部補以下警官隊に引き渡してシューターを回収する馬越がいた。

 午前11時。上野の森美術館。

 挙動不審の男を見付けた物部は、男に声をかけた。

 男はバーナーを持ち出した。物部は、すぐにDDバッジを押した。

 橋爪警部補と所轄刑事が警官隊と共に現れ、男を逮捕連行した。

 午前11時。ふるさと歴史館。

 挙動不審の男を見付けた福本が、男に声をかけた。

男は、バッグからペイントスプレーを持ち出した。

 どこからか、スティックが飛んできて、男の脚を絡めて、男は尻餅をついた。

 「ごくろうさん。」と、青山が言うと、駈けてきた愛宕が男に手錠をかけた。警備員達と警官隊がやって来た。

 午後1時。東京都庁。

 都知事エリアのフロア。都知事である御池が、副知事に新しく就任した宮崎駿雄を職員に紹介しようとしたところ、「副知事は預かろうか?」と言いながら、一団を率いた男がなだれ込んで来た。

 フレキシブルドローンが、男達の回りを飛び始めた。フレキシブルドローンとは、 EITOが開発した。AI搭載のドローン3機で、リモコン1機で乱舞飛行を操縦出来る。

操縦していた渡が引っ込むと、早乙女と結城が武器の銃を叩き落としてから、大外刈り、背負い投げ、送り襟締めなどで落とした。

 途中で逃げ出した男達に、渡はペッパーガンを撃った。ペッパーガンとは、EITOが開発した、胡椒を主成分とした丸薬を撃つ銃のことである。

 午後1時、テレビ3。スタジオ9。

 式典に駆けつけた、総理が局長とスポンサーに花束を贈呈した。

 「ちょっと待ったあ!」そう言って、男達はなだれ込んで来た。30人の日本人だった。

 「ヤなこったい!」そう言った伝子の言葉を皮切りに、エマージェンシーガールズは忽ち、男達を殲滅した。

 アナウンサーが再びマイクを取り、式典を続行した。

 すると、局長とスポンサーが、伝子に、持っていた花束を伝子に渡した。

 場内に拍手が巻き起こった。

 伝子は、登場した警官隊を尻目に、エマージェンシーガールズと共に去った。

 今夜はカツカレーがいいかな?と思いながら。

―完―

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