幼馴染が死んだ。後追いしたら死に戻りしたけど、幼馴染とは赤の他人だった。

聲無 零

第1話 プロローグ 1



第1話 プロローグ1

第1話 プロローグ1



はるか…俺もそっちに行くよ。」


 俺はそう呟くと、赤信号の交差点に歩みを進めた。



 どうして俺がこんな事をしたのか、そこから話をしようと思う。


 

 俺には幼馴染が居た。そう…居た・・のだ。

 その幼馴染の名前は川島かわしまはるか

 遥とは、家が隣同士で小さい時からずっと一緒だった。

 最初はただの幼馴染としか思って居なかった。

 歳も同じという事で、幼稚園、小学校と9年間、朝は一緒に行き、帰りは一緒に帰って、どちらかの家で遅くまで遊んだ。

 でも、そんな関係が中学校に入ってから変わってしまった。

 中学校特有の思春期のせいで、遥とはあまり話さなくなってしまった。

 別に喧嘩した訳でも無く、何かした訳でも無かった。

 今思えば、遥と話してる所を、他の人に見られるのが、恥ずかしかったんだと思う。

 こんな状態が続いて、2人とも中学生3年生になった。

 そんなある時、遥が話しかけて来た。



「ねぇ、優羽ゆうは進路どうするの?」

「ん?進路?別に遥には関係無いだろ。」

「そんな言い方しなくても良いじゃない。私達幼馴染なんだから。」

「幼馴染って言ったって最近はろくに話もしなかっただろ。」

「それは!……それは、話しかけようとしても優羽が私を避けるからでしょ!」

「避けてねーよ。自意識過剰なんじゃねーの?」

「優羽のバカ!もう知らない!」

「へいへい、どうせバカですよー。」



 何時もこうだ。遥が話しかけて来ても、内心は嬉しいはずなのに、興味が無いって見栄を、虚勢を、はっちまう。

 そんなこんなで卒業式になった。

 俺達の関係は相変わらずだ。

 卒業式も終わり、さっさと帰ろうと準備をしていると、遥が教室を出て行くのが見えた。

 いつもは友達と居るが今日は1人だった。

 最近話しては無いとは言え、幼馴染だ。

 卒業おめでとう位は言ってやろうとその後を追いかけた。

 何故か遥は下駄箱に行くのでは無く、屋上へ向かっていた。



「屋上へ何の用だ?」



 そう呟きながら扉を開けようと、手を伸ばした瞬間、声が聞こえてきた。



「呼び出してごめんね」

「ううん、それで話って?」

「うん、実は…俺!川島さんの事が好きなんだ!、だから…最後に気持ちを伝えたくて…ここに呼び出したんだ。」


「…え?好き??」

 ズキ…


「遥を?」

 

 ズキズキ…

 

 なんだこの痛みは……


 ポタ…ポタ…ポタポタ…


 え?雨?…な訳ねーか。ここ室内だし。空は青いしな。…そうか……これは涙か。



「あぁ、俺…遥が好きだったのか…」



 そう小さく呟き、遥の答えを聞くこと無く、家に帰った。

 俺は、ようやく自分の気持ちに気が付いた。いや、今までは気が付かない振りをしてた、ただのヘタレだった。


 そして、遥の答えを聞く前に俺はそこをあとにした。

 その後は自宅に帰り、部屋で静かに泣いた。


 外も暗くなってきた頃、家のチャイムが鳴った。

 家には俺しか居ない為、俺が出るべきなんだろうが、今の俺には、そんな気力が無くてチャイムを無視をした。

 しばらく無視してるとチャイムは鳴り止んだ。

 次は携帯が鳴った。

 スマホを手に取ると、そこに表示されていたのは遥の名前だった。

 俺は何時もの調子で電話に出た。



「はいよ、なんか用か?」

『用って訳じゃ無いけど、卒業式の後にクラスの皆で集まるって言ってたのに優羽来なかったから、体調でも悪いのかと思って。』

「別に、気分が乗らなかっただけ。」

『そっか、何も無いなら良いんだけど…』

「用はそれだけか?」

『うん…じゃあね。』



 そうやって切ろうとした遥を俺は引き止めた。



「待って。」

『何?』

「いや、その、卒業おめでとう」

『えへへ、ありがとう。優羽もおめでとう、だね!ダブらなくて良かったね!』

「中学校に留年なんてシステムはねーよ!」

『あはは、それもそっか!』


 そこから俺達はたわいも無い話をした。

 久しぶりに遥のこんなに話が出来て嬉しかった。

 でも、さっきの告白の答えが気になって、時々上の空になってしまう。




『ねぇ、ほんとに大丈夫?』

「ごめん。大丈夫。ちょっと考え事してただけ。」

『考え事?何なに?相談ならのってあげるよ?』

「あー、実はさ、友達の話なんだけどさ、その友達には好きな人が居て、でも、その好きな人が告白されてる場面を目撃したらしくてさ、好きな人の答えを聞くのが怖くて、その続きは聞かなかったらしいんだよね。それで、その答えを聞けなくて、悩んでるってその友達に相談されて、俺もどう言ったら良いか分からなくてな。…何かいいアイデアあるか?」

『……もしかして、今日屋上のドアの前に居たの、優羽?』



 それを来た瞬間、心臓が止まるかと思った。



「…何の話だ?」

『私が告白されてるの見たんでしょ?途中で誰かが走る音が聴こえたから、もしかしたらって。』

「…ごめん、盗み見るつもりは無かったんだ。一言おめでとうって言うつもりで、遥を追いかけたら、たまたま出くわしてさ。ほんとごめん。」

『ううん、別に怒ってないよ。…でもそっか。優羽って私の事好きだったんだね!』

「は?なんでそうなるの?」

『だって、好きな人・・・・が告白されて悩んでたんでしょ?』



 そうだった…忘れてた。バレるとは思わず馬鹿正直に話しちまった。



「別に?好きじゃねーし。友達の話だし」

『そっか、そっか。えへへ、優羽は私が好きなのか…えへへ。』

「だから違うって。」

『はいはい、分かってるって!』

「本当に違うし」

『…私もね、優羽の事好きだよ。ううん、ずっと好きだった。中学に入ってから、話せなくて辛かった時も、ずっとずっと大好きだったよ。』



 それを聞いた俺はほんとうに嬉しかった。

 世界が変わる思いだった。

 だからこそ、気になる事があった。



「じゃあ、さっきの告白は…」

『勿論断ったよ。私には好きな人が居ますって。』

「そっか…良かった…」

『それで優羽は?私の事どう思ってるの?』

「それは…俺も、その、す、すす…」

『す?』

「好き…です。」

『なんだって?』

「だから、俺も遥とが好きだ!」

『うん!知ってる!』

「え?知ってる?なんで?」

『だって、優羽ってば、私の事チラチラずっと見てくるんだもん。流石の私でも気が付くよ。』

「そんなに見てないし」

『照れちゃって、そんな天ノ弱な所も好きなんだけどね』

「…なぁ遥。俺と…付き合ってくれるか?」

『…うん……うん!勿論だよ!』



 そうやって遥は泣いて喜んだ。



 こうして2人は高校生になった。

 実は遥は俺が行く高校を友達経由で調べて同じ高校を受験してくれていた。

 そんな遥のおかげもあって同じ高校に通う事が出来た。

 高校生活でも色々な事があった。

 デートしたり、喧嘩したり、手を繋いだり、キスをしたり。その先だって。

 とにかくいくら時間があっても語り尽くせない物語があった。

 そしてその先の物語人生も2人で紡いで行くと思っていた。

 そう。あの時までは。

 

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幼馴染が死んだ。後追いしたら死に戻りしたけど、幼馴染とは赤の他人だった。 聲無 零 @zeebra3672

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