ママと息子とときどきパパ②
全般的に苦手な家事の中でも、唯一得意と言えた洗濯を、私は致命的なまでに失敗した。
「セーター、縮んじゃったね」
同情するような息子の言葉に、ドラム式洗濯器の前で縮んだセーターを握り締めていた私は、ゆっくりと膝から崩れ落ちた。
「パパのお気に入りのセーターだよねそれ」
「うん、そうだね……」
「パパかわいそう」
「うん、かわいそうだね……」
不出来な母親を容赦なく責める息子は、私の傍らに立ち、この寒い中、アイスを食べている。私が冷凍庫の奥に隠しておいたハーゲンダッツのクリスピーサンドを、バリバリと音を立て貪っている。
炬燵に入りながら食べるのが至福だというのに、もったいない食べ方をしていると思った。ご飯を食べたばかりなのにとか、私のアイスを勝手に食べたとか、怒る気力は今はない。
旦那の叱責を想像し、言葉にならない呻き声を上げていると、やがてアイスを食べ終えた息子が、呆れたように口を開いた。
「ぼくが着るよ。そうすればセーターも無駄にならないし、パパもそんなに怒れないよ」
その救済案に歓喜した私は、口の周りをアイスでべとべとにした息子に、愛を込めてチューをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます