その喉が震える度に、見る者の瞳が揺れていた。


 それ自体に命が宿るかのような色めく髪と、透ける様に真白なドレスが、嫋やかに踊る舞台の上。弦楽器の調べに乗せ、無窮に響くその音は、聴く者の心を照らしていく。


 紡がれる言葉は、人への愛に満ちていた。

 奏でられる音色は、世界を照らす光に満ちていた。

 零れる微笑みは、命への感謝に満ちていた。


 光に照らされた道の先に、希望があるのかはわからない。歩んだその先で、愛や夢に出会えるのかもわからない。それでもその先にはかけがえのない未来があることを彼女は歌い、暗がりに佇む人々を新たな道へと導いていく。


 やがて音が止み、歩き出した人々を見送るように彼女は大きく手を振っていた。


 彼女の姿を見ることができたのは、それが最後だった。

 舞台を去った彼女の行き先は、誰にもわからない。


 彼女の歌は、今日も世界のどこかで歌われている。

 彼女の残した愛の歌は、今も人々の心に広がっていく。

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