ママと息子とときどきパパ③

 待ちに待った息子の参観日を翌日に控え、気合いを入れてめかし込もうとクローゼットの奥から引っ張りだしてきた勝負服。上はまだいい、ちゃんと着れた。しかし、美にストイックなスカートは、怠惰な私を頑ななまでに拒絶した。


「ファスナーが閉まらない……!」

「また太ったの?」


 悲鳴のような声を上がる私の横で、呆れた表情の息子が心配そうに声を掛けてくる。その心配の対象はたぶん、スカートだ。ギチギチと悲鳴を上げるファスナーをかわいそうに思っているのだ。何て優しい子だろう。その優しさの欠片だけでも苦闘する母に向けてはもらえないだろうか。


「違うの、スカートが縮んだの」

「クリーニング屋さんはママみたいに洗濯失敗しないと思う」


 そう、息子は私を甘やかさない。スカートも私を甘やかさない。


「……ママ、今日の夕飯抜きにするね」

「今日はママの好きなシチューだってパパが言ってたよ」

「……じゃあ明日の朝ご飯抜きにするね」


 無言で頷く息子を横目に、この冬は炬燵でアイスは禁止しようと、心の中で固く誓った。


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掌編・集 東雲そわ @sowa3sisu

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