『評伝:皇直哉 現代の英雄』から抜粋
戦前から続く名家で生を受ける。
父は“スメラギホールディングス”会長、皇
当家独自の教育によって、学力と人間性の両面に亘って優れた人物となり、小学校の時分から、既にリーダーシップの片鱗が見えていたと言う。
2024年に高校卒業後、リーランド・スタンフォード・ジュニア大学入学。同大学経営大学院でMBAを取得する傍ら、トライアスロンの競技者として知られ、肉体強化にも勤しむバイタリティをも見せる。
「実際の戦場の現実を肌で感じたい」という思いを抱き、2028年から3年間従軍。この時の経験が、後に彼の生涯のテーマ、「平和と平等の具体的実現」の芽生えとなる。
2032年、父倶苗の自殺によって、 “スメラギホールディングス”の会長に就任。同年には世界的富豪一族ジューディーの一人、サビーナ・ジューディーと結婚。受け継いだ財と地盤を元手に、更なる富を積み上げ、世界の長者番付にも入る。
特に、2040年に発足した“スメラギ機関”は、社会的・文化的評価も高い。同団体は潤沢な資金によって、世界の貧困層の支援や、多様な分野の研究開発など、資金提供を積極的に行った。人類の技術的進歩を30年は早め、多くの人命を救ったとされる。
数多くの功績を打ち立てた彼だが、成功者の常か、黒い噂や、誇張された毀誉褒貶も多い。
敵対者への容赦ない攻撃や、特定の人間への奴隷扱い、権力財力を笠に着た横暴、癒着や不正、死の商人との繋がりまで。
逆に、闇で暗躍する化け物を狩る、ヒーローだと言う者も居る。
ところが、それらを裏付ける客観的証拠という物は、実は存在しない。ほとんどが風聞、流言飛語の類である。
事実をベースとした上で見れば、不可解な点とは、二つだけ。
彼を狙ったテロ・暗殺未遂事件が、異常な回数起こっていること(因みにこの一環として、妻であるサビーナも喪っている)。
そして、
彼の高校時代、親しかった同級生が、一人失踪していること。
それだけである。
彼は確かに、波瀾万丈な人生を送ったのだろう。
“普通”からは突出した、能力と経歴を持っているだろう。
だが、他の誰とも同じ、単なる一人の人間に過ぎない。
彼だけが特別、という認識は、思考の停止である。
「選ばれし救世主」、或いは「史上最も巧妙な悪魔」と呼ばれた男。実際の所、どういった人物であるのか。
本書は資料や証言などの記録を基に、その素顔に迫っていくと共に——
(以下略)
(そして)
(暴王に楽土無し~Nero can't reach Heaven~ おわり)
暴王に楽土無し~Nero can't reach Heaven~ @D-S-L
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