第10話 逃亡テロリスト傷害事件-外伝06 了
結局、
「その上で、私に協力してもらいたい」
感情の欠落した声で言う自称美大生に、二人は緊張を隠せない。
「承知しました。ただ、ひとつお聞かせ願いたいのですが」
「何か?」
「
1637番宇宙の
「
「承知しました。では、何とお呼びすれば」
「
あの子、と1500番宇宙の高校生である
「何か?」
「いえ、何でもありません」
その隣に立つ、1398番宇宙の
「
「何か?」
すかさず飛んでくる
「いや。大したことじゃぁ無ぇんだがよぉ、もうじきボウズが起きるぜぇ。イイのかよ? 白蛇伝説さんよぉ」
薄暗がりの中、
「
「別にケンカ売ってる訳じゃねぇ。事実だぁな、ボウズが目ぇ覚ますのはよ」
「ほう。
「話せば長くなります。が、
「もっともだな」
栄美は二人への興味など失ったと言いたげに、背を向けて倒れた高校生の下へと歩んでいく。
その後ろ姿を見ながら銀八は小声で呼びかけた。
「
「あのボウズよぉ、
「まさに剣と魔法の世界じゃないですか」
「知るかよぉ」
そんな
「何か御用でしょうか?」
「これは?」
中を見て銀八は、そこに書かれた数字の意味を悟った。
「これを
「あの……少年、は私の保護対象だ。連絡が取れねば困る事も有るだろう」
目をそらせつつ語るトップエージェントに瞬間、
「
そう言われて銀八は
「承知致しました」
相手の返事を聞いて、彼女はまた少年のそばへと歩いていく。
「では、宜しく頼む」
そう言い放ち、彼女は
しばらくして、上半身を起こされた状態の
「こ、こ、は…‥?」
その第一声に、自称美大生は上から答えた。
「気が付いた?」
先程まで二人が聞いていたものとは余りにも掛け離れた優しい声が、エージェント白蛇伝説から流れ出す。
別世界からやって来ている二人の
「
「同感ですね」
小声で
「俺……」
「もう、大丈夫だから」
高校生に向ける笑顔も、美大生のものになっている。
「
自分の
「ピンモヒ、は?」
「大丈夫。あの方達が」
ついに出番かよぉ。小声で言う
あの人物は正しかった。
「そう言わざるを得ないな……」
少年は真っ先に、自分達を襲った軍人
ボロを出す訳には行かない。ほぼ自分が受け答えするしかないだろう。
そんなガス人間8号の思いを知るよしも無く、高校生は起き上がろうとして尻餅をついてしまい、うなだれたまま
「俺、また……」
その後に続く言葉と共に、少年の口から
「情けねぇ……」
「そんな事ない。君、
栄美の声も、少年の耳に、心に届いては居ない。確かにビューレットの言うとおりだ。もし事実を知れば、この程度では済むまい。
銀八は人目もはばからず泣き続ける少年を目にして、レイヤーなガンマンを大人だと再認識した。
「大人とは……与えられた役割にふさわしい能力と責任を持って、決断を下せる人」
場違いな
かつて母が病に倒れた時、一度として見舞いに来る事の無かった仕事の虫を名乗る非常な父と対立した日に、その父から言われた言葉を、彼は思い出していた。
仕事
以降、何かと少年を気に掛けては来たが。
「あの人物は……」
ここ1500番宇宙の
自分はまだ、その域に達していない。
「やべぇな、こりゃ」
自分の
「あれじゃぁよ、ボウズを追い詰めるぜぇ。守るはずだった女に
「確かに」
これもまた、ビューレットの予測の内なのだろう。
今こそ自分の出番だとガス人間8号は口を開く、いつも通りの涼しげな声で。
「申し訳ありませんが、このあたりで。彼はまだ高校生です。そろそろ帰宅させねばなりません。宜しいでしょうか?」
トップエージェント白蛇伝説が、感情の欠落した
「私が送って行きます。
「うぇ! 俺様が、かよ?」
「他に誰が
「わぁったよ」
その後、
「
共に一言も口にする事無く歩き続ける中、ガス人間8号は、おもむろに1500番宇宙の
「わぁったよ」
力無く、高校生が答える。
「強くなる事です、あらゆる意味で。で、なければ、これを渡してくださった彼女に申し訳ないでしょう?」
そう言いつつ、銀八は小さな紙切れを手渡す。書かれていた数字の列を目にして、少年はその紙を
「とんでもない出会いをしたみたいですよ、君は」
聞いていませんね、これは。紙切れを
今は、それでいい。とも。
だが、
彼、
平和な日々の裏側で進行する、多元宇宙間侵略全面戦争回避に
そしてそれが、どこにでも
何より本人、1500番宇宙の
3番目のタクマ ~多元宇宙 異世界広域事件簿~ 鷹住星嶺 @Sayrei_Takasumi
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