第43話 僕ら二人
「ふわぁ~ おはよう」
「おはよう、誠彦さん」
「昨日は良く寝たよ」
「私たちもすぐに寝ちゃった。最後の夜だったのにもったいないことしちゃった」
最後って言っても金輪際一緒に泊まったりすることがないってわけじゃないからな。また次回に思いっきり楽しめればいいってことじゃないかな。
「あれ? 俊介は眠そうだな。にしてはなんだか楽しげな雰囲気はするけど?」
「何だそれ? マコちゃん朝からわけわからんぞ。ほら駄弁ってないで飯食いに行くぞ」
「んんん、そうか? 気の所為ならどうでもいけどね。わかった飯にしよう」
僕たちは昨日の小宴会場ではなく、大広間の食堂の方へと案内された。今朝は他の宿泊客ともすれ違うので頭を爆発させたまま出歩いたりはしていない。
綺羅莉も髪の毛はきっちりとブラッシングしてあった。
「あれ? 綺羅莉も昨日と雰囲気違う気がするけど?」
「おはよう、誠彦くん。朝からわからないこと言わないでくれるかしら?」
「そっか。すまんな。まずは食っちゃおうか」
チェックアウト寸前まで温泉を楽しんで帰路につくことになった。
帰りの車も真田さんが迎えに来てくれた。遠いところを何度もすみません。ありがとうございます。
来たときよりも土産の分荷物は嵩んだけれど、思い出に比べればぜんぜん少なくて軽いもんだと思うわけで。車に積めるだけ詰め込んだって感じだな。
帰りの車の席順は休憩の度にあちこちに動き回った。もうよくわかんないけど帰りの車中も楽しかったよ。ああ、最高の夏休みだね!
約三時間後僕たちは最初の出発地点の駅前に戻ってきた。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。また機会がありましたらご一緒したいですね。では、私は行きますね」
真田さんは僕たちを車から降ろすと颯爽と去っていった。う~ん、かっこいい大人ってやつだよな。
「さて、腹減ったし飯でも最後に食って帰るか?」
「そうだわね。ここで解散なら解散前にご飯にしましょうか」
俊介が提案し、綺羅莉が答える形で昼食も一緒にすることにした。ここで別れるのは僕と季里だけなんだけどね。他のみんなは上り電車に乗るのでもう少し別れは後だ。
「せんぱ~い、あたしお財布に優しいお店がいいです!」
「ウチもお財布にダメージ与えない店がいいなぁ~」
凛ちゃんも水美もお財布がこの旅行で軽くなってしまったんだな。僕も同じなので、お財布にいたわりが必要なんです。
「じゃあ、そこにあるイタリアンなファミレスでいいよな?」
「構わんぞ。ほら水美、荷物貸せ。階段は持ってやるよ」
水と油のような性格だと思ったけど、遊矢と水美ってちゃんとカップルしているんだな。僕? もちろんキャリーケースは僕が持っているよ。もう誰も二人で一つのケースを使っていることなんか気にしてこないよ! 最初から指摘されなかったってことはもうそろそろ一緒に住んでいることもバレるのかもな。いや、口は割らないよ⁉
食事を取りながらこの四日間の思い出話に花を咲かせていたらあっという間に二時間が過ぎてしまった。
「それじゃ帰るか」
「うん。帰ろう」
帰りの音頭は僕と季里。帰ってからは洗濯したり片付けたりを全部自分たちでしないとなのであまり遅くなると普通に辛くなる。
「じゃあまたどこかに行くときは連絡するな」
「おう、今度は近場のプールにでも行こう」
「ねえねえ、じゃあさ。来週、水上公園行こうよ」
「私、水上公園には行ったことないので行きたいです」
「はいはい! あたしも混ぜてください。せんぱい!」
連絡先も交換したし、LIMEグループもこの七人で作ったからいつでも連絡できるし計画も立てられる。
「一番忙しい俊介基軸で計画立ててくれよ。僕はお盆の数日以外はだいたい暇だと思うんでね」
「わかった。あとで予定立ててグループに投稿しとくから見てくれ」
「おっけ。じゃあな!」
「おつかれ!」
僕たち以外の五人は改札を抜けてホームへ行ってしまった。
僕も本来なら下り線に乗って帰るってことにはなっているのだけれど、荷物を置きに季里んところに行ってから帰るという『設定』で乗り切った。
僕は電車には乗りません。ごめんなさいワタクシ嘘をついております。
「さて帰ろうか?」
「うん、久しぶりの我が家へレッツゴー‼」
夕飯を作るのは、今日はさすがにかったるいってことで、南武ストアでお惣菜を買って帰った。ご飯は冷凍ご飯があるのでこれだけあれば十分だ。
「せめて洗濯物ぐらいは二回ぐらい回しておきたいね」
「そうだな、三泊四日分の洗濯物が二人分あるからな」
歩きながら話しているけど話題が尽きることがない。もう少しで
「お、今度のアパートは軽量鉄骨造にするんだな」
「燃えないように?」
「どうなんだろうね。防火とか耐火とかあるけど僕はあまり詳しくはないな」
「ふ~ん。どうでもいいけどねっ」
「だなっ」
鍵を差し込み、玄関を開ける。
「「ただいま~」」
なんだか長いこと帰っていない気がして懐かしささえ感じてしまう。
「よし、一回休憩したら洗濯を……あづい……」
「ほんと暑いな。ずっと締め切りにしていたから熱がこもったんだな。まずは休憩の前に空気の入れ替えが先だな」
まずは窓という窓を全部開け放って空気を入れ替える。こもった熱気を排出しないとエアコンの効きも悪いからね。
「誠彦さん! ちょっとこっち来て!」
「どうした⁉ 何かあったか?」
洗面所の方で季里が僕のことを呼んでいる。虫でも死んでいたのだろうか? あれでいて季里は虫が苦手だからね。
「どうした? わっ、んっ、ん、ん、んぐ……ちゅば……」
前にもこんな事があったような気がするな。
「もう我慢できなくなったの。ふたりきりなんだからいいでしょ? もう一回、ちゅ~しよ。ね?」
「しょうがない子だね。もう一回だけだよ」
「ん、ん、あん、ちゅば、ちゅるちゅる……あん、そこ……触って。もっと強くして……」
「えっと前言撤回。もう僕もがまんできないけど、いいよな?」
「うん、しよ。窓全部閉めるから、寝室のエアコンを最強にしてきて」
仕方ないね。今日はシャワー浴びたらそのままベッドに行くしかないよね?
洗濯はまとめて明日でいいよね?
三夜我慢したあとだから季里はすんごいんだろうなぁ~
もちろん僕だって張り切るつもりだからね。覚悟しておけよ!
行く宛ての無くなった美少女を保護したらナニカが始まる ~すこしえっちな毒島さんと二人ひとつ屋根の下で暮らすこと~ 403μぐらむ @155
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