第五話 「闇」

 (じゃあさっそく情報収取と行きますかと思ったが人が少ないからまずはそこら辺いいる人に聞くとするか。)


 「すみません、近くに酒場とかあったりしますか?」

 「あ?なんだてめぇ若いのにそんなとこに何か用があるのか?」

 「ええ、まぁ少し人を探してまして、今はその人の情報集めているところなんですよ」

 「へへ、そうかいじゃあなにか置いていきな」

 「先にどこにあるか教えてくれませんか?」

 「あ?置けって言ってるだろ!」


 男がカイトに向かってこぶしを振り上げ、殴りかかろうとしてきていた。


 「『チェイン』発動『フレイム』発動」


殴りかかろうとしている男のこぶしがカイトの目の前で急に動かなくなり、そしてカイトの右手には炎が現れた。


 「な、なにがどうなってやがる」

 「少し拘束させてもらった、そしてここに炎があるんだがどうなるかわかるか?この炎は本物だ、この通り」


 カイトは近くに落ちている葉っぱに炎を近づけるとボッという音を立て燃えて消えた。


 「これで本物であることが分かっただろ、そしてこの炎はこうやって」


 カイトは右手の炎をジリジリと男の顔に近づける


 「人は、水分が蒸発して喉がつぶれて、体は油で塗られているも同然のため良く燃えるらしいが実際はそうなるんだろうな」

 「さぁどこに酒場はあるんだ?」

 「ヒィィィわ、わかったいう、いうからまずは炎を静めてくれ、頼む!」

 「まずはどこにあるか言ってもらわないとだな」

 「わ、わかった言う、酒場はここの横にある路地をまっすぐに行き突き当りを左に行ったら酒場がある」

「そうか、ありがとよ」


 カイトの右手にあった炎は消え、男は膝から崩れてた。


 「さてと、ここか」


 石で作られた壁の路地を潜り抜け、男が言っていた酒場までたどり着いたカイト


 「入るか」


 キィィ

 

 扉を開けて酒場の中に入ってみると、酒場にいる人の目線が一斉にこちらに向く。

 

 ざわざわ、ざわざわ


 カイトはカウンターのところまで行き


 「すまないこの町に狩人がいると思うんだが、どこに住んでいるか知っているか?」

 「いきなりだな、どうしてそいつを探しているんだ?」

 「すこしそいつに依頼したいことがあってね家を探しているんだよ」

 「そうかい、だったらさっさとここから消えた方がいいよ。」


 ガタッ、ガタッ、


 周囲に座っていた人たちが一斉に立ち上がる。


 「おいおいどうしてそうなるんだよ『チェイン』発動」


 両手を扇状に左右に振り、手の向けられた人の足元から赤い鎖が延び、客たちの足から腕まで絡まっていき、拘束させた。


 「はぁ、まったく、想定通りの動きしないでくれ」 


 「で、どこにいるんだ?」

 「ああ、これは驚いたものだ、あんた何者だ?」

 「ただの旅人だ、言っただろその狩人に依頼があるだけだと、それ以外は特に用事がないからさっさと教えてほしいんだが」

 「そうだったな、いいだろう教えよう、狩人の家はここから出て左を見てまっすぐに突き進んでいき目の前に家が現れたらそこが狩人の家だ」

 「そうか、ありがとう」


 ガタッガタッ


 鎖で縛られていた客が一斉に膝から崩れ落ちる。


 カイトは酒場の扉を開けて待ち合わせの場所へと向かうのであった。


――――――――――――――――――――


 「遅かったわね」

 「すまない、だが情報は手に入った」

 「そう、それはよかったわ、でどこにあったの?」

 「まぁついてきてくれたら大丈夫だ」

 「そう、わかったわ」


――――――――――――――――――――


 カイトたち二人は狩人の家の前まで来た。


 カイトたちの前には狩人に家があり、その見た目はまさしく、町の隅にあるゆえか、日光が少しばかり当たるのみ、家の壁や屋根にはコケや蔦が絡んでいる状態だった。


 (ドアも少しガタが来ているのか少しずれている気がする。)


 「はぁ・・・本当にここにいるの・・・」

 「まぁいいんじゃないか?酒場で手に入れた情報だし間違いがあったらそれこそまた酒場に行けばいいだけだしな」


 トントントン


 「誰かいませんか?」


 トントントン...


 「反応がないな...」

 「そうね」

 「悪い気もするが入ってみるか...」

 「そうしましょうか」


 カイトは扉に手を掛けると少し扉が動いた。


 (不用心だな)


 キキィィという音を立ててながら扉を開けていく。

 

 中は薄暗く、外から見ていた通り光も少ないため中はほとんど見えない状態であったが、だんだんと目が慣れ始め、周囲を見渡してみると木製のテーブル、椅子、暖炉、とキッチンと1Kの部屋のような構造をしていた。

 部屋の片隅、ベットの上で黒く丸まっている何かがいた。


 「お~い、そこにいるんだろ起きてくれ」


 ベッドの上にいる黒く丸まっているものがモゾモゾと動き出した。


 「だ、誰だい・・・まさか、町長か!・・・いや、その声と足音的に町長じゃないか・・・一体誰なんだ・・・」

 「いきなりですまない、しかしお前に一つい依頼がしたくてここに来た。」

またモゾモゾと動き出すと顔らしきものがこちらに向いた。

 「そうか、それは狼を殺す依頼か?だったら・・・」

 「いや、そういう依頼じゃない、依頼は俺らに協力してくれというものだ」

 「どういうことだ?」


―――――――――――――――――――


 改めて狩人がベッドから立ち上がり、「すまない少し外で待ってもらってもいいか?」と言われ一旦外で待機していた。


 しばらくすると「お待たせした入ってくれ」と言われたため入ってみたものの

さっき部屋を見たときとは打って変わって、ものの数分で見違えるほどきれいになっていた。


 (さっきが、それほど荒れていたかと言われればそれほどではないが、明かりがつくだけでも結構変わるものだな)

 (あと少し整頓されたのか、机の上や周囲のものが取り去られているからきれいに見えているだけか。)

 (それにしてもさっきはほとんど見れていなかったがこの狩人割とイケメンだな、長髪茶色で結んでいて、服装はまさしく狩人という感じで緑で統一されている。)

 (とにかくイケメンという点で許されないなこれは。)

 

 「それでは、失礼して」


 近くの椅子に座る


 「では改めて、依頼の話の前に確認したいことがあるんだがいいか?」

 「ああ、なんでも聞いてくれ」

 「そうか、じゃあまず1点目だ、お前は狼の狩猟の依頼を受けたか?」

 「そうだな俺はその依頼を請け負った」

 「2点目はその依頼は誰から受けたものだ?」

 「その質問には答えられない、依頼者の権利によって素性は秘密で行うものと書かれていたから無理だ。」

 「わかった、さっきの質問は仕方がない、じゃあ、3点目だ。3点目は直近で黒いもやもやしたものと出会った体験をしたことはあるか?」


 「そうだな・・・その黒いモヤモヤしたものについては確かにあったことがある。」

 

 「あれは結構月明かりが強かった時だったと思う。」

 「そろそろ寝ようかとベットに入ろうとしたとき、扉がノックされてこんな時間に誰だろうと思ったもののノックされた以上出た方がいいだろうと思って扉を開けたんだ」

 「そしたらそこにはお前たちがいっている、黒いモヤモヤしたものそこにはいたんだ。」

 「その黒いやつは微動だにしないと思って観察していたんだ、すると急にモゾモゾと形を変えたりと動き出したんだ、その時の俺はあまりに急なこと過ぎて何もできずにいた。」

 「すると、黒いやつがこちらに向かってきて俺の体に触れたと思った瞬間急に立ち眩みが来て一瞬倒れそうになったが、持ちこたえたんだ。」

 「改めて、自分の体と路地を見てみたが体に何か変化が起きたわけでもなく、路地もなにもいなくなっていたんだ。」

 「さっきのは何だったんだろうと思いながら、足元を見てみるとそこには一枚の手紙が置かれていたんだ、その手紙に依頼の内容が書かれた手紙だったわけだ。」

 

 「その依頼というのが狼を倒してくれだったというわけか?」

 「まぁ大雑把に言えばそういうものだった。」

 「それで、赤ずきんのところに向かったのか?」

 「どうしてそれを知っているんだ・・・」

 「どうしてってそりゃ赤ずきんの家から先に行ってここに来たんだから、知っているんだよ。」

 「そう、だったのか」

 「じゃあ赤ずきんから大体は聞いたんじゃないのか?」

 「ああ、お前が町の依頼で狼を倒しにいたこと、そのために何度か赤ずきんの家を訪ねてきたことは聞いた、だが俺らが知りたいのはそういうことじゃない。」

 「俺たちが聞きたいのはその手紙に書いていたこと、手紙を送ってきたのは誰であるかを聞きたいだけだ」

 「どうしてそこまで手紙の内容を聞こうとするんだ?」

 「黒いやつを解決するためだという答えになるな、そしてその手紙の送り主がどうやら元凶だったらしい。」

 「なぜ送り主が元凶だと思ったんだ?」

 「まぁそこは俺の力としか答えられないな、お前が協力してくれるかどうかで変わってくるがな」

 「そうか、ではお前たちに協力はしよう、赤ずきんや俺のことは知っているようだしな」

 「話が早くて助かる。それじゃあ、なぜわかるかという話だったな、それは俺たちが黒いやつを視覚的に捉えることができるそういった力を持っているんだ。」

 「そしてその力を使って大まかな色とかでわかるんだが、色が薄いからお前が元凶でないと分かった。だからお前に手紙を置きに行ったやつが元凶になるわけだ。」

 「なるほどな、理由は分かった。じゃあその力があればだれが送り主かもわかるんじゃないのか?」

 「いや『視て』みたんだが、線が無数に伸びていてこの町全体にのびている感じがしたからこうして聞いている状況なんだよ」

 「なるほどな、で送り主についてなんだが、町からの依頼というのは本当のことなんだ、実際こんな感じで依頼書は町長の印鑑が押されているが実際に町長かどうかわからない」


 狩人は胸ポケットにしまわれていた書類をカイトたちに見せた。


 確かに狩人が言っていたように書類には押印とサインらしきものが押されていた。


 「こういった依頼書というのはすべて町長のサインがいるのか?」

 「ああ、基本的には町長のサインと押印が必要になる。」

 「ということはこの依頼は誰が出したのかお前も分からないということなのか?」

「いや、そうでもないなぜならこの手紙にも書いているように俺は脅されているからだ・・・」


 ここに書かれているて言われても、ほとんど読めなんだよなぁ・・・

 「どう脅されているんだ?」

 「まぁ簡単に言えば、俺の両親が捉えられた」


――――――――――――――――――――


 「まずこの町のつくりを説明しないといけない」

 「昔はどこにでもあるいたって普通の町だった、それはもう、町の道も賑わっていたし、露店が出てたくらい人で賑わっていた。」

 「だがそれは本当に昔の話だ、最近になってというわけではないが、この町は変わってしまった。」

 「変わったのは町というより、町長が、というべきか。」

 「町長の指示によりこの町にかなりの税率が適用されるようになったんだ。」

 「たとえば、何か野菜を買ったとしよう、そうした場合普通税率は5%取られていたんだが、それが一気に10倍まで膨らんだ、そしてそれが払えない人たちは何かと交換もしくは身内を差し出さなくてはならくなってしまった。」

 「つまり俺らは支払えない代わりに親や金品を上納しないといけなくなったんだよ。」

 「そして被害にあってしまい、それを解決する方法がここに書かれているというわけだ。」

 「なるほどな、だから脅しというわけか。」

 「そういうことだ。」

 「つまりはその町長をどうにかすれば万事解決されるというわけか、だったら俺たちに任せてくれないか?」

 「何を言っているんだといいたいところだが、お前たちはすごい力を持っているようだしな、それに俺の家を見つけ出すほどの力を持っていると考えれば止める方がおかしいというものか。」

 「そういうことだ、ということで町長の場所教えてくれ。」

 「いいだろう、町長は・・・」


―――――――――――――――――――


 「町より高いところに住むとかそれはもう、町を見張っていますよって言ってるようなものじゃねーか」

 「そうかしら、状況をわかってるからこそ離れたんじゃないかしら?」

 「まぁ何だっていいさ、町長さえ説得してしまえば、もうこの本は解決したも同然よ!」

 「さてとここら辺にあるらしいんだが?」


 カイトたちは狩人から教えてもらった丘の上を登ると目の前に石造りで作られL字型の家が見えてきた。


 「あれがおそらく町長の家だろうな」

 「でどうするつもり?狩人には『穏便に終わらせてくるから』とか言っちゃって、ほんとうに穏便に終わるのかしらね」

 「え?なにいってんの?穏便に終わらせるのはそっちの領分だろ?」

 「はぁ・・・そういうことだと思っていたわ」

 「それじゃあ、行きますか」

 「はいはい」


 トントン、トントン

 「誰かいませんか〜」


 トントン、トントン

 「今開けます」


 キィィィ

 扉が開かれ1人の男性が現れた


 「どちら様でしょうか?」

 「始めまして、商売で旅をしているものです」

 「今回はこの

 「お邪魔しま~す」

  

  キィィーーー

 「誰かいませんか~」


周囲を見てみると暖炉や本棚、ソファーとリビングがあるくらいで2階に続く階段と2つ扉がある感じか、とりあえず片方はキッチンで片方は食べる場所なんだろう。

つまりは・・・

 「2階に行くか」


ギシッギシッギシッ


とカイトたちはゆっくりゆっくりと階段を上っていくと2階には3つ扉が横に連なっていた。

おそらく一つは寝室一つが客間最後が専用の部屋だろうな。

そしてそのまま最奥にある部屋の扉を押し開けた。


 「失礼しま~す」

扉を開けると周囲には長机を対象に前後に置かれたソファー、その奥に置かれた机と山積みに置かれ書類とその整理をしているのか下を見く続ける老人の姿があった。

集中しているのかこちらの来訪に気づかず作業をしていた。


 「あの~すみません」

 「ああ、すまないもう少しそこのソファーで待っていてくれないだろうか・・・」

 「それでは失礼して、お邪魔します」

 

目の前には先ほどまで書類の作業をしていた、この町の町長が座っている。ハ〇ジのお〇じを細身にした感じだな。


 「お待たせしました。ようやくひと段落しましたよ。それでは、休憩入れたいのでひと休憩にいかがですか?」

 「お構いなく、あなたにお伺いしたいことが終わりましたら帰りますので。」

 「そうですか・・・それにしても結構かかったものですね。」

 「なんの話でしょうか?」

 「いえいえ、何の話ってそれは、あなたたちの話に決まっているじゃないですか。」

 「その言い方だとまるで俺たちがここに来ることを予見していたかのような言い方じゃないか。」

 「はて?そのような言い方をした気がしましたが、わかりずらかったでしょうか?」

 「いやいや、あんたがなんで俺たちがここに来ることがわかるんだよ。」

 「ふふ、簡単なことですよ、ずっとあなたたちを見ていたのですから、いずれここに来るだろうと思っていましたよ。」

 「見ていただと」

 「ええ、見させていただきました。赤ずきんや狩人、狼とも接触していることも知っていますよ。」

 「どうしてそこまで・・・」

 「それはですね・・・・・・フフフh」


 町長が急に前屈みになり、町長の体が少し大きくなったように感じたとき

 目の前が真っ黒になり、改めて周囲を見てみるとそこは今までいた町長の部屋ではなく、黒いドームで覆われていた。そして近くに町長の姿はなく、少し遠くに黒く獣のようなものがいた。


 「はぁ結局こうなるのね」

 「まぁこうなるはな」

 「さてと行きますか」

 「『ブースト』発動『エンチャント』発動」


 カイトの拳に炎が纏わりついた。


 「『リーブト』発動 一旦はこれでいいでしょ、気をつけなさいよ」

 「ああ、行ってくるぜ!」


 そういってカイトは黒い獣に向かって駆け出した。


 (目の前にいる獣は外見として狼男、顔から足まで狼そのもで両手に片手斧を持ち二足歩行とか強すぎだろ、身長も3メートルくらいあるとかアドがすぎるだろ)


 こちらに向かってきた敵、カイトに対して狼男も走り出しドシドシ音をさせながら走り出した。

 カイトが狼男の懐に入り込もうと思ったときだった。

 狼男は両手を掲げ片手斧を思いきり一緒に振り下ろした。


 ドーーーーーン!!


 「さすがにそれくらいの速さだったらわかるっての・・・」


 振り下ろされた斧は地面にしか刺さっておらず、狼男がとらえた敵は自分の左わきにいたことを気づいた時には遅かった。


 「これでもくらいな!」


 カイトによる右フックが左の脇腹に食らっていた


 ガシッ!


 という音ともに狼男がよろめく


 「固っった!」


 (よろめいても全然ダメージが通っていなさそうだな、あいつの肉体固すぎだろ・・・)

 (もう一発食らってもらいましょうかっ!)


 「オラ!」


 カイトが左フックを食らわそうとしたとき、


 カキィィン!!


 よろめきから回復したのか体勢を立て直し狼男がすかさず右手を使い弾き返してきた。


 「さすがにだめかっ!」


 すかさず右フックを食らわそうとしたが、狼男は目の前で腕をクロスさせてカイトを弾きとばした。


 ガシィィ――――ン!!

 

 金属同士がすり切れあう音を響かせながらカイトは狼男に吹き飛ばされて狼男から離されてしまう。


 ドッ.....ドッ......ザシューーーーーッ!!


 吹き飛ばされたカイトは地面に二度体をぶつけながら体の軸を整え、手を地面につけながら体勢を整える。


 「フゥ...危ないところだった」

 「それにしても結構離れてしまったな」


 気が付けば、狼男の姿がなんとなく見えるくらいのところまで吹き飛ばされていた。


 ワァオォーーーーーーーン!!


 遠くまで離されたカイトの耳にまで空気を裂くような声が聞こえてきた。

 突如、狼男は両手を上に掲げ片手斧の柄を繋げ、両端に刃が付く一本の大きな斧を作り、カイトに向かって走り出した。


 ドッ.........ドッ......ドッ...


 狼男は地面にヒビを入れながらカイトに向かい走っていく。


 (おいおい、さすがにそれはやばいだろぉ)


 ドッ...ドッ...ドッッ!


 向かってきていた狼男はある程度の距離に来ると急に飛び上がり、カイトに向かって上空から斧を振り下ろしてきた。


 ドーーーーーーーーン


 すさまじい音とともに、高所から落ちてきた斧の一撃は地面を抉り、周囲に土埃をまき散らせ、カイトと狼男の周囲は土煙で何も見えなくなっていた。


 (カイト...)


 しばらくすると、土煙は次第に消えていき何とか影を認識できるようになってきた。


 「さすがに似た攻撃はよけれるっての!」


 カイトは抉られた地面の端の上で地面に手をおき、かすり傷一つない状態で立っていた。


 「さてと、改めていくとしますか」


 カイトは自分を鼓舞するかのように拳同士を打ち付け、地面を蹴り、狼男に向かっていく。


 狼男は、手に持っている斧の柄の中心を持ち、時計回りに回転をさせはじめる、

回転を続ける斧とカイトの拳がふれあい、改めて強い金属音が空間内に鳴り響く。


 カン、カン、カン!

 

 斧の回転が止まっても、カイトの拳の連続攻撃は斧によっていなされてしまう。


 「たく、埒があかねぇ...」

 「あんだけ、胴体が固いということはおそらく...」


 ドン!


 改めてカイトは、狼男に向かって一直線に向かっていく。

 狼男からすれば、またバカみたいの一直線に向かってきたと思っていた...

 だが、カイトの姿はそこにはなかった...


 ドンッ!!!ガシッ!!


 鈍い音とともに狼男は前屈みに姿勢を崩してしまうのであった。


 「はぁ...はぁ...まったくきついぜ...」

 「ここまで硬かったらどうしようかと思っていたより柔らかくてよかった。


 カイトは直線に向かっていくように見せかけ、狼男と交わる直前に体全体にかけ『ブースト』を左足にブーストを集中させ、地面を蹴り上げ、狼男の背中に回り込んでいたのであった。


 「さすがに、負担はでけぇけど、これだけ与えたらあとはっ...」


 ドスッ!ドスッ!


 カイトの連続攻撃が狼男の背中を襲う


 ドスッ!ドスッ!ドスッ!


 「はぁ...はぁ...」


 ドスンッ!


 重い音とともに、狼男は倒れていった。


 「ふぅこれで終わりかな...」


 狼男から体を背け抉られた地面から上がろうとしたときだった。


 ドシッ!ドシッ!ガチャン!ブン!


 地面をたたく音と金属同士が外される音が背後から聞こえた。


 一本であった斧を片手斧に戻し、横回転に投げられた斧がカイトの背中に迫ていた。


 すかさずカイトは、バク宙を行い迫ってきた斧を避ける。


 「まったく、フラグは立てるものじゃないなっ!」


 改めて狼男に向き直り、片膝を抱え、立ち上がろうとしていた狼男に向かい、狼男の顔をつかみ、そのまま、地面にたたきつける。


 そして狼男は気絶した。


 「よしこれで大丈夫だな」


 しばらくすると周囲を囲っていた黒い壁は次第に狭くなっていき、視界が黒に覆われたと思ったつぎの瞬間、再度目を開けるとそこは先ほどまでいた町長の部屋に戻っていた。

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