第10話 島風が好きになるなんて
年が開けて1月、悠生と結衣は、結婚した。市の部長と特別養護老人ホーム園長のビッグカップルの結婚であったが、挙式は行わなかった。悠生が50歳、結衣が43歳と高年齢であったため、結衣が躊躇したのだ。
しかし、うれしい知らせもある。実は、結衣が出産したのだ。双子の女の子だった。超高齢出産だった。周りは、ひどく驚いた。
結衣も悠生もあり得ない、天からの授かりものに感謝した。
悠生と結衣は、たゑ子宅を引っ越した。思い出の家だったが、過去と決別し、未来に向かうために、引っ越そうと、悠生からの提案だった。
悠生は、瀬津間尊大市役所を退職し、輝石島に帰ってきた。古藤医師の後を継いで潮浜診療所長になるためだ。悠生は、今では出世に未練はなかった。人生唯一の願いは、残りの人生を結衣と子供と幸せに暮らしたいということだけになっていた。
結衣と悠生と双子の子供達は、高台の丘に白い2階建ての1軒家を新築した。
結衣と悠生の顔を見て、笑う我が子。結衣も悠生も、輝石島で手に入れた、ささやかな幸せを噛みしめた。
それから7年後、結衣は、車で下輝石島の海沿いの道路を走っている。
車を走らせながら、結衣は、27年前に東京からこの島に降り立った時に感じた潮風や、康史との思い出のデート、悠生との日々、たゑ子の話などを思い返す。
海から潮風が吹いてくる。実に心地良かった。
結 衣「島風が好きになるなんて…ね」
fin
ご愛読、ありがとうございました。presented by 加昇ヨシユキ
島風が好きになるなんて…。 加昇ヨシユキ @yoshiyukikasho
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