四の五の言わずに
白い明かりが赤い僕の身体を照らす。
ポタ、ポタ、ポタ。
この触手の先には濁った水溜まりができている。
あぁ。なんて、なんて___________________________
____________________________________________________________________________________________
目が、覚める。
視界がぼやける。
意識が朦朧としている。
それに、この頭に響く妙な鈍痛。
昨日は遅くまで外にいたせいだろう。
寝不足の朝ほど嫌なものはない。
「ほんと、深夜テンションに任せて2時間もって」
まったく深夜テンションというのは恐ろしい。
身に余ることを嬉々として受け入れてしまう。
半ば自分に呆れながら今日も制服に着替える。
新学年になってから今日で2週間。
授業も少しずつ再開してきた。
そんな中、今日からは部活動が始まる。
僕の所属している部活は天文部。
元々夜や星が好きだった僕が、運動部以外で良さそうだと思って入った。
…のはよかったのだが、信じられないくらいキャラの濃い人達が多く、一年の頃はかなり振り回されていた。
2メートルを超える長身を持ちながら運動部に入らず、「暑いので嫌なんだよね」なんて理由で入部した一年生に、学年トップの座を欲しいままにしておきながら、「彼女と同じ学年になって、その後後輩になる」という願望の為に留年し続ける永遠の17歳など…。
人数が少ない分キャラが一人辺り10人分位濃くなっている。
そんな一癖も二癖もある所に今日からは蒼も入る。
ほんと、どうなることやら...。
朝の用意を済ませ、今日も家を出る。
「行ってきます」
エレベーターを降り、蒼と合流する。
「部活とかけまして、火事を起こした犯人の証拠隠滅と解きます」
「その心は?」
「どちらもほうかごに行うでしょう」
「64点」
また他愛も無い話をしながら学校へと向かった。
授業は適当にこなしている。
ウチは進学校でもないのだし、ノートを取ってテストで平均点さえ超えればいいだろう。
「___これがp46を見てもらうと分かる通り_____」
カッカッとチョークの音が聞こえる。
「こ_____れ__」
あれ、先生の声が、
そう思った瞬間、ひどい痛みが頭を襲う。
「ぐッ。」
まるでナイフをこめかみに差し込んだかのような鋭痛。
保健室に行かなければ。
「せ_______」
しかし、声が出ない。
掠れて呼吸音に変わるだけだ。
まずい。意識が、
「せんせー」
誰かが声を上げたようだ。
「どうした?高橋。」
「五十嵐君体調悪そうなんで保健室連れて行っていいですか?」
「そうなのか?五十嵐」
先生への返事に首を縦に振る。
「よし、連れて行ってやれ」
「はーい」
先生を呼んでくれた女子が僕の肩を担いで保健室まで連れて行ってくれた。
白いベッドに腰を掛ける。
「はい、これで大丈夫だよ」
「ありがとう」
ようやく声が出た。
「うん、湊が辛そうにしてたから」
湊?急に名前呼びしてくるとは。
「よく気づいたね、高橋さん」
「ん〜〜」
あれ?何かおかしな事言ったかな?
「ん〜〜〜〜」
「な、何か気に触ること言った?」
「うん。言った。もしかして湊って私の事覚えてない?」
「へ?」
まさか。僕にこんな美少女の知り合いがいたら名前を忘れるはずがない。
高橋香織。いや、聞いた事がないはずだ。
「ごめん、覚えてないや」
「はぁーーー、やっぱりか。まぁ、名前変わってるから仕方ないんだけどね」
そう言うと少女は椅子から立ち上がってポケットの中から指輪の様なものを取り出す。
「これ、何かわかる?」
「指輪?」
「そ、湊がくれたんだよ。5年前にね」
5年前?5年前...それに、名前が変わってる.....
「まさか、香織?」
「思い出した?そうです。湊の可愛い可愛い幼馴染みの、星川香織です!」
ようやく思い出した。
星川香織、昔東京から離れたところで暮らしてた時によく一緒に遊んでた女の子だ。
「でも一体どうして...」
彼女とは僕が引っ越した事で離れたはず...。
「まぁ、色々あって引っ越して、この高校に来たらびっくり!なんと私の幼馴染みがいるじゃありませんか」
「そうだったのか。それは気づかなくてごめん」
「ほんとだよー!湊ったら私がこの一ヶ月さりげなーく話かけてたのに全く気が付かないんだもん!」
香織は膨れっ面で可愛い文句を言う。
「それでちょ〜っとイライラしてたら急に湊が倒れ出すし!」
「ごめんごめん。いつもならこんな事無いんだけどね」
本当に頭痛なんて初めてだった。
健康に気をかける様にしよう。
「まぁ、それなら安静にね。教室戻るから」
香織が教室を出ようと扉に手を掛けた時、ふと
「ありがとう。また会えて」
そんな言葉を、この口が言った気がした。
返事が来たかはわからない。
ただ、それを言わないとどうにかなりそうだっただけだ。
そして、僕の意識は視界と共に閉じていく。
魂の花 まおー @karfbhkdkdwofwgdgebz20
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