婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
人生なんてどうとでもなるものさっ
※連載中の小説の息抜きに書いていたので、詳しい設定や構成はありません。行き当たりばったりで書いているので、変な所があるかもしれません。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
私、シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者である。
産まれた時から前世の記憶あり、前世で大好だった夢までみた異世界転生にワクワクしていた。
赤ちゃんの時に、魔力を使うと魔力総量が増えるという小説の情報を実践し、ポルターガイストの現象を起こして周囲を騒がせた事は良い想い出だ。
私は今世を楽しんだ。
魔力と言うものが楽しくて、寝る間も惜しんで磨き続けた。
剣術もそれと平行して学んだ。
鉄の剣で岩を斬る快感が最高で斬りまくった。
最低限のマナーと知識の勉強はしたが、その他の時間を剣術と魔術の修行に費やした。
家族が時折、ガミガミと言ってきたので、前世の知識を使って、この世界にはない調味料や料理、そして生活雑貨を開発して事業を起こした。
【爆発的にメチャクチャ売れた】
そして、膨大な利益を上げた私に、両親は何も言わなくなった。
まぁ、私には妹と弟がいるそうなので、そちらに教育を施すようにしたのだろう。
こうして私は趣味と実益を兼ねた修行に打ち込む事ができたのだった。
そして気付けば13歳になっていた。
この国で、貴族は13歳から18歳までの5年間を学園に通わなければならないのだ。
貴族はすでに家庭教師を付けて勉強しているので、学園の本来の目的は他の貴族との友誼を結び、派閥強化などが目的である。
私は正直、そんな無駄な事に時間を割くくらいなら修行に時間を使いたいと思ったのだが、両親に泣き付かれた。
最初は学園に通えと言われた時に、嫌だと答えた。
そしたら家を勘当すると言われたので、いいよ!と答えた。
だって、事業は軌道に乗ってるし、平民の商人の方が貴族などのしがらみが少なさそうだしね。最低限の食べていける収入があればいいや、と思っていたからね。
そう言うと、今度は両親が泣き落としで攻めてきた。
私が無茶苦茶やると、妹と弟に迷惑が掛かるらしい。
私が勘当されると、公爵家は問題を抱えているとかで、妹の婚約者も決まらないとか。
今更ながら、私は興味のある事しか覚えない質である。
ゆえに、妹や弟の名前など覚えていない。
これを失礼なヤツだと皆は思うだろうが、これが【私】と言う人物なのだ。
育ててくれた恩もあるし、しぶしぶ承諾して学園へ通う事になった。
でも通い出すと周囲の視線が痛かった。
なんだろうね?
昔から修行ばかりで親しい友人など作らなかった私は『コミュ障』なのだ。
この視線は私が醜いからなのか?
それとも制服が似合っていないからなのか?
ジロジロ見られるのは良い気分ではないが、私は視線を無視して、授業を受けるのだった。
・
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・
・
・
・
そして、1ヶ月で飽きた。
いや、よく1ヶ月も我慢したと思う。
別に友達ができなくても、授業が面白ければ我慢できた。
だが、その授業がつまらないのだ!
えっ?子供の勉強???
って、くらい簡単過ぎるし、剣術や魔法の授業はワクワクしたのに、練習にもならない基礎のみとか!?(実技は2年生から)
私は早急に見切りをつけて、学園長に直談判した。
そしたら飛び級制度がある事がわかった。
私はすぐに試験を受けさせて貰ったの。
無論、合格して晴れて卒業する事ができました。
学園を卒業して時間ができた私は、まだ13歳と言う事もあり旅にでる事にした。
実家には手紙を送って、大陸を見て周ると伝えた。
よ~し!
修行をして得た力を使って世直しの旅に出発するぞ~!
その頃
シオンが出ていってからの学園では──
「聞きました!シオン様が飛び級制度を使い、学園を卒業してしまいましたわ!」
「えっ!?ウソでしょう!あの神々しい御姿が見られないなんて!」
「この学園の女神様がいなくなるなんて…………」
生徒達がジロジロと見ていたのは公爵令嬢であり、シオンの美しい姿に見惚れていただけであった。
そうとは知らずにシオンは隣国へきていました。
国境の関所は、高位貴族のパスがある為にほぼ素通りの状態である。
「う~ん?隣国だと、うちの国と余り変わらないね」
国境の街に到着したばかりだ。
すると、街の外から悲鳴が上がった。
「大変だ!魔物が攻めてきたぞーーー!!!!」
うちの国と隣国の間には深い森が広がっており【魔の森】と呼ばれて度々、魔物が押し寄せてくるのだ。
「ふむ、ちょっとみてこようかな?」
シオンは見つからないように裏路地に入ると、風魔法で浮かび上がった。
国境の街を囲む城壁を越えると、すでに街に常駐している騎士団が魔物と戦っていた。
「へぇ?前線のあの騎士は他とは違うね。実力が抜きん出ている」
見下ろしてみると、魔物と戦っている1人の騎士が次々と魔物を屠っていた。
これなら私が出る幕はないかな?と、思っていると、様子が変わっていた。魔物と戦っていた強い騎士が後ろにいた味方の騎士に斬られたのだ。
!?
「ちょっと仲間割れ!?」
シオンは急いで飛んでいき、トドメを刺そうとしていた騎士を魔法で吹き飛ばした。
「まだ生きてる!?」
斬られた騎士はまだ息があった。シオンはすぐに回復魔法を掛けた。
「き、君は………」
朦朧とした意識が戻り、まだ少女とも見れる女の子に見惚れた。
「話は後。魔物を一掃します」
シオンは光属性の魔法を放ち、その光を浴びた周辺の魔物は一瞬で消滅し、魔石だけが残った。
「助けて頂き、ありがとうございました!聖女様!」
???
「聖女…………ですか?私はただの旅の者ですよ?」
「そんなバカな!あれほどの光魔法を使えるのは神の寵愛を受けた聖女様ぐらいですよ!」
シオンは首を振り、厳しい修行の果て身に付けたものだと伝え、そして後ろから斬りつけた騎士を拘束するように言った。
「まさか、私の暗殺を目論む者が混じっているとは思っていませんでした。本当にありがとうございます。私は、ジークフリート。ジークとお呼び下さい」
聞けばこの騎士さん、隣国であるこの国の王太子様だそうだ。ずいぶんと若いね。16歳だそうだ。私は、今年で14歳になるから2歳違いみたい。
シオンは歓迎されて、話を聞きたいからと兵の詰め所に連れて行かれた。
特に後ろ暗い事もないので、身元を話して今の状況を話した。
「君がアーノルド王国にあるスカーレット公爵家の御令嬢…………あの有名な!?」
はい、そうですが、あれ?私って有名だったの?
おかしいわね?社交会には顔を出した事が無かったはずだけど?
シオン首を傾げているとジークが言ってくれた。
「いやいや!見たこともない道具や料理、調味料など開発したのはスカーレット公爵家の令嬢と言う事は、その筋の者は知っていますよ!?」
なんだと!?
表向きの社長は平民の商人を立てていたのに!
どうしてわかったんだ?
まだ子供のシオンは知らなかった。
少し考えれば当然なのだ。
人気上昇中の商会を調べようと高位貴族など押し掛けたりした場合は平民の社長だと拒否できないのだ。
無論、パトロンにスカーレット公爵家が主体で運営していると伝えれば末端の貴族なら諦める。
だが、王族などの訪問や、お呼ばれは拒否できないのである。
そしてスカーレット公爵家に連絡が入り、渋々と父親が娘のシオンが開発したと暴露していたのである。
「そうなのね~」
「しかし、シオン令嬢は社交界に出て来ないので姿は知りませんでした」
まぁ、特に問題ないか!
シオンは考えを切り替えた。
「────と、言う訳で飛び級制度を使い、修行で得た力を人々の為に使いたいと思って旅にでたばかりでした」
ジークに隣国へきた経緯を話した。
「なんて崇高な思いなんだ!私はモーレツに感動しましたよ!」
なんか感動された。
そしてなんか断れない空気の下、王城へ連れて行かれて国王様と謁見する事になりました。
どうしてこうなった!?
「聖女様のお陰で我が息子の命が救われました。深く感謝致します」
物腰の優しい王様だった。
「そして我が王家に仇成す不届き者も捕まえる事ができました。何か褒美を与えたいのですが、何か希望の物などございますかな?」
私はう~と考えてみたが特に無かったので、いつか困った事があったら支援して欲しいとお伝えすると、なんと謙虚な!と、また勘違いされた。
だから聖女じゃないっていうのに!
王城で一泊させて貰うと、また旅にでる為に挨拶に行った。
「えっ?ジーク様も付いてくるのですか?」
「聖女………いえ、シオン令嬢に救われた命です。どうか旅に同行させてください」
いやいやいや!
王太子様が、ダメでしょう!?
シオンが戸惑っていると、王様がフォローしてくれた。
「実はジークから王太子を辞退してもシオン令嬢の旅に同行したいと申し出があったのです。ジークには弟も二人居ますし、こちらは問題ありません。どうかシオン令嬢の旅に同行させてください。騎士団に身を置いていたので野営の準備など役に立ちます」
シオンは王様がいいなら別に困った事もないので承諾した。
実は昨夜──
「本気かジーク?」
「はい!父上、シオン令嬢に惚れました。彼女の旅に同行したいと思います」
「自分が王太子だと言う事を理解しているのか?確かにシオン令嬢のお陰で王家の反乱分子を一掃できたが、責任ある王太子が長期間、国を空ける事は許可できないぞ」
そこでジークは王太子を辞退してでもシオンに着いて行きたいと申し出たのだ。
「はぁ~、そこまで惚れたのか。これは私の個人の意見だが、別にシオン令嬢の結婚には反対していないのだ」
!?
「本当ですか!?」
「ああ、隣国の王家の血筋であるスカーレット公爵家の令嬢で位も問題ない。しかし、シオン令嬢に王妃が務まるのか?」
「シオン令嬢は学園を飛び級するくらい頭もいいです。十分に責務はこなせるはず──」
国王は首を振った。
「そうではない。あのシオン令嬢が1つの場所に大人しくずっといると思うのかって事だ」
あっ!と、ジークも思い当たった。
「正式な挨拶は明日だが、一目見て感じたよ。あの強大な力を世の中の為に世界を周る御方だ。貴族社会で茶会などするより、困っている民の為に貧民街など歩き周るような性格であろう?ならば、王妃として迎えるより、平民として自由に動き回れる立場の方が良いのではないか?幸い、財産は沢山お持ちのようだしな」
なるほど。
「ならば私を廃嫡して下さい!」
ジークの言葉に国王は、はぁ~とため息を付いた。
「特に何もしていないお前を廃嫡などできん。そう極端な選択はするな!取り敢えず、王太子は保留とし、いち王子として立場を戻す」
「ありがとうございます」
「まぁシオン令嬢ならいずれ何か大きな事を仕出かすような気もするのでな。お前はしっかりとシオン令嬢の心を掴むのだぞ。それと定期的に手紙などで連絡を送るのが条件だ。忘れるなよ?」
ジークは国王に感謝し頭を下げるのだった。
シオンとジークはそれからまた隣の国へと旅に出ました。そして幾つかの国を旅している間に、仲間が増えていった。
1人は聖女見習い(本物の聖女)ヒジリちゃん。(レ……百合)
シオンの回復魔法に感銘を受けて旅に同行する事になりました。1つ年下です。
1人はエルフの剣士レオナ。ハイエルフなのに魔法が使えない(身体強化のみ使える)事で、肩身の狭い思いをしていたので、エルフの里を飛び出したS級冒険者。極度の方向音痴(エルフの姫)
1人は賢者ルリ。オネェ言葉の男。いわゆる変人。ルリちゃんと呼ばないと怒る。(とある国の偉い人)
このメンバーで約5年近く旅して大陸を周りました。
この世界には魔王はいないけど、地域別に魔物をまとめる主(ヌシ)がいて、何体か国を襲っていたヤツを倒したり、流行り病を治したり、反乱を企んでいる貴族をぶっ飛ばしたりと、楽しい旅を満喫していました。
そして一周して、生まれた国へと帰ってきました!
「ただいまー!」
私が家の門を叩くと、メイドや執事さん達が多慌てで出迎えてくれた。
「し、シオンお嬢様でございますか?本当に?」
うん、気付いてくれてありがとう。
知らない人だと言われたら、少しヘコんでいた所だったよ。
「うん、そうだよ。約5年ぶりだからね。分からなくても仕方ないよね」
ダダダッ!!!!
家中のメイドや執事が走ってきて、入口の両脇に整列した。
「えっ?なになに!??」
シオンは何が始まるの?と、目を丸くして呆然としていると、全員揃った所で大きな声で、おかえりなさいませ!シオンお嬢様!!!
と、叫ばれた。
ぴぇっ!?
びっくりして後ろへ後退ったシオンを腹を抱えて笑うルリちゃんがいた。
「あはははっ!愛されているわねぇ~シオンちゃん♪」
笑うなよ!
「美しくなられましたね。シオンお嬢様が居なくなってから、あのバカ兄妹のやりたい放題で、何人ものメイドや執事が辞めていきました。しかし、いつかシオンお嬢様が戻られると信じて、今日まで我慢して、勤めてきました。本当にお戻りになられて嬉しく思います!」
うん?
確かに弟と妹がいたけど、グレてんの?
「そうなんだ。でも私も使用人達に何もしてないけど………?」
クワッ!!!
執事長のお爺さんの目の色が変わった。
「何を言っているのですか!私達、使用人に回復魔法を掛けてくれたり、手荒れなどの新しい薬を開発して無料で配ってくれたではありませんか!皆、感謝しているのです!」
うんうん!と頷くメイド達であった。
シオンは冷や汗をダラダラと流していた。
回復魔法の練習として、屋敷の使用人に使い、貧民街の人々に掛けて周ったりしていたからな~、薬もデータが欲しかったから、身近な使用人で試して貰って、使用感を報告してもらって売り出したに過ぎないんだけどね。
まさか、ここまで感謝されていたなんて知らなかったよ。あの頃は毎日が楽しくて、自分の事に夢中だったからなぁ~
シオンは少し遠い目をして現実逃避をしていると、執事が慌てた様子で教えてくれた。
「それと、大変申し上げ難いのですが、本日は学園の卒業パーティが王城でありまして、旦那様や奥様などは王城の方へ出掛けております」
ああ、それでガランとしていたのか。
「シオンお嬢様も飛び級されたとはいえ、同年代なのですから、パーティへ参加されてはいかがですか?」
シオンは面倒くさいからいいよと言ったが、仲間のヒジリが目を輝かせて行きましょう!と言った。
「久しぶりにシオンお姉様を着飾れますわ!」
「あら~いいわね♪久しぶりに気合入れちゃうわよ♪」
ヒジリとルネがシオンを引っ張っていき、メイド達が、キャピキャピしながら道具を用意して一緒にシオンを着せ替え人形にしてワイワイとしていた。
そして───
公爵家にあったの予備の馬車に乗り、シオンは死んだ目をしながらドナドナドッナ~とされていた。
「シオン、そろそろ帰っておいで~」
エスコート役には、同じく着飾ったジークがシオンに呼び掛けた。
「あはは…………メイドこわい………」
「はぁはぁ、シオンお姉様綺麗デス♪」
「うむ、シオンはエルフに負けず美しいぞ」
女子達に着せ替え人形にされたり、メイクを色々されたりと疲れ切ったシオンでした。
到着すると、紹介状がなくても、シオンの名前と公爵家の家紋で中に入れました。
「へぇ~凄いねぇ~」
すでにパーティは始まっており、シオン達入口で周囲を見渡して驚いていた。
「まぁ、どこの国でも卒業パーティは盛大にやるんだよ。貴族の子息達が正式な貴族として認められる行事だからね」
そうなんだ~
珍しそうに見ていると、向こうの奥の方で騒ぎが起こった。
「私、第一王子であるユリウス・アーノルドはシオン・スカーレット公爵令嬢との婚約を破棄し、隣に居るカーラ・スカーレット公爵令嬢と婚約し直す事を宣言する!」
はい?
「…………ねぇ、シオン?君、婚約者がいたの?」
「ううん?初耳だよ」
ジークのオーラが怖い。
ヒジリちゃんもニコニコ笑っているけど、目が笑ってないね。怖いわー!
レオナも腕を組み睨んでいた。
唯一のまとも?な、ルリちゃんも、公衆の門前で婚約破棄など許せないわ!と、憤っていた。
「聞いて欲しい!シオン公爵令嬢は、妹であるカーラ令嬢をいつも影で虐めていたのだ!学園でもカーラに課題を押し付け、実績を自分のものにしていた。そのような者はこの国の国母である王妃に相応しくない!よって、婚約を破棄して、【辺境の地】へ追放とする!国外追放ではないだけ感謝するがいい!」
ほぇ~、シオン・スカーレットさん大変だなぁ~
あ、私の事か!
何処か他人事のように聞いていたシオンは、疑問に思った事を質問した。
「辺境の地とはどこですか?」
「うむ、隣国との境目にあるどちらの領土でもない【魔の森】だ!あそこで泣いて後悔するといい!」
ふむふむ、事実上の処刑だね。
私の周囲から凄まじい殺気が溢れていた。
「ねぇ、シオンお姉様?あのクズ王子殺してもいいデスか?」
「そうねぇ~私もヒジリちゃんに賛成だわ♪シオンちゃんを侮辱するにも程があるわよ!」
あー、ヒジリとルリちゃんがブチギレ寸前である。
「うん?そういえば、貴様は誰だ?」
私に気付いたユリウス王子が首を傾げた。
ざわざわ
ざわざわ
「あんな美しい女性なんて居たか?」
「何処かの国のお姫様の御忍びか?」
皆、シオンの美しさに見惚れていた。
「そういえば、そこの妹ちゃんは1つ年下だと記憶しているのですが、どうしてこの場にいるのですか?」
周囲の視線を独占された為、カーラは苛立って叫んだ!ここは私が悲劇のヒロインで、王子様に守られて幸せになりましたってストーリーなのよ!
「誰よアンタ!?私はユリウス様に特別に招待されたのよ!」
なるほど。王子特権で参加していたのか。
ここで、一歩下がった所にいた男性が声を上げた。
「我が妹は、醜悪な姉から酷い虐めを受けていた!僕も姉には逆らえず耐え忍ぶしか無かった!それをユリウス王子様が救い出してくれたのだ!」
ふむふむ。なるほど。なるほど。
ってか、アンタ誰よ?
「失礼。貴方は誰ですか?」
「おっと、失礼しました。僕はカーラの双子の兄でカイ・スカーレットと申します」
相手が美人だとわかり、高圧的な態度から紳士的な対応に変わった。
隣のヒジリちゃんが軽蔑の眼差しで問い正した。
「いくらお姉様でも、将来、公爵家を継ぐ男性が女性に逆らえないのは、ちょっと情けなくないですか?」
うんうん!
そうだよね?
「そ、それは………そう!姉は商売の才能があり、公爵家に莫大な利益をもたらしていたので、誰も逆らえなかったのです!」
へぇ~?
なんか今、思い出したように言ったよね?
でも、いいのかな?
その姉を追い出したらお金入ってこないよ?
あの商会は私が会長だからね!
腕を組んで考え事をしていると、ユリウス王子から質問された。
「さて、ご納得されたようですので、今度はこちらの質問に答えて頂きたい。お美しい貴女は何処の誰なのですか?」
この会場にいる全員の思っていた事だった。
「1つ、その前に確認したい事があります。ここにスカーレット公爵家の当主、及び夫人はいらっしゃいますか?」
このパーティーの主役は卒業生達だが、その両親も参加している。前の方に卒業生が集まり、後ろ側に大人達が集まっていた。
この騒ぎの中心に自分の子供達がいる為、隠れる事ができず、苦虫を噛んだような顔で前に出てきた。
「お待たせした」
「この騒動、当主様はご了承でよろしいのですか?」
目の前の人物は、その佇まいから何処かの高位貴族か、隣国の姫君と思い、言葉を選びながら答えた。
「まずは、このめでたい日に騒ぎを起こした我が子供達の事をお詫びする」
隣国の高位貴族などだと、今後の外交に影響を及ぼすと思い、謙虚な態度で頭を下げた。
伊達に、公爵家の当主をやっていないのだ。
「それで、【本当】にシオン・スカーレットと言う人物は、悪い事をしていたのかしら?それと、私の【情報】ではシオン・スカーレットには婚約者など居なかったと記憶しているのですが?」
それは───
当主ならシオンが家に、学園に、この国に居ない事は知っているはずだった。
そもそも、シオンが国内にいないのに、王家から莫大な利益を上げているシオンに、婚約の打診があり、断れず婚約を受けた経緯がある。
まぁ、未成年であれば両親の判断で受ける事は可能なのだが、国内に居なく、帰ってくる予定もわからない者を王家の婚約者に据えるのは、問題があるのだが。
「当時は未成年だったので、王家の打診で私が、了承いたしました。しかし、莫大な資金を稼いだ事により、慢心した娘は次第に横暴な態度になり、手が付けられないようになりました。こうなっては仕方がないでしょう」
公爵家に取っては、どちらが王家に嫁いでも良かったのである。
ここまで騒ぎが大きくなっては、シオンを切り捨てるしかないと判断した。
この選択が、人生で最大の誤りだったと気付くのはこの後、少ししてからである。
「了解致しました。最後に、娘との親子の縁を切ってもよろしいのですか?」
最後に確認した。
「はい。悲しい事ではありますが、ここまで兄妹を追い詰めた長女を許すことはできません」
カーラとカイは父親の言葉に感動して、涙を流していた。
それとは対極的に、シオン側は絶対零度の温度差で、さっきの怒りより更に怒りを通り越して、氷点下の殺気になっていた。
コソッ
「…………シオン、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ。正直、幼少の頃は自分を磨く事が楽しくて、家族との繋がりは薄かったからね。血の繋がりはあっても、赤の他人よ」
ジークはそうかと言うと、ここからは私に任せて欲しいと言った。
「さっきから聞いていれば胸糞悪い!!!」
ジークは魔力を込めた拳を床に叩き付けた。
ドーーーン!!!!
床に亀裂が入り、会場にいた人々は息を呑んだ。
「そ、卒業パーティーで騒ぎを起こしてすまなかった。ど、どうか怒りを収めて欲しい」
及び腰のユリウスが言うが、ジークは鋭い目つきで周囲を見渡した。
「我が名はジークフリート・シリウス!隣国、シリウス王国の王子だ!」
周囲の息を飲む音が聞こえた。
ジークは抑えていた殺気をだだ漏れにし、仲間以外近付けなくしていた。
「ど、どうしてここに…………?」
誰かが呟いた。
「私はここにいる仲間と共に約5年間、見聞を広める為に旅に出ていた。そして、大陸を一周して、仲間の1人がこの国出身の為に戻ってきたのだ」
な、なるほど。
「そして、ここにいる私の大切な女性を侮辱されて黙ってはいられない!」
!?
「ま、待ってくれっ!私はそこの美しい女性を侮辱など───」
ジークは最後まで言わせなかった。
「ここにいる女性が、シオン・スカーレット令嬢だ!私達は5年間も一緒に旅をしていたのだ!!!これは訪れた私の国の国王が証言してくれる!」
!?
「「は、はぁーーーーーーーー!!!!!」」
大きな声が上がった。
「あれがシオン様!?」
「学園で1ヶ月ほど通っていた時見たけど、面影が確かにある!?」
学園の時のシオンは髪を短くショートに切っていた。修行の邪魔だったからだ。
今のシオンは腰まである艶のある美しい長い髪を流しており、品のあるドレスにより妖艶な美しさを兼ね備えていた。
「あっ、私はシオンお姉様の仲間で、オラクル聖国の聖女ですわ。我がオラクル聖国の教皇様もシオンお姉様が5年間、旅をしていたと証明してくれますわ」
「我のエルフ族も証言しよう。シオンに里を救われたのでな」
「あら~じゃ、私も、我がグラン帝国の現皇帝の弟である筆頭賢者、ルリ・グランも証明しよう!我が仲間であるシオン・スカーレットは一緒に旅していた仲間だと!もし異議を唱えるのであれば、国を挙げての抗議を覚悟せよっ!」
!?
ルリちゃんは、公式の場や怒ると男らしい言葉遣いになるのだ。
この大陸最大の国家であるグラン帝国の皇帝の血筋までいることに皆が驚愕した。
そして聖女の名も特別な意味を持っていた。
大陸で広く信仰されている宗教の大本であるオラクル聖国の聖女を蔑ろにしたら、民から暴動が起きるのだ。
そして5年も旅に出ていたと言う事は───
「さて、私にはどうでもいい事です。ただ、婚約破棄と辺境の追放は、謹んでお受け致します。私、婚約者がいた事すら知りませんでしたから、ありがたいです」
「シオン、こんな理不尽を受け入れるのか!?」
驚くジークにシオンは微笑んだ。
「そろそろ、腰を落ち着かせようと思っていました。それに辺境でのスローライフに憧れていたので、1からの開発も面白そうじゃない?」
何処までもポジティブなシオンに毒気を抜かれた仲間達は笑った。
「く、アハハハッ!流石はシオンお姉様ですわ♪」
「流石はシオンだね。辺境でのスローライフか。面白そうだ!」
「あら~私の新しい魔法が役に立ちそうね~」
「森なら私のエルフが役立つ!」
シオンは最後に振り返って両親を見た。
「産んでくれた事は感謝してます。これから親子の縁を切り一切関わらないと誓いますわ」
シオン達はそのまま会場を後にした。
そして出る時、ルリだけは少し立ち止まって、ドスの聞いた声で言葉を放った。
「お前達、ただで済むと思うなよ。シオンが旅をして、国が救われた所は1つ2つじゃねぇんだよ。この事は、本国や周辺国にしっかりと伝えるからな覚悟しておけ!」
シオン達立ち去った後、しばらく会場にいた人々は動けなかった。
シオン達は自宅に伝言を頼むと、その足で(馬車)で辺境の地へと向かった。
「シオン、本当に大丈夫か?」
心配そうに声を掛けるジークにシオンは微笑んだ。
「本当に大丈夫だよ。家族の繋がりは薄かったから何も感じないよ」
そう言うシオンは少し寂しそうだった。
「それよりジーク、さっきはありがとう。大切な女性って言ってくれて嬉しかったよ」
!?
長旅でシオンもジークには好意を抱くようになっていた。
二人の仲は進展していたのだ。
まぁ、ヒジリが邪魔しているのだが。
レオナはやれやれと温かい目で見守っていた。
途中で一泊して、そのまま生活物資を買占め、収納魔法に閉まってから辺境の魔の森へとたどり着いた。
「ここなら私の国も近いし、色々な物資を送って貰えるよ」
「助かります!」
シオンは魔法で周辺の木を斬り裂いて、、周囲を土魔法で城壁を作った。住む家も土魔法であっという間に村が出来上がっていった。
数日すると、次々にシオンの実家にいたメイドや執事が辞職してやってきた。
「「シオンお嬢様の元で働かせて下さい!」」
おおぅ!
まさかこんな危険で、何もない所までやって来てくれるなんて嬉しかったよ。
そしてさらに1週間もすると、ジークの国から支援物資が届いた。
それと人材も。
シオンやジークは周辺の魔物を狩りまくり、増えた住民の食料を用意した。
開墾した土地に畑を作り、これまたルリが研究していた植物の魔法で成長促進を促し、短期で収穫できるようにした。
そして3ヶ月もすると、遠くの国からもシオンの開発した村に住みたいと、どんどん人材がやってきた。
すぐに街と呼ばれるほどの人口に増えていった。
逆に、卒業パーティーの事が、ルリの魔法で周辺国に伝わると、取引を止める国が続出して、僅か1年で私の国は破滅していった。
騒動の原因だったユリウス王子は冤罪で公爵令嬢を辺境追放した罪により毒杯を授かった。
騒ぎが大きくなり過ぎて国を滅ぼすきっかけになった為だ。
連座で、カーラとカイも嘘の証言をした事により処刑された。こちらは斬首となった。
元々、素行が悪く公爵家の力で揉み消していたに過ぎなかったからだ。
シオンの両親も毒杯を授かった。
あの時、シオンに味方していれば今も安泰の地位にいたであろうに。
国が成り立たなくなり、隣国のジークの国が自治領として取り込む事になった。民には罪は無いとの事でしっかりと善政を敷いてくれたよ。
シオンはどっちでもいいよと言っていたが、ジークやヒジリ、ルリといった仲間はシオンの国の貴族達を決して作った街の移住を許さなかった。
「なんかスローライフとは違ったけど、街を作るのは楽しいし、まっいいかっ!」
シオンの膨大な魔力は魔の森の魔物達を大人しくさせ、間引きした事により安全な『国』へとなっていく。
これは長年の旅でシオンが救った行動によるものであった。
新たな国を建国する事に周辺国は後押しして、数年で国として立派な都市として機能していた。
その後、順調にジークと結婚して、ヒジリに邪魔されつつも、楽しく幸せに暮らしたのでした。
【FIN】
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪ naturalsoft @naturalsoft
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