第六話「終幕」

―――――――――――――――――――――――――


「それじゃあ、改めて話をしようか、町長」


 周囲はすでに、町長の部屋に戻っており、目の前には、狼男ではなく先ほどまで執務をしていた白髪の初老の男性が座っていた。


 「そうですね、私の問題もどうやら乗り越えられてしまったようですし、そろそろ終わりにしましょうか...」


 「ああ、あんたがたとえ、闇に飲まれて、感情に流され行ったことであったとしてもやってしまったことに変わりはないし、その思いが少しでもあったことに変わりはない、その罪滅ぼしを行わないといけないわけだな」


 「そうですね、私の心にそういった思いがあったのは事実ですし、行ったことに対してきちんと罪滅ぼしをしないといけないことはわかっています。しかし、この町の現状として、どのように改善したらいいのか...まったくわかっていないのです...」


 「おいおい、あんたそれでも町長かよ、これまであの町を支えて作り上げたんだろ、そして急激にあの町は変わってしまった、それだけじゃないか、町が急に変わった、だが町を作ったのは町の人とあんただろ、だったらもう少し町の連中を信じてみてもいんじゃないか?」


 「あんたがああなったのも人を信じていなかったからなんだろ、だからこそ、町のやつらを信じてもいいんじゃないか?とは思うね」


 「なるほど、しかしどのようにすればよろしいのでしょうか?」


 「は?、いやいやそこまでは知らないよ、ただ言えることは急に豹変してしまったのは、あの黒いやつでしかない、それにお前の心が弱かったこと、それだけだ本当の気持ちをそのまま町の人間に伝えたらいいんじゃないか?どんな方法であっても」


 「それもそうですね、こういったことは私が考えながら、行動しないとだめですよね」


 「問題も解決したことだし、1つ早急に解決してほしいことがあるのだが、大丈夫そうか?」


 「ええ、なんなりとおしゃってください、問題を解決できたのも、あなたたちのおかげですので...」


 「それじゃあ遠慮なく言わせていただくけど、狩人の両親の解放これだけ、優先的にやってほしい」


 「わかりました、というよりも、そもそも、多くの人たちを開放しない限り私の恨みは晴れないでしょうから全員解放するつもりでしたが優先的に狩人の親から解放していきましょう。」


 「お願いします。」


 「それでは、私達もしないといけないことがありますので、これで失礼します。」


 「後の問題解決はそちらの話なので、頑張ってください、それでは」


 

 カイトはソファーから立ち上がり、そそくさと何も言わず町長の部屋をあとにした。


 バタンッ!


 「これでこの町も大丈夫だろう、はぁ...やっと長い旅がひと段落つくな。」


 「そうね、これであとは狩人と協力して二人をどうにかすれば解決ね。」


 「何とか解決できるといいんだが...」


 「それじゃあ改めて狩人の家に行きますか」


 「ええそうね」


 2人は町長の家を後にし、改めて狩人の家を目指す。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 トントン!


 狩人の家に到着し、扉をノックする。


 「すみませーん、狩人さんいらっしゃいますか。」


 「どうぞ、開いてるよ」


 その言葉を聞き、カイトたちは扉から少し離れ待っていると、

 キィィという音ともに扉が開かれ目の前には緑のマントを被った狩人の姿があった。


 「狩人、お前の問題は解決して来たぞ、これでお前は俺たちにきちんと協力してもらうけどいいよな?」


 「もちろん、おまえが脅されていたものについて解決してきたからしばらくすれば戻ってくるはずだ」


 「そうなのか、それはよかった...本当に良かった。」


 「まぁなんだ、長そうな話だし一旦家に入ってくれ。」


 「ああ、そうさせてもらう。」


 本日二回目となる狩人の家をにお邪魔し、

 今後の方針を狩人の家で話すカイト達と狩人の3人。


 「それで、おまえに協力してほしいことなんだが、

  まず、お前の依頼にあった通り、狼男を殺してくれ、それだけでいい」


 「本当にそれだけでいいのか?」


 「ああ、それだけでいい、他のことはこちらでやっておく、

  それ以外のことは考えなくていい」


 「わかった、そちらのほうが狩人としての力を発揮できると思う。」


 「それで追加になってしまうんだが殺すのは赤ずきんの家で殺してくれ。

  これだけは守ってくれないとこの問題をきちんと片付けることができなくなってしまうからな。」


 「了解した。」


 「あとこれは狼男を殺すときに使う弾なんだが...」



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 しばらくの時間が経ち、カイトたちと狩人の打合せが終了し、

 残すは狼男と赤ずきんとの打合せを行うため、狩人の家を後にした。


 「まずは狼男から仕込むとするか」


 まず、狼男の巣穴に戻ったカイトたち2人


 「お~い、今いるか~」


 周囲を見渡してみても、本棚や調理台、椅子や机といった調度品はあるものの、

 家主がどこにも見当たらなかった...


「すまない、少し狩りに出ていた」


「うおっ!」


(別に急に後ろから話しかけられたからびっ...驚いたわけじゃないぞ、

 部屋にいないのに焦っただけだからこれは)


「バカやろう、どこにってたんだよ。」


「おまえの家に来てみたら、もぬけの殻だったからまさかもう殺されたのかと思って焦ったじゃねぇか。」


「それはすまないことをした。」


「いや、それに関してはもう済んだことだ、それよりも赤ずきんと狩人、

 それぞれの家に行ってきた、その報告と今後の方針ついて話がしたい。

 家に入ってもいいか?」


「ああ、なにもないところだが、中で話そうか。」


狼男の巣穴のなかに入り、改めて狼男と対面で座りあう3人。


「まず、赤ずきんと狩人についてから話していくな。

 結果から言えば、きちんと赤ずきんと狩人に接触することができた。」


「赤ずきんとはおまえとの馴れ初めの話をしてもらった、

 そしてこの作戦に協力をしてもらえることになった、

 赤ずきんの話はこんなところだな。」


「そして狩人だが、こちらも何とか問題を解決して、どうにかなった、

 きちんと作戦も伝えてきた。」


「そして、今まで感じていた黒いやつについて元凶をどうにかすることができたため、あとはお前たちの問題だけとなった。」


「その問題を解決したら本当に終了ということだな。」


「そうなのか、何だか寂しいが、そういうものなんだろな、

 お前たちが旅の者と名乗っていた以上はこうなることはわかっていたからな。」


「最後に作戦のことだが、狼男、お前が死ぬ場所は決まっている、赤ずきんの家だ...」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「さてと、赤ずきんのところに向かうか。」


「これで本当の最後になってしまうのね、毎回のことだけど寂しくなってしまうわね。」


「分からなくもないがな、作品を通して、多くの人間に触れてきたんだそりゃ感情に働きかけるのもわかるが、あくまでこれは決まった物語に起こった不具合を直しに来ただけだ、それ以降はそれ以上でも以下でもない、何も変わらないんだよ決して、変えちゃいけないことなんだよ。」


「それもそうね...」


「さてと着いたな。」


 狼男の巣穴から移動し、赤ずきんのいえに向かう途中の道でそんな会話をしながら歩いていると、ようやく赤ずきんの家にたどり着く。


トントン...


「赤ずきんいるか?」


「は~い、今開けますね~」


「どうぞ、中に入ってください。」


「それでは失礼して、おじゃまします」


カイト達は家に入り、3人は椅子に座る。


「じゃあ、結論から言っていこう、まず狩人との会話は何とかうまくいった。

 そして町自体の問題も何とかしてきた、というよりも町の問題を解決しないと狩人と交渉することができなかった。

 そして町の問題はやはりというか、赤ずきんが抱えていたのと同じように、黒いやつの仕業だった。その始末をつけてきたていう感じだな。」


「あとは狼男と赤ずきん、狩人の問題だけになったわけだ。

 だが肝心なのはこれからのことだ、これから話す作戦がきちんと回らないと俺らの旅を終えることができない。」


「分かりました、ではその作戦を教えてください。」


「案外と素直に受け入れるんだな。」


「そうですね、たしかに急に作戦とか旅の話とか聞きたいことは多いですけど、これまでの話でなんとなく分かっていたので納得してしまいました。」


「赤ずきん、おまえは素直すぎるな、だがその素直さが今はありがたい。」


「じゃあ、まず作戦についてだが、結論から話していく、まず、赤ずきんのおばあさんと赤ずきんお前は狼男に食べられてもらう」


「そしてその食べた狼男が狩人によって殺される、ただそれだけだ」


バン!


「ちょっと待ってください!」


静まり返った空気の中で一つの大きな音が部屋中に鳴り響いた。


「それってつまり、狼さんは死んでしまうということなんですか!」


「意外と怒るんだな赤ずきんでも」


「そりゃ...怒りますよ...だって...」


「それより話ずらさないでください」


「それはすまない、だがさっき話した通りだ、狼男はお前たち二人を食べて狩人に殺される、ただそれだけなんだよ」


「だからどうして狼さんがいなくならないといけないんですか!」


「まぁ落ち着け、話は最後まで聞いてくれ」


「まず、狼男が死ぬのは...」



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「作戦についてはなんとなくわかりました、じゃあ信じてますね、魔法使いさん」


(ああ、その笑顔で終わってくれたらいい)


ガシッ!


(いてぇ)


足元ではヒナタの足がカイトの足の上から押し付けられていた


(フン!)


「何かしら?」


「いやいや、うそでしょ...」


「なんのことかしら?まったく知らないわね。」


「はぁ...」


「じゃあ明日は頼んだぞ、俺たちは昨日寝た部屋にいるから。」


「はい、任せてください!」


「それでは私は部屋に戻りますね。」


そして、作戦会議が終わり、赤ずきんは席から立ち自分の部屋に戻る。



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作戦決行日


この森には狼男と呼ばれるもの、赤ずきんを被った少女、その少女の祖母がこの森で暮らしていた。


赤ずきんを被った少女は定期的におばあちゃんのお見舞いに来ている。


そのお見舞いの日はちょうど今日である。


狼男と呼ばれる男の姿は茶色の毛で覆われており、顔はまさしく狼のように似た顔つきをしている。


手足も犬に近い状態になっている。そして狼と違う点は2足歩行で歩いているという点である。


その狼男は赤ずきんがいない時間をずっと待っていた。


いままで何度も外から赤ずきんが訪れない時間を確かめながら、計画を練っていた。


その決行日がついに来た。


今日こそあのおばあさんを食べて赤ずきんも一緒に食べるつもりでいた。


そして、狼男はログハウスのようなに丸太等を用いて作られた家の前までやってきた、そこがおばあさんの家であり、この時間はまだ赤ずきんが来ないこともわかっていた。


狼男は居ないことを確認し、家の中に入っていく。


家の中に入り、おばさんがいる部屋の方へと向かい、ゆっくりと扉を開いていく。


キィィィ...


少し音を立てたもののその音でおばあさんが起きることはなかった、すやすやと音を立てずベットの上で寝むり続けていた。


そして、狼男はそのままおばあさんが寝ているベットのそばまで行き...そのままおばあさんを抱えて持ち上げ、頭から丸ごと飲み込んだ。



...しばらくしておばさんの扉からノックする音がする。


「おばあちゃん、今日もお見舞いに来たの、入るね」


そういって毎回のようにおばあちゃんの家の中に入る赤ずきん。


しかしいつも家の雰囲気が違う、本当に何となくだが、赤ずきんは違和感に感じた。


その違和感に関してあまり気にせず、いつものようにおばあちゃんが待つ部屋に向かった。


おばあちゃんが待つ部屋の扉のところまできてさらに違和感を感じた。

それは少し扉が開いていることだった。


いつもきちんと閉まっているのを確認してから帰るようにしているのに、今日に限っては少し開いていた。


扉の目の前まで来て、違和感に気づいた赤ずきんはゆっくりと扉をあけながらおばあちゃんが待つ部屋の中に入っていった...


部屋に入るといつもおばちゃんが寝ているベットの上にはいつも被っている帽子を深く被り、布団も顔が隠れるまで覆っているおばあちゃんが寝ていた。


少しホットした赤ずきんであった。

 

 「あれ、おばあちゃん今日もしかして一人でどこか行ってたの?扉が少し開いていたから驚いちゃった。」


とおばあちゃんに聞くとおばあちゃんは


 「そうなんだよ少し車いすに何とか乗って少し出ていたんだよ、すまないねぇ」


 「そんなことないよ、今度、どこかに行きたいときは私がいたらどこにでも連れて行ってあげるからね。」


「ありがとねぇ、もう少しこちらに来てくれるかねぇ、少しお前さんの声が聞き取りにくくてねぇ」


「分かったわ」


と言って赤ずきんはおばあちゃんのベットの傍まで寄っていく。


その時、おばあちゃんが急に起き上がり、傍まで寄ってきた赤ずきんを頭から丸ごと食べたのであった。


そして、赤ずきんを丸呑み終えるとそこに残ったのは静寂のみであった。



...しばらくしてまた外の扉がノックされる音がした。


「急に雨が降ってしまって、少しの間でいいから休ませてくれないだろうか。」


(だれもいないのか)


と緑のマントを被り背中には猟銃を構えた男が扉に手をかけた時であった、閉まっているのかと思い、手にかけてみるとゆっくりと扉が開いたため、悪いとおもいつつも家の中に入っていく。


「失礼します。」


緑のマントを被った男が家の中を見回してみるとそこには誰もいなかった...


「誰かいませんか。」


と家主がいるの前提で声をかけてみた、しかし、その声に答えるものは誰もいなかった。


ただただ、静寂のみがかえって来たのであった。


ふと、改めて周りを見て見ると少し扉が開いている部屋があるのを見つける。

扉が開いていることに何も疑問に思わなかったものの、おそらく家主がそこにいるのであろうと思い、扉が少し開いている部屋に向かって歩いていく。


扉の前まで行き、部屋の中を見てみると部屋の中は少し暗く、毛布があからさまに盛り上がっていた。

盛り上がった毛布の隙間や少し見える顔は毛で覆われているように見え、そこで疑問に思い、近づいてみるとそいつは眠っていた。


思い切りよく盛り上がった部分の毛布をはがしてみると、そこにあったのは...


茶色の毛で全身が覆われ、手足は犬のような形を狼男であった。


それを見た男は絶句した、まさかこいつが家主を丸呑みをしたのか、いったい何人食べればここまで大きくなのかと。

そして先ほどの行動で目を覚ましてしまったのではないかと思ったが、実際はそんなことなくぐっすりと眠っていた。


(おそらく食べ過ぎて眠ってしまったのだろう)


男は背中に担いでいた猟銃を手に持ち、引き金を引き、狼男の頭にめがけて弾丸を撃ち放った。



バーーーーーーン!!



という空気を裂くような銃声とともに狼男のそばにより、狼男の脈を図り、息をしていないことを確認する。


そして持っていたサバイバルナイフを用いて、血が飛び散らないようにお腹を裂いていくと、裂け切ったお腹の中にいたのは案の定この家の家主らしき、おばあさんとその孫であろう、赤ずきんを被った少女で眠っていた。


こうして赤ずきんとおばあさんを救った狩人は救ってもらったお礼として、3人は仲良く夕飯を食べたのであった。


こうしてこの物語は終了した。


閉幕である......




.....


「お疲れ様だ、ようやく作成は終了した。」


「あとはこのお腹を抜糸すれば何とかなるだろう」


「あとは任せた」


「ええ、『ソーイング』発動」


狼男の裂かれたお腹が、見えない糸で縫われていく、さらに縫われた部分はまるで裂かれた跡がほとんどないように見え、すっかり元に戻っていた。


「これであとは、しばらくしたら狼男も戻るはずよ。」


「ありがとうヒナタ、それじゃあ、これですべての問題を解決したな。」


「もう、これでお前たちはまたどこかに行ってしまうんだな。」


「そういうことだ、じゃあな。」


「お別れなんですね...寂しいものです...」


「そういってもなぁ俺たちはまだしないといけないことがあるから仕方がないんだ。」


「そうですよね......」


「寂しいと思うが、仕方がない割り切ってくれ。」


「はい、寂しいですが、何とか頑張っていきますね!」


そういった赤ずきんは寂しそうであり、涙を少し流しながらも笑顔であった。


ゲシッ!


(いてぇっての!)


..........


(なにも言わないのかよ...)


「それじゃあ、本当にこれで最後だ、じゃあな。」


「さようなら。」


「ええ、さようならです!」


「じゃあな。」


そういってカイトたち2人は赤ずきんの家を出て、森の方へと向かっていく。


「『イグジット』発動」


2人の体を白い光が包み込み、白く包んだ光は体ごとはるか上空に飛ばしていくのであった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




ポンッ!


バタン!


瓶のコルクを抜いた時のような音がした後、本が落ちる音がした。


音がしたとき、男女の二人が立っていた。


「ふぅ、何とかまた一冊解決したわけだが...長かったな...」


「そうね、やはりというべきかしら、長くなってしまったわね。」


「そうだな、やっぱりこういうことしてるとあの黒いやつが毎回関わっているのをどうにかしないといけないのが面倒だよな~」


「仕方がないでしょ、それが仕事なんだから。」


「はぁ...それはそうなんだけどな...」


「さてと、終わったことだし、そろそろ出るか。」


「そうね、今日も結構やったことだし、出ましょうか。」


2人は、周囲を本棚で埋められた場所で唯一ある白い扉に向かって、歩き出す。




こうして今回の修正の旅はまた一つ終わった。


だが彼らの修正の旅はまだまだ続く...






                  第一章 -完-

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