乙女論

唯野木めい@休止中

表・エッセイ編

一途論

 乙女ゲーム、というか恋愛アドベンチャー系のゲームをプレイしたことがある方なら誰でも経験したことがあるんじゃないでしょうか、この問題。


「なんか浮気してる気がする!!!」現象。


 その名の通り、理想の人が見つかっちゃって前に進めない/次のキャラとのお話に集中できない、大変厄介な現象です。みなさんありませんか?私はよくあります。人が死ぬ系の乙女ゲームにずぶずぶとハマってかれこれ3年(?)、完走したゲームが1本しかないくらいには。


 なんなんでしょうかね、この現象。前に攻略した子が好きすぎるっていうか、絶対ヒロインちゃんは彼とくっつかなきゃダメだー!!って思っちゃって、次の子攻略してるとき、ふと脳裏に前の子がチラついちゃうんです。それに、別に焦点を当てるキャラが変わっただけで、次の子ルートに入っても、前の子がふつうにでてきますから。そこで、ヒロインちゃんが「私はA君(今攻略中の子)のために頑張りたいの!」→B君(前の攻略対象)「頑張れよ」(肩ポン)とか言われちゃうと、あ゛〜〜〜〜!!ごめんねえ!君のこと大好きだよ!!うう(涙目)……ってなるのです。B君が主人公の幼馴染とかだと特にね。君がヒロインちゃんのことずっと前から好きだったのおねーさん知ってるから!知ってるから!と、暴れる悶える。画面の前で、のたうち回る、女子高生。


 もう一つ厄介な問題を。


 乙女ゲームプレイヤーさんにはわかると思うんですが、乙女ゲームには攻略制限がかかってる攻略対象がいることが多々あります。私が大好きなブランド、オトメイトさんとかは攻略制限かかってる人がいない作品は珍しいんじゃないかしら。


 で、補足しますと、攻略制限っていうのは、ある特定のキャラクターだったり、誰でもいいから前にひとりクリアしないと選べなかったりする、まあ、端的に言えば1周目で攻略不可な人たちです。大体物語の核心部分を担ってます。


 この、攻略制限かかってる人たちがまた、もうカッコいいんですよ。物語の中心にいるから必然的に話もデカくなるし、長くなるし。メインヒーローが多いですが、メインヒーローじゃない人がかかってるパターンもあります。人数も1人とは限りません。私がやった中だとピオフィ、カラマリあたりがそうですね。そして、この、「攻略制限かかってるけどメインヒーローじゃない男」、これが厄介ものです。


 メインヒーローじゃない、ということはみんながハッピーになれる大団円には決してならないんですよ。(なる作品もあるかもしれないけど)。そこがたまらなく良い。程よいビターさ、やるせなさ、ヒロインたちは幸せだけどまわりはどう?っていう仄暗さが残ってるのが素晴らしい。控えめに言って、その作品の中で最推しのルートになること間違いない。それに4番目の男たちには闇深いおにーさんが多い気がする。そういうの、好き。偏見だけど。


 だからこそ、また「なんか浮気してる現象」同様、前に進めないのです。名付けて、「4番目の男に気をつけろ」現象。なぜ4番目かって?乙女ゲームは大体ヒロイン+5人編成で、攻略制限ズ(もしくはそれに値する、重大なネタバレを含むので最後に攻略した方がいい人たち)が2人いるから。


 どうしたものだ、全く困りました。4週目ともなると物語全体の事件も大体わかってくる。なんなら事件も犠牲は大きいけど一応解決している。4番目の彼はビジュアルが他の誰よりもかっこいいし、ヒロインちゃんも他のルートより成長している気がする……。残るはメインヒーローだけど……だけど……。


 ……別にこれでいい、いや、このエンディングが最適解なのでは?


 そういうわけで、私は乙女ゲームを10本以上やってきて、未だに結末を見た話がひとつしかありません。メインヒーローとの正統派の恋愛も、真エンドも、壮大な世界のカラクリも、華麗な伏線回収も、メインヒーロールートでの推しの活躍も、先にプレイしたお姉様方のネタバレ感想も、全部知らなくていい。ファンディスクだって遊べなくていい。だって、ヒロインちゃんの、私の心は永遠に4番目の彼のものだから。彼と私とヒロインちゃんとの思い出は、心とアプリの中に閉じ込めて、そこでおしまい。


 その点最後までできたカラマリは特別で、柳さんは私にとって永遠のヒーローなのかもしれません。


 次回予告『長髪論』。つまるところ、私は貴方の髪を煎じて飲みたいのです。(*からぷり時代に書いた『なんなら貴方の髪を煎じて飲みたい』の改稿版になります。)

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