第31話 夢うつつ
「いらっしゃいませ!こちら銀河商会王都第二店舗!古今東西あらゆる品を.....はて。」
「あぁすまないが寄らせてもらったよ。」
身分証を見せる。
「『マカファストの者』だ。」
顔は割れてるはずだから大丈夫だと思うが。
「あぁ.....確かにこちらの者と面会の約束がありましたね。失礼しました。暫しお待ちを。」
裏へ消えていく。少しして少し小太りの男が出てきた。
「へへへ.....さぁ、お待ちしておりました。さぁどうぞこちらへ。」
案内されるまま進んでいく部屋に入り席に座ったところで相手が切り出した。
「
「襲われたから授業料をふんだくった。」
「凄いお方だ。では私もそろそろこれを脱がせていただいてもよろしいでしょうか。」
「なるほど。やっぱり君か。」
そうフッと笑った後、相手は肩を掴んで引っ張り体についていた物を剥いだ。
「いつ見ても見事な擬態と言うか変装だよ、従者の少年.....に意見を求めようにもそっちにも使っているのか。」
「見事な観察眼恐れ入ります。」
小太りな男の影は既になく、健康的な肉体を持った青年は言う。
「私としてはたとえ役であろうとも彼の従者というのは気に入らないのですがね。」
そう文句をたれながら従者の少年は顔を剥いでから足からも剥ぐ。そうすると天井に着くんじゃないかという程の大男が現れた。
「まぁそう言うなビッテンフェルト。ポプランの擬態能力は凄いものじゃないか。」
「身長さえも自由に変更出来るのはつい最近の事ですけどね.....2mの巨体のビッテンフェルトを1.4mまで縮めるのは流石に力を使いましたが。」
「まったく、小太りの代表と従者の少年では役者が逆だろう。」
喧嘩するほど仲が良い、か。幹部同士ギスギスしていないのは良い事だ。
「とは言えそちらの口喧嘩にいつまでも付き合ってられんのでな。傷がどうも深いものでな。」
ズボンを膝まで捲ってからスーツとシャツも胸までたくし上げる。
「こんな感じでひでぇんだ。開発部に寄ろうと思って来たわけなんだよ。」
「なるほど.....では参りましょうか。」
「あぁ、ビッテンフェルトはどうする?本来の用はまさか私に会うためではあるまい。」
「はい、私はこれで。」
「うむ、あぁそうだ。」
丁度良いから言っておくか。
「ロイエンタールに伝えておけ。トーナメントが終わった後の楽しみくらいは残しておいてくれと。すまないなビッテンフェルト。連絡係に使ってしまって。」
「いえいえこちらこそ。また近いうちに。」
「あぁ近いうちに。」
好青年だな。言っても確か高校一年生か二年生ほどだったかな。最近の若者はしっかりしているねと.....
「やあ主任。」
「.....もう驚きませんよ。身体の修復ですね。」
「都合よく話が早くて助かる。」
「そりゃ試合見てますからね.....」
大変な仕事だな。
「思ったよりも酷いですね.....」
傷口を服をまくって見せたところそう言われてしまった。なんだ不吉だ。
「まぁ治せないものでもありませんので.....多少時間がかかりますが。」
「如何ほどだ。」
「二十数分。」
多少の時間で本当に多少なのは久しぶりだな。
「ではこのベッドの上に横になってください。」
「うむ。」
どんな施術をするのだろうか。
「おーいシュタリン。セットD2を持ってきてくれ。」
「はい。ただいま!」
あの声は.....前に鎧を持ってきてくれた見習い係君か。
「うん。ありがとうね.....」
「まるで仲睦まじい姉弟のようだな。」
「そうですか?」
「あぁ、私に姉はいないが友人たちにはいる人数の方が多いんだ。」
「なるほど.....」
一応俺皇帝なんだけど.....いや、そんなつまらない話をする俺の方に問題があると言われれば何一つ言い返す言葉などないんだが。
「ではお注射失礼します。」
「あぁ。」
横にならせてからまた立たせるのか。仕方ないなよっこらせ。
「あ、身体を起こさなくても大丈夫です。」
「そうなのね。」
それ大丈夫なのかねとも思うが先入観に囚われてはいけないいけない。
「麻酔か。」
「はい。」
手術がそんなに早く終わるのか。
「じゃあ二十分後に。」
「はい。」
そして俺の意識は消えていった。
「ん.....ここは.....」
「お目覚めになされましたか。」
「成功.....でいいのかな主任さん。」
「はい勿論。」
「ならばよかった。」
しかし.....綺麗に傷口が塞がってやがる。すげぇ技術だぜ。というか吹っ飛んだ肉まで治ってるのはどういう.....あぁ手を盛った時と同じ要領か。当たり前のように技術革新が恐ろしいほど早いぜ。
「顔なども整えておきましたので。」
「良い仕事するぜまったく。」
手鏡で見ながら感嘆する。なかなか好青年じゃないの。うんうん.....しかしまぁ今までを思い出すと恥ずかしいことばかりしているな。ファヴィアス君との出会いも.....あれ?待てよ。ファヴィアスだっけファビアスだっけ。今度聞いておこう。いやそうじゃないそうじゃない。出会い自体が大人気ない大人の子供同士の喧嘩への介入な訳で.....たしかに見過ごさなかったのは褒めよう。そこは素直に自分を称賛しよう。問題はそのまとめ方であって大人気なーい方法じゃないの。考えてもみなさいよ。揉めてる最中に手を掴んで止めたんだゼ。今更そんなことよく素面で出来たものだよ。前に考えた精神が体に引っ張られてきているというのも益々信憑性が増してきやがったな。認めたくないんだが。
「まぁこれも運の無さか.....」
「何か?」
「いや。どうってことは無いよ。しかしそろそろトーナメントを中止させる手筈を整えておかないとな.....まぁロイエンタールからの連絡待ちだな。」
まぁ流石にトップの言葉を忘れないと思うが大丈夫だろうなビッテンフェルト。
「さてと。」
服のポケットから取り出した包帯の様に小さくまとめた物を頭から顔に巻いていく。
「これで完成。青年紳士くーん。」
再利用可能な変装だな環境配慮配慮っと。
「この顔、記録しておいてくれ。」
「了解致しました。」
見習い君の持ってきてくれた紳士服を着て準備完了。さぁ.....何しようかな。
「しかし
「そうか?」
「えぇ、入学式では第二皇子を倒され。」
「まぁ成り行きでな。賭けに勝ったのか負けたのか分からないが。」
「部活動見学会では二年も上の先輩を華麗な立ち回りで圧倒し。」
「あれは陳腐な戦いだ。私が観客ならまず『こんなもの見た時間を返しやがれー!』と叫んでやるな。技巧もクソッたれも無い馬鹿馬鹿しい戦いさ。まったくあれ程つまらない闘いを残りの試合でする事が無いと良いのだが。」
「そうですか。」
やや苦笑気味にリアクションする。ちょっとばかし情熱的になりすぎたかな?
「だが確かに君の言う通り私は学生というものを楽しんでいるさ。人生に数年しか学生の時間は無いからな。」
まぁ人生いつまでも学徒くらいでも良いんだが.....勿論モノによるが。というか俺そのものが例外なんだけどね.....
「じゃ、ここに来る前に宿取っておいたからそこで過ごしてるよ。これ、住所。何かあったらこの宿の十四号室に来てくれとも伝えておいてくれ。色々多くてすまないな。」
住所を記した紙きれを渡して出口へ歩き出す。
「では、またのご来店を。」
「おや、そんなジョークも言うんだね。」
「こ、これは失礼を!」
「いや、寧ろそれで良い。それはそうとして非魔道具の彼とはよろしくやってるのかい?」
「か、
「ははは、許せ冗談だ。また会おう。」
そう言って部屋を出た。
「迷った。」
そうだ失念していたこの地下空間広いんだ。うーん困ったぞ。誰か人に会えれば良いんだが.....ん。コツコツと誰かの足音が!やったあ助かった!
「す、すみません。」
「は、はい。」
「いやあ迷っちゃって。開発部の方から来たのですが出口はどこでしょうか。」
「はぁ.....あのすいませんその服マカファストの....」
あ、そりゃそうだよね。疑うよね。トップシークレットエリアに外部の人間来てるんだもの。
「あ、これ変装変装。襲ってきたから奪い取ったの。ごめんね紛らわしくて。」
「はぁ.....」
呆れてるって顔だな。まぁ良いさいい年こいて迷子になってるだもん。
「まぁ可哀そうですし案内してあげますよ。」
「いやぁ地獄で仏ですよまったく。ありがとうございます。」
そういって俺はこの親切なお方に案内されながら帰路につけるようになった。
「ではここで。」
地上の階に出たところで親切なお方と話していた。
「いやぁなんと感謝したら良いか。」
「良いですよ。ポプラン様のお客様でしょう。」
「えぇまぁ.....」
なんで分かった.....まぁそっかここによくいるもんね彼。
「私、ポプラン様の秘書を務めさせて頂いております。ヤックリングと申します。」
「はぁヤックリングさんですか.....良い名ですね。」
「ありがとうございます。では私はこれで。」
「えぇまた会いましょう。」
有能そうなの持ってるなあいつ。ずるいぞ。性別.....はどっちだあれ?男とも女とも言えぬ独特な雰囲気の持ち主だったが.....中性ってやつだろうか。いや俺が勝手に外から見て判断しているだけで実際はちゃんとあるのだろうし今度また会った時にでも確認すればそれで良いだろう。さて.....ちょっくら買い物しようか。必要な品物揃えてから宿に行こう。金はあるからな。
銀英伝好きの俺(46)が異世界転生したのでとりあえず革命起こす。 村上一閃 @s20116255
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