ママと息子とときどきパパ②

 全般的に苦手な家事の中でも、唯一得意と言えた洗濯を、私は致命的なまでに失敗した。


「セーター、縮んじゃったね」


 同情するような息子の言葉に、ドラム式洗濯器の前で縮んだセーターを握り締めていた私は、ゆっくりと膝から崩れ落ちた。


「パパのお気に入りのセーターだよねそれ」

「うん、そうだね……」

「パパかわいそう」

「うん、かわいそうだね……」


 不出来な母親を容赦なく責める息子は、私の傍らに立ち、この寒い中、アイスを食べている。私が冷凍庫の奥に隠しておいたハーゲンダッツのクリスピーサンドを、バリバリと音を立て貪っている。

 炬燵に入りながら食べるのが至福だというのに、もったいない食べ方をしていると思った。ご飯を食べたばかりなのにとか、私のアイスを勝手に食べたとか、怒る気力は今はない。

 旦那の叱責を想像し、言葉にならない呻き声を上げていると、やがてアイスを食べ終えた息子が、呆れたように口を開いた。


「ぼくが着るよ。そうすればセーターも無駄にならないし、パパもそんなに怒れないよ」


 その救済案に歓喜した私は、口の周りをアイスでべとべとにした息子に、愛を込めてチューをした。

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