俺はこの星で奴隷を救って見せる!
京
第1話
「中央にメインの宝石をはめ込んで・・・・と修理完了か。お客様に連絡を入れよう。」
俺の名前は
かなり珍しい名前だと自分でも思っている。子供のころからビーズアクセサリーが趣味だったことと、手先が器用なこともあり仕事先を装飾品の修理や作成という仕事にした。子供の頃は男のくせにとか言われたが今では逆にそれで生計を立てているから世の中不思議だ。そんな生活を高校卒業から10年やってきたが好きなことで生きていくことができている。いつも通りアクセサリーの修理が完了し引き渡せば仕事完了だ。スマホを取り出し連絡をしようとボタンを押した。その瞬間いきなり真っ白な空間にいた。えっ?なんだここ?気絶でもしてしまったのかと頬っぺたをつねったがちゃんと痛みがあった。なら何でと思っていると後ろから声が聞こえた。
「あ~すまぬ!」
後ろを振り返るとぼんやりとした輪郭に光が見えた。人型だけど姿がわからない。
「えっとそのお姿は?というよりここはどこですか?」
「うむ。まず1つ目の質問じゃがわしはおぬしらの世界でいうところの神じゃな。そなたはわしのことを希薄に感じるのは存在の違いゆえじゃ。次に2つ目の質問なのじゃがここは死後の世界への待合室のようなものじゃ。本来ならここにとどまることはないのじゃが説明が必要と思ってな。実はそなたはわしのミスで殺してしまったのじゃよ。」
意味が分からない。神?死後の世界?どうしてこうなった?
「混乱するのも理解できる。説明しよう、あぁまず心が読めるのでしゃべらんでもよいぞ?さて先ほどわしは世界の調整を行っていたのじゃがその時に間違えて隣のボタンを押してしまったのじゃよ。ちょうどそのボタンは一人の人間の運命をつかさどるボタンでな。そのせいでそなたが死んでしまったのじゃよ。」
なんだって!?完全なとばっちりじゃないか!ふざけんな。
「すまぬ。許してくれ。今回のミスの補填はするつもりじゃよ。そうじゃの・・・・転生なんてどうじゃ?地球では無理じゃが他の星でというなら少し若くして当面の生活費くらいなら用意できるぞ?」
地球では無理なのか。他の星といってもどんなところなのか。
「地球に非常に似た環境を持った星じゃよ。昔の西洋くらいの環境下かのぅ?戸籍自体が存在しないがの?」
似た環境・・・・宝石とかビーズとかも作れるのかな?
「もちろん作れるぞ。研磨技術自体はあるのじゃがあまり宝石の輝かせ方は未熟じゃがな。」
それなら・・・・・あっ!修理したお客様への返却してない!
「あぁそれなら大丈夫じゃ。そなたは突然死したことになって警察が連絡を入れ返却しておる。ほかにも多少の希望は聞くぞ?」
ん~じゃあ肉体は18歳くらいにして・・・・お金だけどまず住むところをなんとかできるくらいと今店においてあるくらいの宝石が買えるくらい用意してほしい。
「可能じゃよ。むしろそれじゃ足りんじゃろうから言語能力と案内役をつけようかの」
案内役?どういうこと?
「こいつじゃよ」
突然犬が現れた。
「こいつはしゃべれるようにしておるし向こうのあらゆる知識を入れておる。あと2人きりの時にしか喋らんようにしておるがの。」
戸籍がないって言ったけどどういうこと?
「あぁ、要は奴隷契約された奴隷か何もない平民か王政の貴族しかおらんということじゃよ。」
え?奴隷制もあるの?
「奴隷といってもそなたはならんぞ?そのくらいの金を与えるつもりじゃし最悪こいつに言えば地中に埋まっておる資源を手に入れられる。じゃから気にする必要はないぞ?」
そうなのか、ならいいかな?
「質問は以上かの?なければ転生を始めるぞ。」
えっとあとひとつ、さっきは毒づいてごめんなさい。
「ハハハ、あれはわしが悪かったのじゃから気にしておらん。でははじめるぞい。よい来世を過ごすがよい。」
神がそういうと俺は引っ張られていった。
「さてどうしようかな。」
周りを見回すと森林の中だった。そばに案内役の犬もいる。
「まずは名前を決めた方がいい」
・・・・・やっぱり犬が突然しゃべりだすと違和感があった。
「名前か・・・・・じゃあポチで!」
「・・・・それが主の名前?」
「えっ?」
「この世界じゃ装飾直石じゃ通らないとおもうぞ?」
「そうなのか・・・・じゃあナオでどうだ?」
「問題ない、ポチは俺の名だな。了解した。」
ポチは納得したようにうなずいた。
「まずは人里に行かないとな。」
近くにおいてあった荷物(お金が入っている)を持ちあげた。
「ならこっちが一番近い」
ポチが案内してくれる。本当に助かった。案内役をつけていなければ最悪遭難していたかも。しばらく歩いていると街が見えてきた。
「戸籍が存在しないっていう話だけどどうやって入るんだ?」
「まず定住権があるかチェックされて定住権を買うか、なければ1年間使える通行券を買うのだ。
通行券は1年滞在したら改めて買いなおす必要があるぞ?」
なるほどね。定住するか1年毎の滞在か選べるのか。
「中に入ると看板もあるから大体わかるはずだ。そろそろ門番のところに行くことになるから喋れなくなるからな」
「わかった。ありがとなポチ」
そのまま進んでいくと門番のところについた。
「そこのお前、名前と職業を言え」
門番は俺に聞いてきた。
「俺はナオ、街を渡り歩いて職を探している。ここにも仕事探しに来た。」
「なるほど。そこの犬はなんだ?」
「こいつは俺の相棒。旅をしてると危険もあるからな。番犬代わりの家族だ。」
「しばらくまて」
そういって門番の一人が門の中に入っていった。少し待っていると門番の一人が連れを連れてきた。
はて?なんで?と思っていると二人はうなずいていた。
「よし!定住権はあるか?通行券を買うか?どちらにする?」
「定住権を買います。あとそちらの方は?」
金貨500枚を支払い定住権を買いながら質問する。
「あぁこいつは今までの犯罪者を覚えているからお前に犯罪歴がないか確認してもらっていたんだよ。」
なんと・・・アナログ・・・・いやむしろ当然か。
カメラやコンピューターなんてあるわけないしな。
中に入ると馬車が走っており建物には看板がかかっている。
「さてまずは住むところだよな。自分の能力を生かせるように仕事は前世と同じ、趣味の装飾にしたいから店舗を買いたい。適当に歩いて不動産屋を探すぞ。」
街をぐるっと回っていろいろ見て回り1時間ほどうろうろしていると見つかった。
「いらっしゃい」
入ってみると他の店より小綺麗になっている店内が目についた。当然か。これから家を買おうとしてるのに店舗が汚かったら誰も買わないだろうしな。
「実は店舗兼住居を探してまして。」
「おや?それは珍しい。店舗と住居は分けなくてよろしいので?」
どうやらこの世界では兼用は珍しいようだ。とはいえ自分は身寄りもいないししばらくは全部一人でこなさなきゃならない以上兼用のほうが都合がいいだろう。もし手狭になったら住居だけ新たに買えばいいしな。
「はい。防犯の観点から店舗に常に居たいのでそれでお願いします。」
「そうですか。お手持ちの奴隷はあまり信用できませんか。」
ん?どういう意味だ?まぁしばらく奴隷は持つ気もないし気にしなくてもいいか。
「ちなみにご予算はいかほどでしょう?」
「えっと仕入れとかの金額を省かねばならないので・・・・金貨2000枚ほどでお願いします。多少オーバーしてもいいので案内してください。」
金貨は上からのぞいただけだが5000枚くらいはある。
「では候補の場所にご案内します。」
店長が他の従業員に任せて自分と一緒に候補地に向かう。1店舗目に案内され周りを見渡すと工業地区と住宅地の間にある1店舗だった。
「こちらはもともと織物工場だったのですが手狭になったとのことで引っ越したとのことです。」
大きさはかなり大きい。やっぱり大型の機械を置いていたせいだから産業の違いなんだろうな。明らかに場所が余ってしまう。
「装飾店にしたいのであまり大きすぎるのももったいないので別のところでお願いします。」
「おや、そうでしたか。では次にまいりましょう」
2店舗目は街の端だった。人も全然歩いてないしここは見なくてもわかるな。明らかに商業店舗に向いてない場所だ。手狭になった時の住居にはいいかもしれないけど一番に買うところではないな。
「ここは場所が悪いので別の場所をお願いします。」
「わかりました。」
次の店舗候補地は玄関側に大きな部屋がありそこから2つに分かれて小さめの部屋が2つとキッチン風呂トイレがあった。大家族で暮らす家といってもいいだろう。大きい部屋はリビングだろうがここを改築すれば問題なく店舗にできるだろう。最初はリビングだけ店舗にして手狭になったらもう1部屋を倉庫にすればいいだろう。いよいよ手狭だと感じたらさっきの街の端を買ってそこに住めばいい。
「ここ。いいですね?おいくらですか?」
「こちらは金貨2400枚になります。」
ん~ここの相場がいまいちわからんだよなと思っているとポチが服の袖を引っ張った。
「ん?どうしたポチ?」
「ワン!」
一度吠えたポチはじっとこちらを見ている。もしかして教えようとしてくれてるのか?
「安いと思うか?」
そういってもポチは何も言わない。
「高いと思うか?」
こう聞いたらポチは吠えた。やっぱり商売人か・・・。少し高めに行ってるんだろうな。怒られかねないギリギリの値上げをしてるんだろうな。だとしたら・・・・
「実はもしここを買って手狭になったら先ほどの街の端を住居にしようと考えてるんですよ。」
「おぉ・・・そうでしたか。」
店長の目を少し細くしている。
「開業資金もありますし少しでも安く買いたいのですが負けてもらえませんかね?」
「・・・・・ようございます。でしたら金貨2150枚でいかがでしょう?」
・・・やっぱりか。次も売れると分かれば今ぼったくるのは得策じゃないと思ったんだろうな。すぐに値引いてくるとはね。まぁ別に商売人としては間違ってないから怒ってないけどね。
「おぉ!ありがとうございます。では契約をしたいので先ほどのお店に戻りましょう。」
そういって先ほどのお店に戻り契約をすることになった。
契約書類を確認しサインする前にこの街のことを聞くことにした。
「宝石なんかを売っているところってどこにありますか?」
「そうですね。街の中心にある宝石商やたまに来る旅商人・・・あとはあまり質はよくないものもあるのですが市場なんかに行けば売ってることが稀にあります。」
やっぱりさっき続けて購入の可能性があると伝えているからいろいろ教えてくれるな。とはいえ意外と売っているところは少ないんだな。いやまてよ?
「鉱山とかそういったところで直接売ってないんですか?」
「そういったものはその土地の貴族領主が管理しており買えないかと。・・・・一度市場に出れば買えるのですが。」
管理しているのに市場に出れば買える?さっきも奴隷は信用できないみたいなこと言ってたしもしかして奴隷が盗んで市場に流してるってことかな?考えていると他の従業員がお茶を出そうと持ってきていた。机にお茶を置こうとしたところ机の角にぶつけてしまいお茶をこぼしてしまった。
「申し訳ございません!」
その従業員はすぐに謝ってきたが店長は激高しいきなり顔面を殴り飛ばした。
「貴様!お客様になんてことを!」
「いやいや!いいですよ!」
店長はさらに従業員に近づき腹を殴り足で蹴りをいれ、暴力の限りを尽くした。
「奴隷身分の貴様を雇ってやっているというのに!どれだけ迷惑をかければきがすむんだ!」
さすがにやりすぎだと店長を抑えた。
「俺は気にしてませんから!とにかく契約しましょう!?」
店長はハッとして商談中なのを思い出したのかソファーに座りなおした。
「もうしわけありません。私の奴隷が迷惑をおかけしました。後で私のほうで折檻をしておきますのでどうかお許しを。」
あれが折檻じゃないの!?まさかあれ以上!?
「やめてあげてください。」
俺は契約書類にサインし終わると話し始めた。
「むしろ折檻はしないで上げてください。もしそんなことをすれば私は次の商談をしないつもりですので。」
さっきの言ったことは検討なので選択権はこちらにあるということをちらつかせてやめさせた。
「・・・・わかりました。今回の件は不問にします。」
「それでは契約が完了したのでこれで」
「またのご利用をお待ちしております」
もう来ないけどな。奴隷とはいえ従業員に暴力をふるうところの商品なんて買いたくない。そんなことを思いながら店舗に向かった。
店舗に入った俺はポチに話しかける。
「ポチ、この世界の奴隷の扱いはあんな感じなのか?」
「あぁ、そうだよむしろ鉄拳制裁なだけましなレベルだ。殺されないんだから。」
俺は顔をしかめながらこれじゃあ奴隷が盗みを働くのも仕方ないと思った。
「鉱山の話も出たけど・・・・奴隷が盗んでるやつもいるんだよな?」
「鉱物だけじゃない、織物や食料、ありとあらゆるものが盗んで生活をしてるようなやつもいるし集団で盗んで売りさばくようなやつもいる。」
そんことあるかよ・・・・俺が就職した時にはブラック労働が騒がれたくらいの時だった。
その頃でもそんなことはなかったしそれ以前はもっとひどかったようだけどいきなり暴力なんてなかったはずだ。
「ナオの考えてることもわかる。かなり生きづらい世の中だとは思う。一人一人が変わらなきゃならんと俺は思う。」
「そうだな。俺はあんなことを絶対しない。もし雇うなら奴隷を大事にするよ。目についた奴隷にはやさしくするよ」
「それでいい。自分の手の届く範囲から始める必要があるんだから。」
「おぅ!」
決意した俺はポチとともに有力者と知己を得るよう動きやがて世論を大きく変え奴隷を救う。そんなお話の序章
俺はこの星で奴隷を救って見せる! 京 @5384
★で称える
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