第50話 友だち

 ギャング団の親分が、別のギャング団の親分に電話した。


「会いたいんだが、来てくれるかな?」


「えーっ、なんか、やだな……」


「えーっ、そんなこと言わないで、来てよ!」


「しょうがないな……昔から、あんたのギャング団からは世話になってるからな」


 そう言って、別のギャング団の親分は、さっそく、やって来た。


 敵対する相手を皆殺しにして奪った金で建てた豪華な屋敷の玄関で親分同士はにこやかに握手した。


「誰も中に入れるんじゃないぞ!」


 親分はあたりをきょろきょろしながら、ボディーガードに言って部屋に入ると、これもまた、豪華な金でできた椅子に座った。


 すかさず、親分が言った。


「実は、困ってることがいくつかあるんだが、頼みを聞いてくれるかな?」


「おーっ、いいよ!遠慮しないで言ってみな!」


「いや、ありがとう。まずは、松坂牛の霜降肉と、スラムダンクって漫画、送ってくれるかい?」


「いいよ、簡単だ!」


「やったーっ、最近手に入らなくて食べたかったし、スラムダンクって漫画、読みたかったんだよ!」


「次にカンフー映画を見たいんでDVD、貸してくれる?」


「いいよ、延滞金とかいらないから」


「うれしー、最後に晩酌用にバドワイザーってビールを一年分、欲しいんだな。いま、健康に気を付けてるからさ、味がうすいビールのほうが体にいいじゃないか」


「いいよ、二年分でもいいよ!」


「おっ、そうか、悪いなあ。頼みはそれだけだよ」


「えっ、そんなもんでいいのか?」


「ああ、それだけでいいよ。あまりたくさん頼むと、疑われるからな」


「じゃ、帰るよ。困ったらなんでも言ってくれよ」


 親分は、友人っていいな……って思った。



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風天の湧く湧くエッセイ 東 風天 あずまふーてん @tachan65

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