ママと息子とときどきパパ①

 一週間の給食当番を終え、小学生の息子が持ち帰ってきた当番用の割烹着を布袋から出すと、香ばしい匂いが私の鼻腔をくすぐった。


「さては今週はカレーがあったな?」

「うん。献立表に書いてあったじゃん。ポークカレー」

「そうだっけ?」


 毎月配られる献立表をロクに見ていないことを知っているのか、息子の呆れたような視線が私に突き刺さる。だって我が家の料理長は旦那なのだ。専ら仕入れ担当の私は渡されたメモの通りにスーパーに通うだけで、献立を考える能力はない。


「ポークカレー。配るときにちょっと零しちゃって、汚れちゃったんだ」

「あれ、ホントだ」


 見れば、お腹の辺りに黄色がかった滲みが出来ていた。鼻を近づけると、なるほど、とても美味しそうなカレーの匂いがする。


「ちゃんと白くなる?」


 愛息の心配そうな表情に、私は満面の笑顔でこう応える。


「任せなさい、ママ、洗濯は得意なんだから」

「洗うのは洗濯機だからでしょ」

「なにおー」


 息子の冷静なツッコミに、私は手にしていた子供サイズの割烹着に無理矢理に袖を通すと、カレーの匂いもそのままに、息子を抱き締めにかかるのだった。

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