ネットに溶けたい

@yabukara

1.漫画を探しています


誰かとの繋がりが欲しいと感じていた。

きっかけはなんでもよかった。




ある人が、わからないこと、考えが至らないことがあれば、ネットの質問箱に投げかけ、答えを探すという話をしていた。


自分よりも年下の子が、だ。

そんなところに人生の解を求めるなんて、

馬鹿なことあるかとそう思っていた。


違国日記という漫画を読んだ。

細い線で描かれた、繊細に見える絵が好きで、表紙が気に入って読み始めた。表紙と中身の雰囲気が違うものがあるが、この漫画は表紙で見た通り、繊細で細い線で描かれていた。

それとは裏腹に、内容は耳が痛いものだった。

空虚感を持ちながら、読み進めていくのは自分を何かで刺しているような感覚に近かった。

刺される度にハッとさせられたり一日中考えることが続いた。


その漫画が60話を越えたあたりから、刺される事で自分が殺されて、別の感覚で戻って来る。これに快感を覚えた。そして失われてしまうことにひどく恐怖を感じた。

無くなってしまったら、この感覚に触れることを辞めてしまったら、もう二度とこの快感は味わえないのだろうか。だが、本の知識に明るいわけでもなく、漫画、小説、共に過去に触れてきたジャンルではない。


閉じた世界だけではもう、この感覚を失うしかない。そうして読み進めるのを辞めた。せめてもの抵抗だ。読まなければ、この本を消費して咀嚼してしまわなければ、ずっと、空想し続けられる。それでも、そうだとしても、読ませてくる。読まなければいけないとまで思わせてくる。進めば終わりに近づく、限界がある。続くモノなんて有りはしない。


閉じた世界の、1人の世界に限界を感じた。

こんなところで、こんな事で思い知らされてしまった。


あの年下の子は人生をネット上に投げ、誰かが出した解を自分に嵌め込む。それをやる事をどうしても認められなかった。

だが、八方塞がりなのもまた事実。気乗りはしない。そこに投げかけた。

「違国日記のような漫画を探しています」

見返す度に気に喰わない。見ず知らずのひとを頼ること。助けを乞うことがむず痒い。そして一通返信が来た。

丁寧で、意図を汲み取った文だった。タイトルを挙げた。たった一文、それだけで。そこには多くのタイトルが列挙されていた。


先まで懸念していた、感覚を失わずに済む安心感よりも、その善意に思考が止まった。

世界が、凝り固まったものが、変わる。

その瞬間を感じた。

繋がりは望めば、刹那的なものであろうとそこらに落ちているんだと。

これを言う、考えることは誰にでも出来る。

だが、感じて理解するのは、望まないと手に入らない。そんな気がする。



些細なきっかけで、世界が開き始めている。

私は今この感覚を失う事を恐れている。

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